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0-1 灰被りな少女、追放される。

 私は親から愛されたことなんて一度もない。だって私はこの世で醜い生き物だから。

 この世界は個人の魔法力によって人生が決まっていく。悲しいことに私は魔力すら持っていない。

 それを象徴するように今の私は銀髪赤眼だ。この世界では銀髪赤眼は無能とされていた。しかも本当に私には魔力がなかった。

 不遇とも言えるような状況だけどこれは私の問題だと思っていた。ここで他人を攻めてもだれも得をしないと自分を言い聞かせた。

 そんな日のことついに私は一家から追放される。


「いいか! エレナ! 今日からお前をこの家から追放する!」


 私が委縮するほどに怒鳴り散らしたのは父ことアダムスだった。父はテーブルの上に両手を当て立ち上がると今まで座っていた椅子を下げた。

 こんな日がくることなんか分かっていたよ、私は。ごめんね。お父さん。もっと愛されるように生まれたかったな。

 ああ。次に生まれ変われるならもっと出来栄えの良い人形の方がよかったな。もうそれくらいに私は疲れたよ。はぁ。これからどうしよう。


「うん」


 としか言えなかった。なにを言っても実力の世界だしきっと私は野垂れて天に召されるのだろう。あ。それもいいな。はは。

 もう無心に笑うことしかできないよ。こんなにも世界を生きるのが大変だなんて酷いよ。神様。

 命あっての人生だとか言われても生きる術がないんじゃ意味ないよね。ただでさえか細い腕なのに独りは怖いな。

 だけどなんだかんだと私は椅子を下げ立ち上がった。荷物の整理もせずに出ていかねばならないなんて鬼畜すぎるよね。

 そう思いながらも私は椅子を元に戻し父に一礼してからこの家を出ていこうと振り向いた。最後の最後まで愛されてないな。私。


「いいか! 二度とだぞ! 私の前に二度と現れるな! この灰被りの出来損ないが!」


 もう聞こえないフリをしてもいいんだよね? こんなにも悲しい別れだなんて。生まれ変わった私は望まないよ、絶対に。

 後ろを振り返っては駄目で荷物もなしの追放。鬼畜の上を行っている。だけど私にはもうどうすることもできなかった。

 ただ言われるだけの毎日におさらばだけでもいい人生だったのかも知れない。はぁ。どう考えても無理があるような気がしてきた。

 こんなにも愛されてない私の数奇な人生を本にでもしてほしいくらいだ。だって生きた証のひとつやふたつくらいほしいのだから。

 ああ。静かな時の中で私は家を出た。あんな家でも私にとっては唯一無二の存在だった。家の実権を握られては太刀打ちようがない。

 外は寒いな。せめて母の手作りマフラーを取りに行きたかったな。私が生まれる前に作ってくれたマフラーだ。大事にしたかった。

 はぁ。息が白い。こうはしていられない。森の近道を通って街を目指そう。そうだ。それがいい。地道に挑戦だ。さぁ。行こう。

 あれからちょっと経ち潔く森の中に入る私。それから少しの時間が過ぎある場所に辿り着いた時だった。どこからか呻き声がした。


「うう」


 呻き声は明らかに老婆の声として聞こえてきた。私が「だれかいるの?」と言うと老婆の声で返事をしてきた。


「ああ!? 助けてくれぇーい!?」


 どんどん声のする方に寄るとそこには横たわる老婆の姿があった。恐れを抱きながら老婆に近付き立ち止まると私は思い返していた。

 助けを求めていた老婆は賢者で名はマリアンだった。私は意地悪婆さんと名付けるほどに鬼畜な老賢者で有名だった。

 だけど私は助けなきゃと思いマリアンに寄り添い「私に出来ることを教えてください」と言った。

 するとマリアンは籠を指した。余りにマリアンが腰を擦っていたので私が腰煩いだと勘付いた。

 静かに籠を持ち中を見るとそこには数枚の湿布が入っていた。私はこれだと思いマリアンの腰に湿布を貼ることにしたのだった。


「はぁー! 効くわい。効くわい」


 なんとも呑気だなと私は思った。なんせこの森は熊が出ることでも有名だった。もし私が熊なら間違いなく襲っていたかも知れない。

 湿布を貼ってから何十分が経った。するとマリアンは急に立ち上がり何事もなかったように杖を持ち上げどこかに飛んでいきそうな感じを醸し出していた。

 だけどそんなことはなかった。マリアンは私のことを覚えていてくれていた。マリアンは私を見てはこう言い始めた。


「助けてくれて有難うよ。暇があればでいいから家においで。私は……いつでも待っているからねー」


 マリアンはそう言うとどこかに本当に飛んでいった。魔法陣を地面に浮かび上がらせ宙に浮き姿を消した。きっと家に帰ったのだろう。

 帰るべき場所か。はは。もう私には帰るべき場所なんてないんだ。だったらここはマリアンの家に行ってみようかな。冗談抜きで。

 なんだか今の私はマリアンのことがそこまで苦手ではなくなっていた。こんな私をマリアンは拾ってくれるだろうか。本気で。


「ああ!? もう! 行くしかないのよ!」


 私は独り言を口から出し覚悟を決めた。分かった。これが私の人生だって。だから私は諦めない。諦めないで一人前の魔法使いになってやる。

 どうやってなんて知らない。ここまできて悔しいで終わるなんて嫌だ。せっかくの希望の光を無駄にしたくはない。だから行こう。行くんだ。私。

 奮い立たせ私はマリアンのところに向かうことにした。これがどんな運命になっていくかなんて分からないけどこれが私の生き方なんだ。だれにも邪魔させない。

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