第8話:親のほうがはしゃいでたら子どもは冷めるよね
投稿したつもりになってました・・・。実行押さないと投稿されないんですよね。いい加減慣れたいです。
この世界は前世とは異なる法則が数多く存在する。その一つに「祝福」と呼ばれるものがある。
一説によれば、それはかつて最弱の存在と言われた人間を不憫に思った神が授けたものともいわれ、また一説では人間が神に選ばれし存在であるからともいわれている。真相は分からないが、この世界の人間は、12歳になると一つだけ何らかの才能・能力を「祝福の神」から『祝福』として授かる。その内容は十人十色。似たようなものはあっても、まったく同じ祝福を受けることはない。
この世界では祝福の内容によって将来の方針を決める。農民になるのか、騎士になるのか、盗賊になるのか。その祝福の内容が今後の人生を大きく左右するのだ。どんなに頭がよくても、運動ができても、その祝福の内容で将来を決めることがこの世界の常識なのだ。
従って、オレが今まで積み上げてきたものも、今日授かる予定の祝福の内容によってオレの人生が奈落の底に落ちてしまう可能性も・・・。いや、それはないか。オレは既に様々な才能に恵まれている。マドルーナを継ぐくらいの能力は既に持ち合わせている。両親も、オレがどんな祝福を受けようとも、オレがマドルーナを継げなくなるようなことにはならないと思っているようだ。
まあ、楽しみではある。父の「先見の目」、母の「超健康」。どちらも当たりの祝福といわれる超高性能の能力。叔父のようなただ飯を大量に食うことのできる才能なんかはごめんだ。祝福の内容は、それまでの生き方や遺伝に関係なく、完全にランダムで決められるようなので天に祈るしかないようだ。
「トーマ様もいよいよ祝福を授かる年になったのですね・・・。なんだか感慨深いものがあります。」
「・・・クロノ?あなた、トーマよりもソワソワしているじゃないの。少しは落ち着いたらどうなのよ。」
「エ、エレス、そうはいってもな・・・。不思議なもので、自分が祝福を受けた時よりも緊張しているのだ。」
「まあ、それは分かるわ。私の場合は楽しみで心が弾んでいるんだけどね。トーマは既にこの家を継ぐにふさわしい能力は持ち合わせているのだし、何の心配もないでしょう?」
「そ、それはそうなんだが・・・。」
「お父様、大丈夫ですよ。兄ちゃんならきっと大当たりの祝福を授かるに違いありません。私もお母様と同じく楽しみでなりません。」
「ハッハッハ!!そうですとも!トーマ様がハズレの祝福を授かるわけありませぬ。私も楽しみです」
当事者であるオレよりも家族やメイド達のほうがなんだか興奮しているようだな。
今日、オレは12歳になる。オレが生まれた時間になったら急激な眠気と共に祝福の神によって「祝福の間」と言われる場所に意識を連れていかれるらしい。そして祝福の神によって何らかの祝福を授かるということだ。
ちなみに、その祝福の内容は祝福の神によって簡単に説明される。あくまでも簡単に。その祝福の本質を見抜けなければ、せっかく授かった才能をうまく使いこなせずに一生を終えることもあるようだ。
『世界の節理』の著者であるネイチャーは祝福を大きく二つに分類していた。
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『ネイチャーレイチャー著:世界の節理 より』
(前略)
祝福は大きく二つに分けることができる。一つは「能動型」、もう一つは「受動型」である。
能動型とは、その名の通り、自らの意思で能力を行使するタイプの祝福である。能動型の祝福を授かったものはその能力の本質を理解して行使する必要がある。もう一つの受動型はある一定の条件を満たしたときに効果を発揮するタイプの祝福である。
(以下省略)
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父の「先見の目」は能動型、母の「超健康」は受動型だ。
オレはどちらのタイプを授かるのだろうか。能動型はなんとなく扱える自信がないから受動型がいいが・・・。本質さえ理解できれば、使い勝手がいいのは能動型だ。父はその能力を完璧に行使している。
