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第6話:前世的に言えば、いとをかしって感じだった

大学の課題と自動車学校でものすごく忙しい・・・。

三日に一話投稿する予定だったのに一週間に一話になってる・・・。

 その店の二階は妙な静けさがあった。二階はVIPルームになっている。見た感じ人は全然いるのだが、その人たちの声が聞こえない。この世界には話しながら食事をしてはいけないというルールはなかったはずだが・・・。

「トール、一階は賑やかだったのに、二階はとても静かだね?」

「実は、二階においてあるテーブルの一つ一つに音響遮断魔法が張り巡らされていて、話し声が外に漏れないようになっているのです。各テーブルの下に魔法陣が描かれているのが分かりますか?」

「ああ、確かにあるね。なるほど、VIPルームならではって感じがするね。国王様も利用するのがわかるよ。でも個室のように周りから見えなくなるわけじゃないんだね?」

「遮光空間にすることで周りから見えなくすることも可能です。ただ、それをするには別に料金がかかります。」


すごいな。前世のように壁で仕切らずとも個室のような空間が作れるということか。防音にするだけでも身内との会話に集中できてよさそうだな。重要な話し合いや秘密の会合もここなら安心してできるってことだな。


それにしても・・・

「レイカに言っていた通り、この店はとてもキラキラしているね。金の装飾がふんだんに盛り込まれている。ただ、下品な感じはなくて、むしろ品のある落ち着いた装飾という感じ。高級感を漂わせながら、品格を下げない上品な感じはまさに一級品のレストランって感じがするよ。」

「はい、私が初めて来たときとほとんど内装は変わっていないようですね。」


「席は決まっておりますので、早速座って昼食といたしましょう」


直径1.3メートルほどのテーブルに三つの椅子が置いてあった。トールに促されるまま席に着いた。近くに来て分かったが、この魔法陣は空間魔法の一種みたいだ。薄い真空の膜がオレたち三人をシャボン玉が壁にくっ付いているときのような感じで覆っている。ただの薄い膜だから出入りは自由にできる。なにか食事をを頼むのかと思ったが、席に着いたらすぐに料理が運ばれてきた。トールがあらかじめ頼んでおいてくれたのかな?

クロノ邸で食べる食事も十分高級感のあるものだが、目の前に置かれた品々はそれに勝るものがあるな。おいしそう。食欲をそそられる匂いのする。


「・・・うん、おいしいね!」

「はい、さすが高級レストランといったところでしょうか。クロノ邸のシェフたちが作る食事もとてもおいしいですが、それを上回る料理ですね」

「はっはっは。国王様が利用されるくらいですからな。ヘライオン王国の中でもトップレベルの料理人が働いていることは間違いないでしょうな。」


オレは黙々と、あくまでも上品に料理を食べる。

おいしい料理ほど一気にかきこむようにして食べたいものだが、オレは貴族だ。そんなことが許されるはずもない。食器の音をたてないように、こぼさないように、細心の注意を払って食を進める。

多少のストレスになるが、仕方がないのだ。


「そういえばトーマ様。町の様子をご覧になっていかがでしたか?」

「ん?なにが?」

「トーマ様言っていたではありませんか。今のうちから市民の生活ぶりを知っておきたいって。クロノ様もトーマ様の立派なお考えに感動し震えていらっしゃいましたよ。」

「あ、ああ。そうだったね。・・・うん」

(今の反応・・・トーマ様って、実は外に出てみたかっただけなんじゃないかしら?まあ、六年間も同じ家にいたら退屈はするでしょう。大人びているとはいってもトーマ様はまだ六歳。遊び盛りのはずですからね。)


「市民の生活水準は見た感じだとそんなに悪くない印象を受けたかな。どの店もにぎわっていたし、町全体に活気があっていい感じだね。みんな幸せそうな顔をしていたよ。この町は比較的裕福なほうなのかい?」

