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豆州から飛び立つ  作者: 練習中
1487年〜
8/58

消えた弟と残る弟

遅れました。

今回も文章が酷いです。



◾︎伊豆国堀越御所


 小太郎の報告により御所にいた弟の清童子がいなくなっていたことが判明した。行方不明になった清童子がどこに向かったか考えずとも分かった。

 いち早く父に伝えるべきだったのだろう。しかし、当時祖父が富士郡北部を追い詰めている最中だ。そんな時に堀越公方が本拠に帰っては現場がどう思うか。そう考えしばらく報告をあげなかった。


 後に祖父が富士郡を平定し戻って来た場で報告すると案の定騒動になった。大半の者は信じられないといった表情であったが、事情を知っていそうな者共はそんな情報は嘘に決まっている等必死に俺のことを貶してきた。

 

 そうだよな。今回の出陣は突発的ではあったが、彼らは以前から清童子を京に送り出そうとしていた一派なのだ。この機会を逃すはずがない。

 彼ら奉公衆は堀越御所から征夷大将軍を出すことで京に戻ることを夢見ていた。こんな鄙の地にはいたくないのだ。

 継母も清童子を送り出すのに積極的だったのだろう。京の細川政元と連携して清童子を送る機会をずっと狙っていた。


 問い詰めたわけでも証拠があるわけでもない。それに俺の歴史改変による影響もある。しかし、史実と事実が彼らが黒だと主張している。

 史実では父も絡んでいたようだが、この世界の足利政知は茶々丸()の味方。さぞ彼らも準備に苦労したのだろうな。父や俺のみならず、忍ぶのにも慣れている風魔衆の目をも欺いていた。素晴らしい努力だ。


 俺は反論しなかった。ただ父の判断を待った。


「領土の扱いは全て左馬頭に任せる。儂は堀越に帰り、事の真偽を確認する」


 その一言で今回の戦は終いになった。

 父は直ちに使者を堀越御所に送り出し、自身は兵を率いて御所へと帰っていく。

 

 あとのことを任された俺は吉原に祖父を、薩埵峠砦に兵庫助を置き、父の軍勢と共に帰宅した。

 吉原は三島と薩埵峠の中心あたりだ。その吉原を起点に四郎左衛門に兵糧と情報の伝達の航路の安全を任せる。

 こう見ると使える家臣が少ない。今後の課題か。


 使者が戻って来たのは三島城を目前とした時であった。真偽を確かめるため御所にて面会を望んだが継母から清童子が寝込んでいるからとにべもなく拒絶されたそうだ。お姿だけでもと粘るが同様に拒絶された。これは黒い。

 ちなみにまだ幼い潤童子は継母の近くにいるので確認するまでもなかったようだ。

 これは風魔衆からの報告も同様だ。


 報せを受けて軍勢の移動速度が上がる。父の率いていた国人衆の軍勢は伊豆国に入り解散していったが、本軍に俺の軍勢を加えてその日のうちに堀越御所に到着。

 未だうるさい奉公衆を無視して父の許可を取り俺の兵を御所内に入れた。彼らは略奪や乱暴狼藉をしないように叩き込んだ常備兵。他の兵よりかはマシだろう。


 そして現在に至る。

 広間で待っていると縛られた継母と乳母に連れられて潤童子がやってきた。拘束されながらも未だ必死に抵抗を続ける継母の様はまるで執念に取り憑かれた化け物だった。

 あまりの暴れように座らされても押さえ付けられる有様だ。


 いつもならここで吠えてくるであろううるさい奉公衆たちは外の廊下に座らせている。

 この部屋には上座の父、その斜め前に立つ俺、下座に継母と押さえ付ける者が2名しかいない。


「そなたは清童子をどうしたのだ?」


「決まっておりましょう。あの子を征夷大将軍にするために京へ送ったのです!」


 その興奮した声が告げたのは想像通りの目的だった。その言葉に思わず父は立ち上がり継母に詰め寄った。


「征夷大将軍になるということがどういうことか分かっているのか!?」


 その大声は何かを恐れているようだった。俺はあまりの剣幕に身がすくんだが、興奮状態の継母は何も思わないようだ。


「征夷大将軍は武家の棟梁!清童子が京の御所となれば潤童子を鎌倉御所にすることもできる。子のことを思えばこそ、これが最善だと思いませんか、御所様!」


 父は信じられないものを見た、そんな表情を一瞬見せてから肩を落として元の場所に戻っていった。

 父は一体どういう感情を抱えているのだろうか?史実では征夷大将軍にするために清童子を送り出した側であったはずなのに。これが親の心子知らずなのか。


「儂の命を聞かず清童子を寺に入れなかったばかりか、京の都に送るとは身勝手がすぎる。故にそなたとは離縁するが、都に帰すと何をするか分からぬ。一応の解決を見るまでは寺に入っておれ」


 父が命を出すと継母が連れていかれる。

 見えなくなってからも「御所様!」と泣き叫ぶ声が聞こえてくる。


 こんな緊迫した空気の中、立ちっぱなしの俺は足が痛くなってきたのを誤魔化すため、乳母と共にいる潤童子に近付いた。


 潤童子とは数回顔を合わせた程度の兄弟だ。知らない少年が近付いてきて怯えているようだが、あいにく俺は子どもの扱い方を知らないので許してくれ。


「潤童子。俺はお前の兄だ」


「あに?」


「そうだぞ」


 そう言って俺は潤童子を抱きかかえた。


 

唐突に忙しくなりました。

次回は火曜水曜を目指しますが、あまり期待せずに待っていてください。

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