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怪盗物語  作者: キッピー
4/11

<嬉々は今…?>

159号室の前。つまり、ミナの部屋の前だ。

ドアの前で息をひそめて…眠り薬入り煙玉…発射!

バンっとドアをけり破って、眠り薬入り煙玉を発射する。

「き、きゃああー!」

ミナの悲鳴。私自身は煙を吸わないように息をしないで、ミナのもとへ行く。ミナはもう、眠ってしまったようで、安らかに寝息を立てていた。

ミナに変装すると、私は鍵を外側からガッチガチにかけた。たいていの人は解除できない。

くるりと後ろを向いて、エレベーターに向かう。すると、一人の男性の係員がこっちに向かって歩いてきた。

ロイド…では、ないようだ。明が見せてくれた写真の顔と違う。

「ん?ミナ、どうしたんだよ。エレベーターになんか向かって。

 たしか、エレベーターの先は行き止まりだろう。たずねる部屋もないぞ。」

エレベーターの手前ですれ違う…と思ったら、声をかけられた。結構、怪しまれている。

「あ、はい。えっと。屋上に涼んでこようかと。」

私は、とっさにあの時の悲鳴の声を頼りに声真似をして、適当に答えた。

「ああ。そういうことか。んじゃあ、ばいばい。」

「はい。」

ばれていないようだ。私はこれ以上怪しまれないように、早めにその場を後にした。


41階の4010号室の前。

明は、まだこない。さすがにもう、15分はたったから、来るはずなのに。

トゥルル…トゥルル

電話の音。着信は明から…!

私はとっさに通話ボタンを押して、携帯を耳に当てる。

ブツッ

「嬉、嬉々…!今、変装失敗して…うぐっ。やめろ!」

ドンッ

電話の向こうからは、震える明の声と、うめき声、何かがぶつかる音がした。

だれにも怪しまれないように、私はとっさにその場を離れて、人気のないところへと行く。

「明、どうしたの?」

私が必死に問いかけると、明は答えた。

「ロイドは、やつらの一員…。おぼえている?あの大男…。」

明の一言で、頭の隅にあった記憶がよみがえる。たしか、あれは、私がまだ怪盗して働き始めたばかりのこと…


あの日、私はエレナ様と一緒に、巻物を取り返しに行っていた。

「ロイドっていう大男が話しかけてくるかもしれないから、ついていってはだめよ。」

エレナ様がそう忠告した。

「ねえ、エレナ様。ロイドって、だあれ?優しい人?」

何も知らなかった私は、エレナ様にそう問いかけた。

「ちがうわ。超人気芸能人なのに、ひどいことをしている人のことよ。」

「ちょうにんきげいのうじん?ひどい?」

私はまたエレナ様に問いかけた。

「簡単に言うと、人気なのに悪いことをしている人。」

私はそれでやっと理解した。まだ、4歳だったからね。

その後は、必死にエレナ様がフォローしてくれて、いっしょに建物の中へ入って、巻物を手にして。

「さあ、帰りましょう。」

エレナ様がそういった時、大男…ロイドが来た。

ロイドは、真っ先に私を人質にするために、さらおうとした。にらんできてね。

けれど、エレナ様は私をギュッと抱きしめて、離そうとしなかった。私はそれがうれしかった。

そして、結果的に巻物を手放して、その場を後にした。

4歳だった私は、その大男が怖くて、しばらく何もできなかった。

というわけで。

私は、とっさに明に聞いた。

「おぼえている。つまり、明は今、ロイドに…」

「うん…もうすぐ、時期にロイドが来る。ロイドが、僕が変装したロイドになりすまして。

 電話していたのはばれていない。僕は、部屋に閉じ込められたので、しばらく出られそうにない。なるべくがんばるから、まず、ロイドから逃げ切ることを優先して。ロイドは嬉々がミアに変装したことを知っている。あと、できれば僕、連絡できるとき、するから。がんばって…じゃあ。」

ブツッ

明は、電話を切った。

私はその場に呆然と立ち尽くす。

え…。私、明がいなくちゃロイドに立ち向かえない。しかも…ミナが私だってことがばれているだなんて…

一気に不安が押し寄せてくる。私、このままじゃ、ロイドに立ち向かえないし、逃げられなさそう…。

何をやってもダメな気がする。

すると、いつもお守りのように指にはめている、赤く輝くルビーが埋め込まれた指輪が目に入った。

指輪からは、ナイフやロープ、光など、色々なものが出てくる。

私が、怪盗学園の図画工作の時間で作った私の自慢の指輪だ。

じっと見つめていると、今までの記憶がよみがえる。エレナ様が私を守ってくれたこと、図画工作の時間に一生懸命指輪を作ったこと。なんだかそのうちに、負けちゃダメな気がしてきた。まだまだ怪盗として活躍していきたい。

くよくよしている場合じゃない。逃げることを優先。

でも…怪盗なのに、逃げていいの?私は、自分に言い聞かせる。よし、あの時の恨み、かえそう。やっつけてやる。

私はそう、決意を固めた。


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