「いえ、そんなことはありません。国全体を見ても、この町が特別裕福であるというわけではありません。ヘライオン王国自体がとても裕福な国で、ヘライオン王国は貧困地域のない世界的に見て珍しい国なのです。貴族が貴族議会で国の方針を決めるのですが、貴族が中下流階級の市民たちのことを考えて国の方針を決めるため、地域間での貧困格差が生まれないのです。中には私腹を肥やそうとする貴族もいますが、ほとんどの貴族が崇高な意思のもとに政治を動かしているのです。クロノ様もその一人ですね。」

「そういえば、お父様は市民から人気みたいだね?さっきもお父様を褒めるような言葉しか聞こえなくて、なんだか嬉しくなったよ。」

「クロノ様は礼節と厳格を重んじる人格者というイメージが市民の人々の中で浸透しているからでしょう。その性格と祝福のおかげで市民だけでなく国王様からも信頼を置かれている国の重要人物ですから。」


親を褒められるというのは、何ともうれしいものだな。自分が褒められたわけではないのに、自分が褒められた時よりもうれしい気持ちになる。そんな父の跡を継がなければならないとなると多少プレッシャーのかかるが、立派に跡を継げるように、これからも励むしかないだろう。


食事を済ませた。するとトールが口を拭いながら話しかけてきた。


「トーマ様。トーマ様は既にC級の魔物であれば簡単に討伐できるほどの剣術を身に着けておられます。午後からの修行は実戦練習もかねて、近隣の森に入ってみませんか?」

「森?魔物を狩るってこと?」

「その通りです。実はクロノ様も岩水派剣術を今のトーマ様くらい扱えるようになったとき森にて修行をされました。魔物と戦うことで実戦での勘が身に付きます。いかがでしょうか?」

「危険な魔物は居ないの?」

「クロノ邸から一番近い森”レックスの森”はB級以下の魔物は存在しません。王国の内部に存在する森林なので国が管理しているため、仮にB級より上の魔物が出現してもすぐに討伐されてしまいます。剣術の修行の場所としてはもってこいの場所です。」

「王国の兵士が森を巡回しているの?」

「いえ、そういうわけではないのですが、修行のために入ったものや近隣住民から情報を得て討伐に向かったりします。たくさんの人が出入りするわけではないですが、まったく人通りのない森というわけでもない、という感じですね。」

「なるほどね。まあそういうことなら、危険も少なそうだし行ってみようかな。」

「承知いたしました。では今日の午後の練習はレックスの森にて行うことにします。馬車で森の入り口まで行きましょう。」



ということで、今日は森で修行することになった。因みに、このレックスという名前は魔物の名前に由来するようだ。魔物の中でも上位に君臨する龍族の中で最も弱い魔物のことだ。一応龍族の魔物ではあるが、その見た目は前世で言うところのトカゲをそのまま大きくしたような感じだ。弱いとは言ってもB級の魔物であり、油断すると大けがを負う。龍族特有の鋭いかぎ爪を持っている。赤色の個体がほとんどだが、たまに青色の特殊な個体がいるらしく、そいつは稀にA-くらいの戦闘力を有する者もいるらしい。


「そういえばトーマ様。レックスの森はクロノ様とエレス様が初めて出会った場所でもあるのですよ。」

「え、そうなの!?」

「当時まだ10歳だったエレス様がゴブリンに襲われようとしていたところを、レックスの森で修行をしていたクロノ様が偶然見つけて助けたのが初めて出会ったきっかけだそうです。エレス様が帰るなり、私に興奮気味で私に森で起こったことを話してくれたのをよく覚えています。」

「へえ、なんかロマンチックな出会いだね。運命的だ。」

「レイカ殿、そう簡単にお二人の馴れ初めを話しても良いのか?息子であるトーマ様に対してではあるが、一応そういうのはやめておいたほうが・・・。」

「た、確かにそうですね。勝手に話すのはよくないですね。申し訳ありませんトーマ様。詳しい内容は是非エレス様にお聞きください」


えーーー!!!!

トール!なんてことをしてくれたんだ!もっと話を聞きたかったのに・・・。ダメだね、こういう空気の読めない男って。なんで母がレックスの森に居たのかとか、その後どういった経緯で結婚に至ったのかとか、色々気になるところがあったのに!

