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闢発の妖精王1 壊滅編  作者: C先輩
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異なる技術

異国の電車って全然違いますよね。

ボロッボロだけど、車両の上に乗っかって移動した時は謎の感動を覚えました。

 コックピットに戻って機体と接続し、アイリスに促されるまま望遠レンズ越しの映像を見て驚いた。


 そこには船が居た。広大な平原に一隻の船である。

 おかしな事を言うと思うだろうか、だが事実だ。その船は船底が平べったく、マストからは光り輝く帆が張られ、水も無い平原の低空をゆっくりと飛んでいた。

 そう、紛うこと無く空を飛ぶ帆船だ。理解に苦しむが、他に言いようが無かった。


「第一村人、というには少々奇天烈が過ぎるな」


 文明の痕跡どころか、未知の文明に遭遇してしまった。

 しばらく観察していると帆船は速度を落とし、やがてゆっくりと着陸した。すると船首と船尾がラダーのように開き、中から西洋甲冑のような意匠の装甲を纏った大型ロボットの集団が現れた。


「EL.F.――にしては不格好だな」


 がっしりとした体格に、大型の盾と剣を構えた騎士の如き威容だった。盾なんて何に使うのだろうか。


「はい、それにわざわざ二足歩行している意味も分かりかねます」


 当然だ、素粒子エンジンを原動力とするEL.F.は重力の楔から解き放たれている。わざわざ関節負荷の強い歩行をせずとも、縦横無尽に空を飛べるのだ。


「何かの式典(セレモニー)かもしれんぞ?パフォーマンスとして歩くフリぐらいはできるじゃないか」


「確かにそうですが、こんな場所で何を祝うのです?」


 ご尤もである。

 観察を続けていると、彼らは隊列を組んで前進を始めた。進路上を見れば小さな村が見える。


「んん?なんだあれは――」


 距離が更に遠いので、望遠レンズを切り替える。

 目に入ってきたのは、惨たらしい光景だった。

 焼け落ちた家屋、倒壊した物見櫓、撒き散らされた肉片を貪る黒い獣。

 獣は大小様々、犬のような四足で駆け回る者もいれば熊のように立ち上がって暴れている者も居る。共通しているのは、体中をコールタールのような黒いヘドロで覆い、そこからゴポゴポと蒸気を出している点だ。

 彼らは人を食っていた。それは腹を裂かれ、首を折られた村人だったと思わしき人々だ。渇望するように、逃げるように、狂乱したように貪っていた。

 本能が忌避感を呼び覚ます。あんなのは生物として在ってはならないと、そう感じる程に。


「悪趣味ですね、何でしょうか」


 アイリスの淡白な感想と同時に、プァーンとラッパのような音が平原に響き渡る。騎士ロボットの集団が前進を始めたのだ、先程のは合図だろう。


「何だろうな、彼らはあの黒いのと戦うみたいだぞ」


 隊列の前に居た機体達が、肩に掛けていた大筒を取り出して構えると、ドンという炸裂音と共に炎を纏った砲弾を打ち出した。

 信じられない速度だが、あまりにも弾速が遅すぎて放物線まで描いていた。だが驚きとは裏腹に、砲弾の雨は村へと降り注ぎ、獣達を焼き尽くしていく。効果は抜群のようだ。

 そこでもう一度、プァーンと音が鳴り響く。すると隊列を組んでいた機体達が大筒を全て投げ捨て、抜剣して突撃を始めた。

 まるで旧暦の地球でかつて行われていた戦列歩兵陣の抜剣突撃だ。それを大型ロボットが行っているので迫力が凄まじい。地響きまで起きている。


「おいおい、随分と原始的だな、あの兵器は本当に空飛ぶ船を作った連中と同一の技術なのか?」


「シュウ様が推測した異世界という説がより現実味を帯びたのは確かです」


「でもさっきのドラゴンと比べて差がありすぎじゃないか?あんなのじゃ絶対倒せんぞ」


 アイリスと話している間にも、彼らは村へ突撃し、撃ち漏らしや仕留めそこねた獣達をその巨大な鉄剣で穿ち、斬り伏せていく。

 しばらくすると掃討が完了したのか、騎士ロボット達は全員剣を掲げて勝鬨を上げ始めた。


「終わったようですね」


「ある意味凄い技術だったな」


 遠目から眺めていただけだったが、その光景はまさしく衝撃というほか無い。

 強さ、という意味ではEL.F.に及ぶべくもないが、あんな重量物の鉄塊を二足歩行で全力疾走させ、軸足の負荷を物ともせず、地に足をつけて剣を振り回す様は異常だ。EL.F.でやったら関節が一発で折れてしまうだろう。


 この世界は、飛行船といいあのロボットといい、自分の知らない技術が凄まじい発展を遂げた世界なのだろう。それが早くに知れた事は大きな収穫だった。


「いやいや面白いじゃないか」


「では接触しますか?」


「いや、先に町を探す。彼らはお急がしそうだ」


 明らかに軍属と思わしき人達だ。彼らにとって自分は明らかに不審者だろう。


「空を飛ぶ機体は珍しそうだ、光学迷彩を使おう」


「了解しました。クラウド接続不能の為、パッシブ迷彩になります」


 少し性能は落ちるが、使わない手は無い。間近で見ない限りは大丈夫だろう。

 機体を隠して空に飛び立つ。あの飛行船が来た方角へ向かえば、おそらく町はあるはずだ。


「所でシュウ様」


 飛び立ち、町を探していると不意にアイリスが話しかけて来た。


「シュウ様がお気に入りの、安全刑事は何が面白いのでしょうか?」


 その後、街道を行く商人を襲う賊を見つけるまでの道中コックピットは戦争状態となった。

飛行船っていろんなファンタジーで出てきますけど、プロペラじゃ推力足りなそうだし、気球みたいなのだと、どうやってあんなデカイ布を作って維持するのか落とし所が見つからず、結局より厳つい装備に。

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