1.ふしぎな出会い
「うわああ、すごい!」
新しい家の庭へ出た玲奈は大きな声をあげる。
だって頭の上には、見たこともないほどの星空が広がっていたから。
「これなら夏の大三角が見つけられるね!」
ベガ、デネブ、アルタイル。
星の名前を何度もくり返しながら、玲奈は理科でもらった星座盤を見る。そうして星空を見あげて「むむむ」と、うなった。
前に住んでいた街はビルや家がたくさんたっていた。夜でも明るくて、そのぶんだけ星はほとんど見えなくて、星座盤は役に立たなかった。
だけど、ここでは見えている星が多すぎて探しきれない。このままだと、やっぱり星座盤は役に立たなそう。
ちょっぴり曲がった星座盤は、しょんぼりの姿みたい。
今にも「ごめんなさい」って声が聞こえてきそうだったから、玲奈は思わず「大丈夫!」とはげましちゃう。
「私があなたを使って、ゼッタイに夏の大三角を見つけてみせるから! 約束するよ!」
だけど星もなかなか手ごわい。夏の大三角は、ちっとも見つからない。
玲奈は星座盤と空の間を何度もみくらべて、やっとで大三角の一つ、ベガらしきものを見つけた。
――ように思ったときだった。
星空にとつぜん、びっくりするものがあらわれた。
それは、ホウキにのった男の子と、小さな赤いドラゴン。
なんと一人と一匹は、すいすいと空を飛んでいる。
「うそでしょう?」
思わず言うと、男の子が玲奈を見た。玲奈と同じ十歳くらいの男の子だ。
もう少しちゃんと見ようと思って玲奈が二歩すすむと、男の子はかぶっていたキャップのツバで目をかくした。とたんに男の子とドラゴンは消えてしまった。
「あれ?」
玲奈はまわりをきょろきょろと見まわす。だけどそこにはもうだれもいなくて、たくさんの星が輝いてるだけだった。