ヒロイン転生したけど、原作未プレイ受動喫煙勢です ~転生悪役令嬢によるフラグをどうにかしたい~
2作目です。よろしくお願いいたします。
乙女ゲームのタイトル。主人公や悪役令嬢の名前。国名等が思い付いたので、書いてみました。
転生した悪役令嬢が、同じく転生したヒロインをざまぁする系の世界で、ヒロインに転生してしまった主人公がそのフラグを回避しようとするお話が読みたくて、自分なりに頑張って書きました。
――ふと、自分が今手に持っているものに違和感を覚える。
どうして木の棒なんか持っているんだろう。
何で外でしゃがみこんでいるんだろう。
――――今の今まで地面に描いていた、この人達は誰?
なにをいっているの。
わたしはおそとであそんでいただけでしょう?
いまは、おとうさまと、おかあ、さま、と――
――ああ、そうだった。私は、わたしは。
わたしはアストロ・I・オブザーバー。
私は、わたしに生まれ変わった女子高生。
私は転生したんだ。異世界に。ゲームの世界に。
――乙女ゲーム【聖なる乙女の天体観測】の主人公、〖アストロ・I・オブザーバー〗として。
乙女ゲーム【聖なる乙女の天体観測】。【聖女天】【オトテン】と略される。
このゲームは、タイトルにもある通り天体がモチーフとなった女性向け恋愛シミュレーションゲームだ。
登場人物は衛生や惑星、星にちなんだ名前をしている。舞台となるこの国〖ユニーヴェル王国〗も、宇宙になぞらえてつけられている。
そんなゲームのヒロインである主人公は、天体を観測する者の名前を持っている。それ故か、公式では主人公やヒロインといった呼称は使用されず、〖観測者〗と呼ばれている。らしい。
――そう。「らしい」なのだ。
私の記憶では、全てに「らしい」がついてしまう。
何故なら、私が原作のゲームをプレイしていないから。
SNSで相互だった人がそのゲームにハマっていて、その人の垂れ流しや布教しようと送られてきた長文に「ふーん」「へー」と返していただけ。
つまり、相互さんの妄想混じりの垂れ流し等からでしか情報を得ていない。
原作未プレイかつ受動喫煙知識しかない私が、原作ヒロインに転生してしまった。
……と、いうことになる。
――――もしかしなくても、これは大分やばいのでは?
いやそもそも、何で原作未プレイ勢の私が主人公に転生しちゃっているんだ。普通、こういうのはこのゲームが大好きでやり込んでいる人を採用するものじゃ?明らかに人選ミスでしかない。
相互さんがこのゲームに情緒を狂わされて日々発狂してる様を横目に、他のゲーム情報を見ていたような人間の私が〖観測者〗だなんて、何かの間違いでは。
そう思いたいけれど、わたしの容姿と名前がそうさせてはくれない。
今のわたしは観測者。アストロ・オブザーバー。
夜空を思い浮かべるような黒髪は、星を散りばめたように煌めき。星雲を閉じ込めたような瞳は、様々な色で輝いている。
そして、貴重な【聖魔法】の使い手だ。
そう、この前にも、攻略対象の一人だった(筈)のここら一帯の領主の息子さんだって――
『――このもすめごが、ルナエラじょうのおっしゃっていた――』
『――――はめつをもたらす【あいまほう】の、アストロ・オブザーバー、か』
…………。
あ、あれ??
た、確か主人公って【聖魔法】の使い手だった気が?何で??
それに『破滅をもたらす【あいまほう】』って、もしかして【穢魔法】のこと?!
それって、確か、悪役令嬢である、――――
…………ちょっと待って。彼、何て言ってた?
『ルナエラじょうのおっしゃっていた』???
ルナエラ嬢って、スピカ・ルナエラ公爵令嬢……?
……いや、まさか。まさか――――
(よみがえる、よみがえる)
――『今の時代、ヒロインに転生なんてナイナイ!異世界転生するなら悪役令嬢一択でしょ!』――
(よみがえる)
『そして、破滅だの婚約破棄だのざまぁだののフラグをへし折って、代わりに恋愛フラグをバンバン立てるの!』
(よみがえる)
『それに、人様の婚約者奪っておきながら皆から愛されるって思い込んでる、性悪クソビッチなヒロイン転生者を、逆にざまぁしてやるの!』
(よみがえる)
『――だって、それが今の流行りでしょ?』
(よみ、がえる)
『悪役令嬢に転生した主人公が、色んな破滅フラグを折って、攻略対象達から愛されて、同じく転生したヒロインからは嫉妬と憎悪を向けられて』
『そんなヒロイン(笑)やその取り巻きから濡れ衣を着せられたりするけれど、紆余曲折あって逆にそんな連中を断罪したりざまぁしたりする』
『それが、今じゃ当たり前の物語だよ』
『乙女ゲームだの異世界転生だの、全ては悪役令嬢のためのもの』
――『悪役令嬢が、ハッピーエンドを迎えるための物語』――
――――まさか。
ここは、ここが、そうだった、とでも。
『乙女ゲームの【聖なる乙女の天体観測】の世界』じゃなくて、『【乙女ゲームの悪役令嬢に転生した者】のための世界』だ、とでも?