「あ、そうだ。トーマに言っておかなければならないことがあったのだ。」
「なんでしょう?お父様。」
「お前が授かる祝福の内容次第でお前を学校に行かせようと考えているのだ。」
「学校ですか?」
「ああ。学校といっても、様々な種類の学校があるから、お前の祝福にあっている学校に行ってもらうつもりだ。学校なんか行かせず、トーマにマドルーナを継いでもらうことも出来るが、私はまだ若いので隠居する年齢ではない。学校に行き、様々な人と出会って見聞を広げるほうがお前のためになると思ったのだ。どうだ?」
「・・・わかりました。」
「ん?どうした、行きたくないのなら無理をしなくてもよいのだぞ?」
「い、いえ!行かせてください!」
学校。父の言う通り、行ったほうがいいのは間違いない。だが、オレにとって学校は進んでいきたくなるような場所ではないのだ。前世の記憶をどんなにたどっても、オレには学校でのいい思い出なんて一つもなかった。正直不安しかないが、すべては祝福次第。学校の話もまだ確定事項ではないのだ。
「トーマ様の剣術は今や王国で一二を争う腕前となっております。岩水派と相性のいい祝福が手に入ったらエンタクル学園に入るとよいかもしれません。私も以前はそこに在籍しておりました。世界中から腕の立つ剣士が集まっています。今のままでもトーマ様なら十分に通用するでしょう。」
「私はホグワール魔法学園が良いと考えます。トーマ様は頭がいいですし、魔法のセンスは世界中のだれよりも優れているといえるでしょう。魔法に関する研究はどの学園よりも進んでいますし、設備も整っております。世界中の秀才が集まるため、様々な名家とも交流することができますし、トーマ様にとって最適な学園といえるかと。」
トールとアリスがそれぞれオススメの学校を挙げた。剣術に重きを置いた学校と魔法に重きを置いた学校か。それにしても、どちらも聞いたことがあるような学校名だな。学校名だけでも何となくどんな学校か予想できてしまう。
しかし・・・。祝福の神か。オレはこの世界に来るときに運命の神と会っている。神様の割にはなかなか話しやすいやつだったが、祝福の神はどうだろうか。なんとなく女性の神様であるような気はしているのだが・・・。ていうか、そもそも神様に性別なんてあるのか?
(キィィィィィン・・・・・)
「うっ・・・・・」
「トーマ!ついに始まったか!!」
「さあ、ベットに横になりなさい」
頭に機械音みたいな高音が鳴り響く。次第に周囲の音が聞こえなくなり、オレは意識を失った。
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目が覚めた。
真っ白な部屋。なんとなく身に覚えのあるこの空気感。オレが運命の神と出会ったときと同じ感触だ。
(人間よ、控えよ)
後ろから声がした。すると俺の体は強制的に膝をつき頭を地面につける格好になった。
(我は祝福の神、ベネフィーである。これより貴様に祝福を授ける。表を挙げよ、人間」
美しい声だ。透き通るようなその美声に促され、顔を挙げた。目の前に言い表せないほどのとんでもない美人の神がいた。透き通っている。
(ではこれよr・・・・・はぅあっ!!!!)
ん?どうしたんだ?
(うっ・・・ぐ、ぐううう・・・。)
だ、大丈夫ですか?
(き、きさま!人間じゃないだろう!最高種の悪魔か?それとも別の神の使いか!)
え、いや、人間ですけど・・・?
(嘘をつくでない!お前が人間というのなら、これはどう説明するのだ!)
これ?これって何ですか?
(貴様を目にした瞬間に、なんだかキュン!と来てしまったのだ!我が人間に対してこのような感情を抱くなどあり得ぬ!なんの術を使ったのだ!)
えぇ・・・。なんの術も使ってませんし、オレに神を苦しめる術を使えるはずがないでしょう。
(ううむ・・・しかし、それでは我がお前に対してときめくなどあり得はせんのだ。こうやって話しているときでも、お前に対するドキドキが止まらないのだ!なぜだ!)
そんなこと、オレに聞かれても・・・ん?ときめいてるんですか?それ、もしかして。オレの運命が原因かも。
(お前の運命???何のことだ?)
