大魔王の孫と偽物の姫君
なろうラジオ大賞2第二十九弾。テーマは『大魔王』『偽物』の二つです。
……仰りたい事は分かります。「終わりって言ったじゃない! 嘘吐き!」って目に涙を溜めながら仰りたいのでしょう。
でもあの似非ホラーで締めというのはどうにも座りが悪いので……。
よろしければ読んでやってください。
人と魔族の戦争が終わり、百年が経った。
戦争に直接関わった者は僅かとなったが、対立感情は根強く燻っていた。
そこで両国は関係改善の為、王家間の婚姻を決めた。
醜悪な企みをその胸に宿して……。
「お初にお目にかかる。大魔王が孫、ルビデと申す」
「初めまして。国王の娘、セリンと申します」
お互いペコリと頭を下げる。
(かわいい……)
(カッコいい……)
幼い二人は、一目で相手の事を気に入った。
「よ、良ければ庭を案内する」
「あ、ありがとうございます!」
色とりどりの花が咲き乱れる庭を、歩調を合わせて歩く。花の香りに満ちた明るい庭園は、二人の心を象徴するようだった。
「……あの、姫」
「はい」
「我々が将来結婚すると言う話は、もう……?」
「は、はい……」
「私は、最初は、バカバカしいと思っていたのだ。まだ子どもなのに、国の都合で結婚などと……」
「……そう、ですね」
「しかし」
「え?」
「貴方と会って、結婚はともかく、友として交流していきたいと思ったのだ」
「!」
「どう、だろうか……」
「わ、私も、まだ結婚なんて考えられませんけど、ルビデ様とお友達になれたら嬉しいです!」
どちらともなく笑い出す二人。
「嬉しいよ。私の周りは大人ばかりで、姫が私の初めての友達だ」
「あら、いけませんわルビデ様」
「何がだ?」
「友達は名前で呼ぶものですのよ。それを、姫、だなんて」
「す、済まない。せ、セリン……」
「はいっ」
「だがそれなら私も様など付けずに呼んでおくれ」
「そ、そうですわね。……る、ルビデ」
「う、うん」
二人は庭園の薔薇より真っ赤になった。
あぁ、可愛かったなぁセリン。女の子ってやっぱりあぁいうのが良いよなぁ。
お祖父様が私を『男として育てる!』なんて言わなければ、あんな風になれたのかな。ま、そのお陰でセリンと友達になれたけど。
でも結婚の時に女とバラして人間に恥をかかせるってのは最低だ。もう少し仲良くなったらセリンに教えて、そんな企みなんかぶっ潰してやる!
何とかバレずに済んだよ……。
王妃様はよっぽど僕が嫌いみたいだな。僕は母さんみたいに役者になりたいんだ。父さんの後を継いで王様になる気なんて無いのに、城から追い出すために女装までさせて……。魔族も恥をかいて一石二鳥とか、その考えの方がよっぽど恥ずかしい。
でもルビデと仲良くなれたのは嬉しい。カッコいいよなぁ。いつか僕が男だって話して、親友になりたいな。
二人が真実を知るのは十年後……。
読了ありがとうございます。
片方が性別を偽っている作品はよく見ますが、両方だとどうかな、と思って書いてみました。真実を知った時どうなるのか、楽しみですよね。大魔王と王妃が「よくもだましたアアアア!! だましてくれたなアアアアア!!」ってお互い詰り合うのが。
……書こうかな?
本日中に間に合えば投稿しようかと思いますので、よろしくお願いします。