……ああ、でも、その可能性が高そう。
未プレイだから自信はないけれど……。〖観測者〗はとても希少な浄化、救世の【聖魔法】が扱える。
そして逆に、悪役令嬢である〖スピカ・ルナエラ〗は国の滅亡、世界を破滅へ導くとされる【穢魔法】を扱う。筈だ。
相互さんの言っていた内容が正しいなら、確かにそうだった。
魔法が扱えるかどうかは、個人差はあれど四つから七つの間に。遅くても十を迎える頃には魔法が発動し、自身が魔法使いであることを自覚する。
〖観測者〗は、十を迎えた誕生日に魔法が発動し、それが世界を救うと称される【聖魔法】であると判明する。
……けれど。
わたしは今、四つになってまだ間もないのだ。
それなのに、どうして魔法使いであると、【聖魔法】ではなく【穢魔法】だと、彼は、悪役令嬢の彼女はそう認識している??
――もし、悪役令嬢とされる〖スピカ・ルナエラ〗が私と同じ転生者だとしたら。
――もし、私と違って、原作のゲームをプレイしていたとしたら。
――もし、相互の人が語っていたように、『悪役令嬢に転生した人が主人公の物語』の世界なのだとしたら。
――もし、その人が〖観測者〗を排除したい。自分が攻略対象達から愛される存在なのだと思っているのだとしたら。
――――そんな世界で〖観測者〗として転生してしまった私は……???
……一体、どうすればいいの?
『原作ゲームの悪役令嬢に転生した人がいる』――それはいい。私だって原作ゲームの主人公に転生してしまったし。
『悪役令嬢に転生した人が主役』――これも、分かる。『ヒロイン転生』より『悪役令嬢転生』が主流となってるのは知ってるから、そういう世界線なんだって理解はできる。
『原作の知識を活かして、自分に有利な未来にもっていく』――これも、まあそうするだろうなと思う。誰だって望んで破滅を迎えたくはないだろうし。
でも。
けれども。
どうして、『ヒロインと悪役令嬢の魔法が入れ替わっている』んだ。
まるで『ヒロインと悪役令嬢の立場を入れ替えた』ように。
『ヒロインは破滅をもたらす【穢魔法】』『それに対し、悪役令嬢は【聖魔法】で世界を救う』
『ヒロインこそが【悪を背負うに相応しい存在】である』
そう、捉えられるような。
もし、本当に。
スピカ・ルナエラに転生した人が、アストロ・オブザーバーに転生した私を、排除しようとしているのなら。
彼女が、私を邪魔だと思っているのなら。
自分が愛されるために、私を陥れようとしているのなら。
……私は。私、は――
――どうすればいいの。
(戦うしか道はない)
――そんなの、一体、どうやって。
(私の、わたしの持てる全てをもって)
――私、原作をプレイしたことないじゃん。
(でも、全くの無知じゃない)
――知識だって、偏ってるし、あやふやだし。
(それでも、何も知らないよりもマシ)
――知ってたのと、違ったじゃんか。
(転生特典か何かかもしれないし、ただのデタラメかもしれない)
――じゃあ、じゃあ。
(だとしても)
《私は、わたしのために。生きるために。生きていくために》
《この世界で、足掻いて、足掻いて》
《掴み取るしかない》
《悪役令嬢達がわたしにもたらす未来を回避する術を》
《わたしが、破滅の道を辿ることのないように》
こんなお話が読んでみたいです。
他の設定とかは全然思いつかなかったので、ここまでになりました。
続きはありません。
でももし、この物語の主人公のお話で、「こういうのが読んでみたい」「ああいうのもいいかも」となったら。それを書いてみようと思えたら。そしてもし、それを形にすることができたのなら。
続きが生まれるかもしれません。
もしそうなったら、読んでいただけると、こうして形にして良かったと、「読んでみたい」で終わらせなくて良かったと。きっとそう思えます。
読んでくださりありがとうございました。