実はオレ、運命の神様から「神をも惚れさせる世界一の容姿」を授かったんですよ。
(なんじゃと?運命の神・・・モイラのことか。奴がなぜそんなことをするのだ。)
実はですね・・・かくかくしかじか・・・。
・・・・・
(ふうむ・・・。事情は分かった。それならば、我がお前に惚れてしまうのも無理はないということだな。)
でも、本当に神を惚れさせることができるとは、思いませんでしたよ。
(ふむ、神をも惚れさせる世界一の容姿か・・・。お前が授かった運命は、最上級の祝福と同じくらいの能力であるといえる。いや、どんな祝福も神に影響を与えるほどの能力を得ることはないからそれ以上だな。お前が授かった運命はこの世界で最強の能力といえるだろうな。)
なんと・・・。前世のコンプレックスから変な運命をお願いしちゃったけど、最強の能力を知らず知ら
ずのうちに得ていたというわけか。
(そうか、これが人間の抱く劣情か・・・我のような神がこのような感情を経験できるとは・・・ククク・・・クァッハッハッハ!なんて人間だ!まさか我が、人間の抱く劣情を抱くことになるとは!久々に楽しい気分になれたぞ。)
そうですか、それは何よりです。楽しいのが一番ですから。
運命の神様もそうでしたが、ベネフィーさんも話しやすい人なんですね。
(ククク・・・我が話しやすいだと?そんなことを言う人間は初めてだ!どんな人間も、我の前では委縮してへ垂れ込むというのに。我はお前を気に入ったぞ!名は何というのだ。)
トーマと言います。
(そうか、トーマ。お前には特別に、最上級の祝福を授けてやろう。)
・・・へ???
(普通はランダムで決められるのだがな。お前は我を惚れさせた。惚れた相手に対しては尽くしたくなるものだ。さすがに祝福を二つ以上は上げられないが、最上級の祝福を授けてやろうではないか。)
そんなことできるんですか?
(できるとも、我は神ぞ。運命の神同様、祝福は我の思うままなのだ。我は完全にトーマに惚れてしまったようだな)
そ、それじゃあ、遠慮なく最上級の祝福を授かりたいと思います。
(顕現せよ!"祝福の宝玉")
目の前に三つの金色に光る宝玉が現れた。
(どれも最上級の祝福だ。どれか一つを選ぶがいい、トーマよ)
真ん中の宝玉に手を伸ばす。宝玉に触った瞬間、触った宝玉の光が霧散しオレの体に入っていった。
(おお、トーマよ。貴様が得た祝福はこれまたトンデモナイものだぞ!!)
どんな能力ですか?
(祝福名:ゴッドハンド 発動した状態で何かに触れると、それに含まれる魔素を吸収する。吸収した魔素は魔気として使用者に蓄えられる。この能力は具現化することも可能で、最大5メートルほどの巨大な手として発動することも出来る。 ・・・こんな感じの祝福だ。)
・・・名前は凄そうですけど、魔素を吸収するだけの能力が最強なのですか?
(ああ、最上級の祝福だとも。・・・ククク、生かすも殺すもお前次第。この能力の本質を理解し、見事に扱ってみろ、トーマ。完璧に扱えるようになれば、世界最強になることも夢ではなくなるぞ。)
頑張りますよ。世界最強には興味はありませんけどね。
あ、そうだ。ベネフィーさんに聞きたいことが。
(ん、何であるか?)
なぜ人間のみが祝福を受けられるのですか?様々な仮説がありますが、どれも根拠のない不確かなものばかりで・・・。
(お前は勘違いしているようだが、魔物も祝福は受けるぞ?)
え、そうなんですか?
(お前ら人間が考えた説はすべて人間を高等な種族と信じてやまない狂信者が言った言葉だ。)
そうだったんですね。
(ただし、すべての生物が祝福を受けるわけではない。祝福を受ける条件は「自我の有無」だ。我が祝福を与えるのは自我がある生物だけ。魔物の中には自我のないものがほとんどであるために祝福をもらえていないだけだ。魔王など自我のある高等な魔物は祝福を持っている。)
なるほどね、人間は自我があるから祝福を受けることができるのか。
(ククク、お前のように我と自然に話せる人間は今までいなかったからな。お前とここで別れるのは名残惜しい。そうだ、我が会いたくなったら勝手にお前の夢に現れるから、その時はよろしく頼むぞ。)
ふふふ、そうですか。では夢の中で待っていますよ。楽しみにしています。
(・・・ククク、やはりお前は他の人間とは何か違うものを持っているようだな。また会おう、トーマ)
キィィィィィン・・・・・
また頭に高音の機械音が鳴り響く。それと同時に意識も遠くなっていき、再びオレは気を失った。
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こうしてオレは祝福「ゴッドハンド」を手に入れた。
まだこの時、オレはこの能力の本質を理解できていなかった。
まさに「ゴッドハンド」。神の名を冠するその祝福は紛れもない最強の能力であった。
読んでいただきありがとうございました。
友達の家に泊まって、帰ってきたら微妙に残ってたカレーが白くなってた・・・。
カレーから何故か腐卵臭がしました・・・。