10.なかなか手ごわそう
もう雨はふらなかったから、帰るまでに玲奈の体も服もだいぶかわいた。汚れはおちなかったけど。
家に帰って、シャワーを浴びて、着がえて、夕食を食べて。
星座盤を持ってそわそわしながら空を見ていたら、約束どおりヒスイがやってきた。もちろんキューイもいっしょだ。夜の庭でヒスイと話ができるのは四日ぶりくらいだから、うれしくて、玲奈のほっぺたはゆるんじゃう。
「どうしたんだ、ニヤニヤして」
「へへへ、なんでもない。あ、そうだ、今日は来てくれてありがとう。おかげで私も萌さんも無事だったよ」
「いや、こっちも呼んでもらえて助かった。今日の魔法使いは大きさは違ったけど、東野公園で見たヤツと似てたな」
「うん。実はね」
それで玲奈は、日曜日に東野公園で折りヅルを二つ見たこと。
夜にヒスイから「一人だった」って言われて、見まちがいだったのかもしれないって思ったこと。
そのあとに「二つあった」って伝えようと決めたけど、ヒスイが授業のとちゅうで帰ったから言えなかったことを話した。
「なるほど。今回の魔法使いは姉妹で界移動してきてたってわけか」
「『お姉ちゃんから力をもらった』って言ってたもんね。ヒスイくんがお姉ちゃんを送りかえしてる間に、妹は森のパンやさんの車にかくれたのかな」
「だろうな。キューイといっしょに気配を追いかけてたんだけど、すぐ分からなくなるし、移動も速くてなかなか見つけられなかったんだ。どうしてだろうってふしぎだったけど、車に乗ってたとは考えなかった」
ヒスイはとってもくやしそう。
「二体いたことにも気づけなかったし、オレもまだまだ修行が足りない」
「ヒスイくんのせいだけじゃないよ。お手伝いの私もちゃんと言えばよかったんだ。今度から、気になることは全部伝えるね」
「ありがとう、頼む。ただし、何度も言うけど……」
「あぶないことはするなよ、でしょ。まかせて! で、さっそく気になることがあるの。あのヘンな折りヅルの声って女の子みたいだったよね。だけど私、その前にちがう声を聞いたんだ」
森のパンやさんの車を見かけたとき、雨がふる前。
『雨がふるよ』『森のパンやさんは呪いのパンやだよ』って言ってたのは大人の男の人の声だった。
玲奈がそう伝えたら、ヒスイはとっても難しい顔をする。
「もしかしてヒスイくん、なにか心当たりがある?」
「ある。実はもう一人、見つかってない魔法使いがいるんだ。もしかしたらそいつなのかもしれない」
「それって、もしかして前に言ってた魔法使い?」
あれは、ヒスイとキューイの秘密を知った日の夜だ。玲奈の家の庭に来たヒスイは「なかなか見つからないヤツがいる」って言ってた。
「そう、それだ。二か月くらいさがしてるけど、まだ見つからないんだよ」
「そんなに?」
たった何日かで折りヅルはあんなに大きく、強くなってた。二か月もいたらどのくらい強くなってるんだろうって玲奈はぞくっとする。




