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豆州から飛び立つ  作者: 練習中
1499年〜
39/58

武蔵攻め評定①

評価・リアクション等ありがとうございます。

執筆の励みになります。



◾︎相模国小田原城


 広間には主要な将が集まっている。


「間もなく、治部少輔様がいらっしゃいます」


 小姓として働いている伊勢新九郎の倅千代丸が祖父の到着を報せる。

 数えで13歳。史実の北条氏綱もそろそろ元服か。


 この世界ではどんな名前になるのだろうか。

 

 氏綱の“氏”はおそらく今川氏親から貰ったものだったのだろう。


 しかし、この世界では俺が義氏を名乗っており、俺から“氏”の偏諱を与えられた氏親は千代丸に“氏”の偏諱を与えることはできない。


 すると、千代丸に偏諱を与える人物は俺となる。


 俺個人ロマンを求めるタイプなので、“義”の字を使って良いのは足利の嫡流だけ、貴人と諱を被らせてはいけないという過激思想を持っている。


 例外は偏諱のみ。

 

 そして偏諱のルールとして、“氏”の偏諱は足利一門にしか与えないようにしている(北条四郎氏時、今川上総介氏親、蒲原父子)。


 “氏”は鎌倉時代の足利氏の通字のため、これも偏諱することができない。


 じゃあ、普段偏諱したい時はどうしているのか。

 

 先代である父政知の“知”の字を使わせてもらっている。


 武田信玄もとい晴信もそうだった。

 “晴”は時の将軍足利義晴からの偏諱。“信”は武田家の通字。

 “晴”は当然として、“信”も軽々しく与えることはできない。

 

 そこで信玄は曽祖父信昌の“昌”を使った。

 重臣の嫡男には“信”を与え、次男以下には“昌”を与えた。


 わかりやすい例が真田家。

 真田幸綱の子は上から、信綱・昌輝・昌幸。嫡男が“信”、次男三男が“昌”の偏諱を与えられている。

 

 そこそこ有名な真田信尹も最初は“昌〇”と名乗っていたと思われる。


 したがって、千代丸は俺からの“知”の偏諱と備中伊勢氏の通字“盛”を取り、“伊勢新九郎知盛”となるかもしれない。


 伊勢平氏なので“平朝臣知盛”。

 うーん、少しダメそうな気がするけれど気のせいだろう。


 そこに祖父がやって来たことで妄想の時間は終わる。


「遅参申し訳ございませぬ」


「気にすることではありませんよ、爺様。ゆっくりお座りくだされ」


 祖父が座るのを待って告げる。


「では、評定を始めるとしよう」


 出席者は以下。

 鎌倉公方足利左近衛少将義氏、関東管領上杉治部少輔政憲、次弟北条氏時、富永四郎左衛門政直、三浦郡代鈴木兵庫助繁宗、高橋左近将監高種、風魔小太郎。


 身内と譜代と近習。

 左近将監も三島城時代からの縁なので、他国衆と言えど実質譜代に等しい。

 譜代外様のバランスを考えると他国の者を入れるべきなのだろうな。

 

 パッと思い付くのは伊勢新九郎、三浦道寸あたり。


 しかし駿河にいる新九郎はともかく、道寸はまだ洗脳、じゃなかった。教育が足りないらしい。


 なんでもイマイチ土地への執着が捨てられず、功績をあげれば本拠だった新井城は無理でも三浦郡に所領を貰えると思い込んでいるらしい。

 

 こういう時は荒療治が必要なのかな。

 

 まずは次の戦か。


「小太郎、絵図を」


 広げられた絵図には関東一帯が描かれている。


 そこに関東の主要な拠点の去就、鎌倉御所方であるか古河御所方であるかを意味する碁石を小太郎が置いていく。

 前者が白、後者が白である。


 準備が終わると小太郎に礼を述べ絵図を見やる。


 まず分かるのは圧倒的に黒が多いこと。

 つまり勢力では古河御所方が上なのだ。


 房総半島はほとんど黒一色。

 古河公方のお膝元と呼べる下総・常陸・下野も同様。


 それは両上杉の所領でも変わらない。

 突出した江戸城を除けば、多摩川の北は黒に埋め尽くされている。

 多摩川という表現は正確ではないな。東京と神奈川の県境と言った方が正しいか。


 総じて関東地方は伊豆と神奈川県を除けば以外は真っ黒だ。


 そんな漆黒の絵図の中でポツンと佇む4つの白石。

 岩松家の新田金山城、山入佐竹家の太田城、大掾家の府中城、那須家の福原城。


 彼らは未だ公に旗幟を鮮明にしたわけではない。


 岩松家などは横瀬氏(後の由良氏)による乗っ取りが既に始まっており、現当主昌純は横瀬氏の傀儡に過ぎない。

 御内書の返信も横瀬氏によって隠居させられた前当主尚純からの物だ。


「今、我らにとって最も目障りなのは武蔵国の両上杉だ」


 先に例えた東京と神奈川の県境。

 これが現在の我らと両上杉の領境だ。


「何処を攻めようにも武蔵国が敵の手にあっては我らの行動は制限されてしまう。よって、次の戦で扇谷上杉を滅ぼす」


「策は決まっておられるので?」


 兵庫助が問うてくる。

 この雑な問いかけも懐かしいな。


「当然だ。それを伝えるために皆を集めたのだからな」


 我が鎌倉御所は以前にも増してトップダウン方式に傾きつつある。

 此度の招集も評定と銘打ってはいるが、俺の上意を評定衆に下達するだけになってしまっている。


 もちろん現場の裁量は広く確保している。

 各方面の将には戦の開始・戦略・終了の全てを委任し、将は戦略目標の達成を以てその御恩に応える。


「隊を3つに分ける」


 一隊を由井城を経由して松山城へ。一隊を関戸を経由して河越へ向かわせる。

 この2隊は敵の動きによっては合流させ、河越・松山両城を確実に落とすことを優先させる。

 

「最後の一隊は俺自ら5000の兵を連れ江戸に入り、敵の動きを見定めしのち東武蔵の制圧を目指す」


以下関係ない自分語りなのでスルーしてください


こんな文章を書いている私が言えたことではないですが、最近は登場人物の思考力をマイナスにすることでストーリーを進行させる作者が増えたと実感します


敵「1+1は?」主「そんなもの知るか!」敵「とりゃ(殴)主「ぐわぁ(致命傷)」敵「答えは2だ」主「そうだ。答えは2だったんだ!なんでこんな簡単なことを忘れていたのか(倒)」


なんてことはざら。

展開に納得感のあるものが全く見当たりません。

執筆していて自分も同レベルだなと実感する次第です。

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― 新着の感想 ―
武田信昌って晴信の曽祖父じゃなかったでしたっけ? 今日ちょうど平家物語読み直してました! この物語の登場人物の思考力に違和感を感じたことは無いですよ。読みやすいし。
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