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豆州から飛び立つ  作者: 練習中
1494年〜
34/58

誘引

今回の文章は下手です。

改めて自分のの描写不足を実感しました。



◾︎相模国玉縄城


「蒲原左衛門尉。そなたを江戸方面の将に任じる。本軍が敵軍を追い払うこと適えば品川湊及び江戸城を攻めよ」


「はっ。ご期待に添えるよう励みまする」


「それに伴い、息の宮内少輔と同様に“氏”の偏諱を与える。以後、蒲原左衛門尉氏満と名乗るが良い」


「よ、よろしいのでしょうか? されど、某如きがそのような栄誉を頂戴いたすのは畏れ多きことにて辞退いたしたく存じます」


 断られた。何か問題があったかな。

 そう考えていると横から「2代鎌倉公方様の諱にございます」と解説が入った。


「鎌倉公方の“満”は曽祖父からの偏諱か。別にそれくらいなら構わぬのではないか?」


 周囲は微妙な反応だな。


 先程の家臣から足利氏満について追加の説明が聞いてみると、室町幕府と鎌倉公方の長い対立の歴史の根本を作り出した人間らしい。

 幕府内の主導権争い康暦の政変の際には、混乱に乗じて上方に兵を出そうとするなど、中央に対する強い独立志向は火種として今の子孫へと代々受け継がれてきたわけだ。


 この経歴では嫌がるのも当然だな。


「それは申し訳ないことをした。では、“氏兼”は如何かな? 確か蒲原の家祖の名だろう」


「ははっ。ご配慮いただきありがとうございます。この蒲原左衛門尉氏兼、これまで以上に御所様のため粉骨砕身務めまする」


「期待している」


 左衛門尉が準備のために下がると一息ついた。


「相模守、先程は助かった」


「御所様のお役に立てて何よりにございます」


 横江相模守。彼はかの執権北条氏の末裔らしい。

 10年程前、父に仕える幕臣の中に“北条”の名を見つけてヘッドハンティングした。


 それも横江北条相模守という表記だった故に、たまたま見つけられただけである。


「ご注進!」


 そんな声とともに斥候が駆け込んできた。


「申せ」


「はっ。敵連合軍、由井城を発しましてございます」


 ついに動いたか。

 

 風魔の報せによれば、山内・扇谷・古河公方の連合軍は17000の兵を集めたらしい。

 

「その旨、各拠点には?」


「別の者が伝えに向かっております」


「そうか。報告ご苦労であった」


 斥候が下がると不安気な顔をした四郎左衛門が話しかけてくる。


「御所様は()()が誠に成功するとお思いですか?」


「如何であろうな。敵の不意をつくことは得意だが、相対するは不得手だからな、俺は」


 アレが不意をつく一手であることは間違いない。


 しかし、効果の程をこの時代の人間にはイマイチ想像しづらいらしい。


 アレの実物を見たことがあるのはアレをコソコソと作りあげた俺と風魔衆に、四郎左衛門と兵庫助といった真っ先に利用が想定される水軍関係者のみ。

 

 アレを見たことのある四郎左衛門も不安気だ。

 見たことのない他の家臣らはその様子を見て、余計に不安視している。


「それに焦土作戦なる策に新参の者の多くが動揺しておりましょう」


 焦土作戦。

 自国内の生活に必要なあらゆる建物や施設・畑・その他インフラを破壊または焼き払うことで、敵の進軍先に利便性を残さない戦法。


 流石にそこまではやってないが、敵軍の侵攻が予想される地域の民は進路から外れた土地に避難させている。


 従わない国人地侍や民は放置。

 残酷かもしれないがこちらにも守るべきものがあるのだ。決して面倒だったわけではない。


 高座郡に配した豊前守には、これまでにないほど緩い統治をさせてきた。

 

 臣従だけして素直に命に従わない国人地侍には賦役や税を課さず、その代わりにあらゆる利を流さない。

 

 関を排さなかった土地は商人が避け、税負担の重さに民が逃散。

 その結果、わずか数ヶ月で従わない国人地侍の所領は干からび、最近は苦しい生活を送っていた者も多いと聞く。


 故に、堀越御所に対して反旗を翻す機会を狙っている者はさぞ多いことだろう。


 東相模の者などは特に、明日は我が身という思いが日増しに強くなり動揺しているだろう。


 この程度で動揺されてはこれから先が思いやられる。

 そんなことを口にしてしまえば譜代の家臣の心すら離れてしまうので口が裂けても言えない。


 上層部の不安は末端の兵にまで伝染する可能性があるため止めさせたい。しかしながら、俺も割と不安だ。


 未来人の俺はある程度アレの結果を想像することができるが、実際にどこまで威力を発揮するか分かったものではない。


「まあ、効果の程をこの目で確かめるためにも、まずは敵を大庭城まで引き込まねばなるまい。小太郎、『堀越公方は古河公方の集めた大軍に怯えて部屋から出られずにいる』と噂を流しておいてくれ」


「承知いたしました」


 今回の策は敵味方見境なく多くの武士の固定概念をぶち壊すことになるだろう。


 

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