こういうのは本人に聞くのは(とくに親には)なんだか恥ずかしいし、仮に聞けたとしてもうまくはブラ化されるかもしれない。一生に一度、親の運命的な出会いについてが聞けるチャンスだったかもしれないのに!


仕方がない。トールはこう見えてとてもまじめな性格をしているのだ。実際勝手に馴れ初めを聞くのは罪悪感もあるため、今度母に聞いてみようじゃないか。


森についた。なんだか鬱蒼としている。そこまで大きな森ではないとのことだが、いかにも危険な香りのする場所って感じだ。本当にB級以下の魔物しかいないのだろうか。森の奥から不快な鳴き声も聞こえる。なんだか不気味だ。


「では行きましょう。私が居れば心配はいりません。レイカ殿は先にお帰りになられてください。四時間ほど経ったくらいにここに迎えに来てくださると助かります。」

「わかりました。トーマ様をくれぐれもよろしくお願いいたします。」

「じゃあ、レイカ。また後でね。」

「トーマ様、行ってらっしゃいませ。」




レックスの森に入った。今日は初めて尽くしで思い出に残る一日になりそうだ。


と、森に入って五分もしないうちに何か飛び出してきた。魔物か?ぱっと見、人間のようにも見えるが、肌が青く眼がギョロっとしている。出目金のようだ。こいつはあれだ。グールだな?

「早速出てきましたね。こいつはグールです。C級の魔物で人間とよく似た外見をしているのが特徴です。こいつは肌が青いので弱い個体ですね。」

「肌の色で強さがわかるの?」

「はい。グールは肌の色で危険度を確認できます。赤、黄、青と強さが分かれていて、青は一番弱い個体ですね」


信号機みたいだな。


「ただ、一番危険な赤でもC級より上の個体は存在しません」

「C級の中でも強さにはばらつきがあるってことだね?」

「はい。こいつはC級の中でも弱いほうに位置するというわけです。」


グール。前世の記憶によれば、確かあいつは悪魔の一種だったはずだ。人肉を食らう人に化けた小悪魔。人間が死んだ後に恨みなどの負の感情が一定数を超えていたらグール化するとも聞いたことがある。きちんと埋葬したら問題ないらしいのだが。どちらにせよ、今のオレにはちょうどいい強さの魔物といえるだろう。


と、警戒して襲ってこなかったグールが飛びかかってきた。オレは抜刀するや否や、グースが突き出してきたかぎ爪を剣の側面で受け流すと同時に回転しながらグールの首を剣で刎ねた。飛びついてきた敵の勢いを利用して後ろに受け流しそのままカウンター攻撃をする。岩水派の基本の型だ。切られたグールはそのままオレの後方で倒れ、光の粒子となって消えてしまった。


「はっはっは!お見事です!トーマ様!実戦一発目で見事に倒せましたね!」

「まあ直線的な攻撃だったからね、うまく流せたよ。魔物は皆、死ぬとあんな感じになるの?」

「はい、魔物の体は魔素でできていますから、魔物が死ぬと魔素は気化して空気中に還元されます。魔物には必ず急所が存在します。魔石が存在するところです。魔物は、魔石を壊されるか、魔石と体を引き離されると死に至ります。逆に言えば、魔物は急所をやられない限り死ぬことはないということです。とはいっても、腕を切られたらその部分は使えなくなってしまいますけどね。再生能力を持つ魔物はとても厄介ですが、持たない魔物は急所以外を狙っても有効打になりえます。」


ふむ、まだまだ知らないことがたくさんあるな。こうやって実戦でいろいろ学べるのは楽しい。今までたくさんの本を読んできたが、世界は不思議で溢れているようだな。


初めて魔物を倒せて自信にもなった。今日遭遇できるかはわからないが、いつかこの森の最強種であるレックスを討伐してみたいものだ。


「ちなみに、魔物を倒すと魔石が手に入ります。様々な用途として使えるし、換金もできるので、一応拾ておきましょう。冒険者の大事な収入源の一つでもあるんですよ。」

「ああ、本当だ。グールが死んだところに赤い宝石みたいなのが落ちてるね」

「魔素がたまっている状態だと赤色に光ります。」

「魔法の杖と同じだね。」


なんだか楽しくなってきた。万が一危険なことになってもトールがいるから心配はない。森の最深部まで行くには時間が掛かりすぎるから、もう少し進んだところで魔物を狩ろう。


