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0-5 灰被りな少女、やめるか迷う。

 昼下がりの午後。私が食事を終えると空き部屋の掃除を頼まれた。


 どうやらそこが私の部屋になるらしかった。だけど今は物置きになっているらしく整理整頓をしなければいけなかった。


 ここで私は喜びたかったけれど杖の話を聴いてから弟子をやめようかと悩んでいた。


 だって怖いしなによりも乗っ取られたくない。だけど今さらになって断るなんてできないし私は心の底から無事を祈った。


 そうこうしている内に物置きは片付き箒で最後の一振りをした。ふぅ。これで完了と。


 部屋が片付くってこんなにも清々しくなるんだね。部屋が広く感じれるしなによりもここが私の住まいになるんだ。フフ。嬉しい。


 で、でも杖は気を付けよう。禍々しい声は今でも記憶に残っているから。あの声はまるで深淵の主のような感じがした。


 かつてこの世界には深淵神という魔王を生み出す存在がいた。今はすっかり封印されていて私には無縁だと思っている。というか。そう信じたい。


 いくらなんでも私には深淵神を倒せるだけの力はありません。ただ深淵神を封印したと言われる四英雄の一人はなんでも神覚の杖を持ちし女の賢者だったのだとか。


 凄いよね。その伝承が世に広まったあとの結果に私は驚いた。なんでも封印後に分かったことだけど深淵神はこの世界の魔力の根源であったということに。


 これが本当なら私達は深淵神と共に生きなければならないということだ。そこにマリアンの言葉を足すと深淵神は時期に封印が自然消滅しいずれ復活するのだとか。


 これを耳にした私は絶対に無縁でありたいと願った。だって何度も言うけどそんな力があったらとっくの昔に活躍してるよ。こんなに苦労することもなかっただろうね。


 だからもしあの声の主が深淵神だったらと思うと私は関わりたくない。私に英雄なんて無理な目標だしそれに勇者自体も無理だ。私は自分の命を守ることで精一杯だ。


 そんな感じで思い続けているとマリアンがやってきた。どうやら確認しにきたようだ。フフ。どうですか。私が頑張ったらこんなもんですよ。フッフッフゥ。


「なんだい、これは。誰が荷物を廊下に出せと言った?」


 ぐはぁ。これには深い事情が――。そもそも私はまだ魔法が使えません。こんな重たい荷物を外に運べだなんて鬼畜です。言い訳なのかな、これ。


「そうか。まだ魔法がね。……しょうがないね。後の始末は私がしとくよ。それと朝練の続きがあるからまた広場に集まるようにね! 分かったね? エレナ?」


 喋ってもいないのに通じた。気を遣ってくれたんだ。うー。泣けるよぉう。これは午後も頑張らないといけないな。絶対に灰被りの魔法使いになってやるんだから。


 あ……なんだかやる気が出てきて矛盾した。もう……こうなったらとことんマリアンと付き合おう。うん。それが良い。だからここは――。


「はい! 分かりました! 師匠!」


 大きな声で答えた。ここで私は初めてマリアンのことを師匠と呼んだ。だって段々とマリアンも師匠ぽくなってきたと思ったから。もう迷わないから私。


 確かに嫌なことが山のようにあるのかも知れない。それでも私は前を向く。だって救われたのに変わろうともしないなんて酷いと思うから。


 師匠は別れ際に穏やかな雰囲気になっていたと思う。別に己惚れている訳じゃないけど気分が悪くなるようなことは私は言っていないと思う。多分だけど。


 師匠の姿がなくなると私は疲れたので仮眠を取ることにした。うわぁ。初めてのベッドだぁ。遠慮することなく跳び込んだ。はぁ~。生き返るよ~。


 うつ伏せから仰向けになり私は寝始めた、全ては朝練の続きをするために。夢の中に入る前にどうして空き部屋があるのかが気になったけどもうどうでも良いと眠った。


 一度でもベッドの中に入ると私はいつもこうなる自信がある。ふわぁ~。それよりもお休みなさい。こうして私は仮眠を自分の部屋で取るのだった。




 爆睡していた。師匠が近くにいることに気付かなかった。だから私は起こされることになる。


「これ! エレナ!」


 目を覚ました時には揺さぶられていた。し、師匠? うーん。視界がぼやけている。もう見た目では判別できない。


「約束は守らないとねぇ? エレナ?」


 どうやら私は師匠に失望されることを仕出かしたみたいだ。えーとなんだっけ? あー駄目だ。すっかり忘れてる。


「やれやれだねぇ。朝練の続きはどうしたんだい。エレナ」


 あわわわわ。わ、忘れてたよ。そうだった。ついうっかりと仮眠を超えてしまったよ。え? と言うことは――。


「私は待ってたんだよ? 夕方になるまでね」


 嘘でしょ? 今が夕方? わ、私としたことがこんなにも師匠を待たせてしまうなんて。ああ。どうすれば良いんだろうか。


「全く。仮眠程度なら許せるがまさかここまで熟睡とはねぇ。違う意味で大きくなるね。あんたはさ」


 ひ、皮肉られたぁ~。うわぁ。これはまさかの試練だ。ここを抜け出さないと私は顔向けができない。師匠に謝らないと。


 私は慌てて掛け布団を持ち上げ折り返し上体を起こした。そしてすぐさまに誰よりも早く師匠に謝った。


「す、すみません! 師匠!」


 素直に謝ったけど師匠からまだ怖い雰囲気が出ていた。う。許してくれないのかな。だとしたらもうどうすれば良いんだろうか。


「いいよう。もう。それよりもあんた……今すぐに外に出な」


 なんだろうか。許してくれているようには見えないよね。これは謝るの大失敗だと思えてきた。外に出るって。しかも今すぐにって。


 外に出てなんの意味があるの。もしかしてただ単に私への躾をしようとしているの。ふわぁ。こんなにも怖いと感じたのは何日振りだろう。


 なんだか分からないけど私は師匠と一緒に外に出ることにした。師匠の言ったとおりなら外は夕方の筈だ。なんの目的があるのかが分からない。


 こうして私は人知れず恐れを抱きながら師匠と共に家を出たのだった。果たして私に待ち受ける師匠の思惑とはなんなのか。

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