2.びっくりして、びっくりする
「まあ、ビックリするよな」
ヒスイはトポポポ、ってコップに麦茶を注いで、玲奈にわたしてくれる。
「あの石は境の森に落ちてた。今までだって別の世界から境の森に物が流れてくることはあったから、あれもそういうものの一つだろうって思ったんだ。そうしたら何日かして真っ二つに割れた。しかも中から赤いドラゴンが出てきて『キューイ』って鳴くから、おどろいたよ」
「今まではそんなことなかったの?」
「なかった」
ドラゴンは、石の真ん中の空洞部分にいたんだって。メロンでいえば種がある場所だなって玲奈は思う。
「そのあとはヒスイくんがキューイを育ててるの?」
「ああ。少し大きくなったころからはオレの手伝いもしてもらってる。キューイはオレよりも魔力を感じ取るのがうまいし、頭もいいから、すごく助かってるんだ」
「たしかに、ヒスイくんとキューイは息ピッタリに見えるよ!」
「サンキュ。だけどキューイはどこか別の世界の生き物だから、どこから来たのか分かったら返さなきゃいけない。仲間でいられるのは、その間だけになるんだ」
(そうだよね。ヒスイくんの仲間はキューイしかいないもんね)
キューイを見るヒスイの横顔は、ちょっぴりさみしそう。こんな表情を見るのは初めてだ。
さみしそうなんだからいっしょにさみしくなった方がいいはずなのに、どうしてか玲奈の胸はドキドキする。
その音が聞こえちゃいそうな気がして、玲奈はあわてて話題を考えた。
「べ、別の世界って、たくさんあるの?」
「ん? ああ、ある。それぞれ住んでる生き物もちがうんだ。伝説とか昔話ってあるだろ? そこに出てくるふしぎな生き物は、別の世界から来たヤツらがモデルになってることがほとんどだ」
「ええっ、すごい!」
「むかしはお前みたいに、魔法使いや別の世界の生き物を見られる人もたくさんいたんだろうな」
「へえええ~!」
そんな話をしてるとキューイが起き上がった。大きな口を開けて「キュァァ~」ってあくびをして、玲奈に気がついて「キュ!」って鳴く。玲奈が手をふると、うれしそうに手をふり返してから、ヒスイの方へぱたぱた飛んできた。
「キューキュキュ、キュキュー!」
「分かってるって」
ヒスイはズボンのポケットから一~二センチくらいの石を何個か取り出して机においた。どれも赤っぽい色をしてる。
「それ、なに?」
「赤碧玉。キューイはこれが好きなんだよ」
「へええー」
机の上に座ったキューイが赤碧玉をうれしそうに持ったから、玲奈は最初「ほんとだ」とだけ思った。まさかその石をキューイが口の中に入れちゃうなんて考えてもいなかった。しかもバキバキバキって音をさせながらかみくだいて、ごくんって飲みこむなんて。
「キュゥゥーイ!」
そうしてキューイが満足そうに鳴いたから、玲奈は本当にびっくりした。ヒスイは玲奈を見て「どうした?」って表情をしてる。
「キューイは赤碧玉が好きなんだって言ったろ」
聞いたけど、まさか食べものとして好きだなんて思わなかった。
(でも、そっか。だからクッキーを食べなかったのかあ!)
納得はしたけど、やっぱりふしぎだ。玲奈が目をぱちぱちさせてると、奥から足音がした。
「ねえ、ヒスイ。お客さんの相手はまだ終わらないのー?」
そう言って顔を見せたのは、まっすぐな金色の髪を腰くらいまでのばした女の子。玲奈は「だれ?」って、さらにびっくりした。