オレとトールはさらに森の奥へ足を進めたのだった。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



どうしてこんなことになったのだろう。

無我夢中で走っていたらいつの間にか高木生い茂る森林の中に迷い込んでいた。

帰り道がわからない。どうしたらいいの。

ママと喧嘩した。初めてだった。こんなにも心細いものなんて知らなかった。早く家に帰りたい。ママのご飯が食べたい。寒い季節じゃないから気温もそんなに低くはないのに、なんだか寒い。体が震える。


「グルルルル・・・ウガ」


ひゃっ!魔物がいる・・・!気持ち悪い・・・。ゴブリンだわ。身を潜めなきゃ、見つかったら襲われる・・・。


心臓が大きく拍動する。息が激しくなる、怖い、怖い、怖い


「ウガ!!!」

「きゃーー!」


一匹のゴブリンに見つかってしまった。四匹のゴブリンに囲まれてしまった。


「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい・・・私が悪かったわ、ママ。ごめんなさい。助けて!ママ!パパ!助けてー!」

「グキャキャキャ!」

「グルルル・・・」


もうだめだ。こんなことになるなら家を飛び出さなければよかった。そんな後悔が私の頭の中に駆け巡る。一匹のゴブリンが私の頭をつかもうとする。抵抗する気力はない。ママとパパの顔が走馬灯のように駆け巡る。無意識のうちに死を覚悟したその時だった。


「”サラスヴァティーの聖剣”!!!」


透き通るようなきれいな声が響くと同時に迫っていたゴブリンの手と首が刎ねられた。切られたゴブリンはそのまま倒れ、目の前には一人の男の子が立っていた。一瞬神様と見間違えるほどの神々(こうごう)しさを放つ、いや、そう錯覚させるほどの容姿をもつ男の子が立っていた。そしてこちらを向くと、

「大丈夫?ああ、すこしゴブリンの返り血がついているね。」

そういうと、その男の子は水魔法で私の頬についた血をふいてくれました。

「見たところケガはなさそうだけど、立てる?」

「うん・・・あ!うしろ!!」

うしろから隙狙っていたゴブリンが男の子に襲い掛かってきた。しかし、その男の子は少しも慌てることなくゴブリンの攻撃を華麗に受け流し、そのまま横に蹴り飛ばした。切ったら返り血がつくと私を気遣ってくれたのだ。

「うーん、君を庇いながらこいつらを倒すのは面倒だな。

岩水派の修行だけど、ちょっとズルしちゃお!‶アイスショット″!」

男の子の頭上に三本の大きな矢が顕現した。残り三体のゴブリンの体に大きな氷の矢が突き刺さり、ゴブリンは倒れた。起き上がってくる様子もない。そのまま三体は光の粒子となって消えてしまった。


「ゴブリンの急所はお腹なのか。」

「さすがですね、トーマ様。助太刀しようか迷いましたが、あっという間に倒してしまわれた。」

「今日はもう帰ろうか。この子を家まで送ろう。」

「そうですね、少し早いですが今日はこの辺で終わりにしましょう。」

「君、名前はなんていうの?」

「・・・・・。」

「・・・?どうかした?」

「はぇ、は、はい!何ですか?」

「いや、名前を知りたいんだけど」

「レオナって言います」

「オレの名前はトーマ。もうすぐ暗くなるから家に帰ろう。ていうか、何でここに?」

「ママと喧嘩して、それで家を飛び出しちゃって、無我夢中で走ってたらいつの間にか森に入っちゃって」

「そっか。帰ったら仲直りしなくちゃね。さあ、帰ろう」


トーマって男の子と付き人?の男の人に守られながら森を出て、ちょうど来た馬車に乗った。

これが私とトーマの出会いだった。



読んでいただき、ありがとうございました。

運命的な出会いってそこらへんに落ちているものらしいんですけど、落ちてないですよね。

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