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豆州から飛び立つ  作者: 練習中
1494年〜
30/58

西の情勢

今回は難しかった。

いつもの如く読み辛いかもせれません。



◾︎相模国小田原城(明応5年1496年)


「安房の里見、上総の武田、下総の千葉、武蔵の扇谷と山内、甲斐国の武田当主派と先代派、そして駿河の今川。我らはこれらの勢力と接している。当然だが、海を挟む里見・上総武田・千葉を除けばいずれも敵対あるいは協力関係にある。それは何故か分かるか、四郎」


「はい。陸続きならば領境において関わりが生まれます。それ故に態度の表明が必要不可欠。しかし、海ならば明確な領境はありません。故に海を挟めば不干渉を貫いても問題ないからだと思います」


 今日は四郎相手に四郎の勉強を兼ねて周辺の情勢確認をしている。

 四郎も今年で数えで13歳。3年程度外征しないつもりなので、その間に四郎を育てようという腹積もりだ。


「大体合っている。だがな、四郎。海に境界が無いということは己の思うがままに境界を決められるということだ。その気になれば事前の通告なしに襲ってくることも考えられる」


「確かにーーその通りです」


 幸いこちらの考えを理解できるだけの器量を四郎は持っていたようだ。分からないことがあれば人に聞くことができるし、自らの間違いを認めることができる。


 遠く京の都から俺に対する文句の文を飛ばしてくるだけのどこぞの公方様より良い弟だ。


 そこに部屋の外から声がかけられる。


「御所様。富永四郎左衛門様が参られました」


 通すように伝えると近習に連れられやってきた。


「お呼びと伺い四郎左衛門参上いたしました」


「よく来てくれた。ちょうど四郎に東の情勢を説明していたところだ。報告を兼ねて西の様子を四郎にも聞かせてやってくれ」


「ははっ。然らば説明いたします」


 兵庫助が三浦郡に入った今、四郎左衛門は西の海を担当している。

 担当には朝廷や公卿への献上品の輸送や小田原城以西の海上警備が含まれる。


「まず、我らと領地を接している駿河国守護今川家。興津以東を奪われたとはいえ流石は一国の守護、天竜川以東を切り取るなど地力がございます。最近は我ら水軍に対抗するかのように水軍にも力を入れておるようです」


「ほう、今川は水軍に力を入れているのか」


 風魔や新九郎が齎した情報と齟齬はない。

 問題は今川家が何を考えているのか。張り合うだけなら良いのだが。


「今川は何を企んでいるのでしょうか?」


「我らが水軍に憧れているだけなのかもしれないし、封じ込めようと考えているのかもしれない」


「それでは……「四郎」っ!」


 やられっぱなしじゃないか。四郎はそう口にしたかったのだろう。


「その先を口にするなとは言わん。しかし、そう悲嘆にくれるな。戦中にそうなってしまっては正常な判断ができなくなってしまうぞ」


「はっ。気を付けまする」


 まあ、後の時代の歴史を鑑みれば河東の奪還を狙っているとみてあながち間違いではないと思う。

 当人たち(今川氏親ー義元)は親子とはいえ、わずか約50年の時代の違いで駿河国守護今川家当主としてのプライドと駿河国の国人地侍からの河東奪還に対する突き上げが変化するとは思えない。


「四郎左衛門、報告を続けよ」


「はっ。続いて遠江国にございますが、先程述べましたように今川家が天竜川以東を切り取っております」


 天竜川以西は今川方と遠江国守護斯波方が入り乱れている。今川方がいれば斯波方もいる。

 どちらかといえば7割8割方今川方優勢であるが。


「ーー水軍については無いに等しいかと思われます」


「確か遠州灘と言ったか。常に波が高く、冬はさらに風が強くなると聞いたことがある」


「左様でございます。某も最初の頃は遠州灘の航行には随分と苦労いたしました」


「それは苦労をかけたな」


 そう返すと、“そんなことはございませぬぞ”と四郎左衛門はおどけなから否定した。

 

 そして三河国。

 三河国の入り乱れ様は遠江国以上だと思う。

 

 それも全ては俺の曽祖父と松平家のせいだ。


 まず、現在の三河国東部は少々今川が入り込んでいることを除けば無風状態。荒れてはいるけれど遠江国に比べれば何も感じない。


 元々三河国の守護は一色氏であった。しかし、俺の曽祖父の万人恐怖こと足利義教により時の一色家当主義貫が誅殺され、丹後・若狭守護を万人恐怖の寵臣であり当主の甥でもある一色教親に、三河守護が細川氏に奪われてしまう。

 その後の一色氏は、当主教親が亡くなり嫡流の義直に家督を取り戻すも、守護国は丹後・伊勢半国守護に留まり、三河国は渥美郡に知行を与えられるに留まった。

 10年くらい前までは、本来の一色の方の一色七郎政照が分郡守護代経て戸田氏に領土を譲る形で隠棲していた。


 問題は三河西部。南に吉良がいたり、北部に国人の所領が散らばる中、松平の各家が中央辺りを占めている。

 松平家の嫡流は岩津城の岩津松平家。庶宗家が松平郷を治める松平郷松平家。事実上惣領を代行しているのが安祥城の安祥松平家。

 

 まるで訳が分からない。

 四郎左衛門が丁寧に説明してくれたが俺は松平家に関しては理解することを放棄した。


 あとは三河国全体として湊が何個かあるが、戸田氏が渥美半島と知多半島を領することで三河湾を抑えているせいで利用が面倒とのこと。


 うーん。戸田は潰すか。

 


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― 新着の感想 ―
まさか三河まで手を伸ばしちゃうとは! 主人公がどう動くのか楽しみです。
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