出会い
『彼女が出来た』
僕は彼女の作る料理が好きで特に野菜炒めが好き
ピーマンの独特の苦い味が苦手な僕でも食べれるぐらい美味しい。
隠し味を聞いても「これは橘くんに対する愛情だよー」っていつもはにかみながら答える。それが、とても可愛いのだ。
彼女と出会ったのはちょうど一年前
たまたま大学の講義が同じだったことがきっかけであった。
あれは山浜教授の何とも私情が入り混じった退屈な講義があった日だ。
「あの...これ落としましたよ」
ある女性から声をかけられた。
小柄で髪が肩ぐらいまでの長さで透き通るような瞳を持っていた、白いtシャツにロングスカートが似合ってあれは間違いなく一目惚れだった。
見惚れていたのだろう少ししてお礼を言った。
「ありがとうございます」
心の中では心臓がバクバクしており、もう完全に彼女に堕ちていたのだ。
「あの、もし良かったら隣良いですか?」と返ってきた。
彼女が何を言っているのか最初は理解しがたかった、その時は本当に照れていたというか嬉しかったというかとにかく驚いていたのだろう。
「三木紗限って言います。えーっと好きな食べ物は水餃子で…ここから10分歩いたところにある中華屋さんのが本当にたまらないんです!」
と彼女はにこにこしながら自己紹介を終えた。
「えっと…」
僕があまりにも黙っていたので彼女は少し困ったような顔で顔を覗き込んできた。
「す、すみません、えっと自己紹介ですよね!え、あ、僕は橘理玖って言います。好きな食べ物…は何だろう野菜炒めかな…んー基本何でも食べれるけどピーマンは苦手です」
つい緊張しすぎて喋り過ぎたし上手く呂律が回らなかった。
「野菜炒め私も好きです!私も小さい時はピーマン苦手だったけれど今では食べれるようになったんです!でも、セロリは食べれなくて…」
沈黙の暇を与えるまでもなく、すぐに彼女が反応してくれたのだ。
「僕何故かピーマンだけは苦手なんですよね…でも克服の希望ありそうだな」
「案外これがすんなりといけるんですよ!とか言いながら私もセロリはまだ仲良くなれてないんですけどね…」
「そうだ!何て呼んだらいいでしょう…橘くんとかですかね?」
「それでお願いします!じゃあ…僕は三木さん?」
「私もそれでお願います!」
『橘くん』
『三木さん』
『よろしくお願いします』
気づいた時には会話が続いており、緊張もとけていた。
驚いたことに退屈な講義も全然退屈ではなく時間が過ぎるのが早かったのだ。
「私、この後用事があるのでお先に失礼しますね!明日も会えるといいですね!」と彼女は言い、さよならをした。
初めてあったとはいえ、こんなにも話せると思わなかった。この講義90分の間で彼女からたくさんの初めてを奪われたのだ。そう、僕は初恋を経験したのだ。