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第3話:アニメや漫画は見る専のオタクでした。

やばい・・・世界観設定をあらかじめしっかり組みすぎたせいで話が全然進まない・・・。

急いで大学の課題を終わらせて物語を進めることに集中したいものです。

 やる気を出したはいいが何から手を付けようか。オレにはいずれ専属の教師がつく。今は自由に勉強することになったが、それは今限定の話。6歳になれば専属教師がつくだろうから、作法や貴族生活のイロハはその教師から学べばよい。今しかできないような勉強をするべきではないだろうか。

 魔法だな。魔法は専属教師からは教われないし貴族の生活をしていれば絶対に必要のない知識だろう。今しかない。そう考えたオレは、魔法の勉強から始めることにした。

 そもそも前世の記憶があるオレにとって、魔法とはそれだけで心躍るものなのだ。前世の人間なら誰しもが一度は魔法を使ってみたいと思うものだ。ハンドパワー的な何かを引き出すべく全集中を手に集め、顔を真っ赤にしながら「業火球の術!!!」なんて叫んだものだ。それを現実としてやれる。後回しになどできようか。



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『ネイチャーレイチャー著:世界の節理:第一章・魔素、魔気、魔力に関する論文』より

 この世界で起こるすべての自然現象は魔素をエネルギーとしている。人間以外のあらゆる魔物もこの魔素をエネルギーとして生命活動をしているようだ。個体差はあるが、高いクラスの魔物ほどより多くの魔素を体の中に秘めている。人間だけは魔素ではなく食事を通して得た栄養分をエネルギーとして生命活動をしている。魔物が魔素を貯められる魔石を体内に持っているのに対して人間は魔石を持っていないことが、エネルギー源の違いを生んでいると考えられる。

 人間は魔素の代わりに魔気を体に秘めている。これは自然界に存在する魔気とは少し性質が異なる。魔気とは人間が持つ精神力に由来するものである。人間が魔法を使用するとき、あるいは極限状態にあり死を意識したときに魔気は消費される。人間が死ぬとき、魔気は魔素として空気中に飛散する。

 魔素と魔気を総称して魔力と呼ぶ。

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『ネイチャーレイチャー著:世界の節理:第7章:魔法に関する論文』より

 魔法とは魔力を消費して繰り出される自然現象の再現といえる。自然では起こりえないことを魔法によって生み出すこともできるが、それは複数の異なる自然現象を組み合わせているに過ぎない。自然現象自体が魔素によるものであり、魔法も魔力を消費して引き起こされるため、自然で起こるすべての災害も魔法によって再現できると思われる。大規模な魔法になるほど消費する魔力は多くなり、人間が魔気を失うほどの魔法を繰り出した場合精神が壊れ、体が動かなくなる。第一章で述べた通り人間は魔力を生命活動で使用しないため、魔気がなくなっても死ぬことはないが、体が動かなくなるため放っておくと栄養失調で死を迎えることとなる。魔物が魔素を枯渇するほどの魔法を使った場合、生命活動を維持できなくなるので死に至る。

 魔気は才能のようなもので成長することはない、と唱える学者もいるが、私は違うと考える。魔気が精神力に由来していることを考えれば精神力を鍛えることで魔気の量は成長するはずだ。

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 この本を書いたネイチャーレイチャーという人は有名な学者なのかもしれない。この書斎には彼に関する論文が結構置いてある。単に父がファンだという可能性もあるが・・・。

今読んでいた『世界の節理』はこの世界の節理を記した本だ。この世界について知るにはもってこいの本だ。

 魔法を使うとき魔気を消費する、そしてネイチャー大先生の考えでは精神力を鍛えることで魔気の量は増大すると・・・てか精神力を鍛えるってどういうことだ?根性を鍛えるってこと???んなバカな・・・魔法と根性なんてまるで正反対の存在じゃないか。精神力ということは、精神年齢はおよそ18歳であるこのオレなら既に魔法を使えるだけの魔気量を秘めているのでは?今魔法を使っても魔気を枯渇させるようなことは起きないだろう。


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『アブラカ=タブラ著:天才魔導士のすゝめ:第一部:第一章魔導入門編』

(前略)魔法は発動方法が二種類ある。

一つ目は魔法陣を書いて発動する方法、

二つ目は詠唱による発動である。


一般的な生活圏での魔法の発動としては魔法陣を使うやり方が主流であるといえる。

魔法を発動させる魔法陣を書く手順は以下に記す。

1、魔気を注入させる魔法陣を描く

2、属性を魔気注入魔法陣の中心に描く

3、属性を組わせる場合は1、2の手順を踏んだ別の属性の魔法陣を重ね合わせることで発動できる。


詠唱による発動方法はとてもシンプルで、口上を声に出し魔気を消費すれば発動できる。詠唱の言葉に関しては別の章で一部紹介している。


この二つの魔法発動方法にはそれぞれのメリットとデメリットがある。

 魔法陣を使うメリットはその簡易性である。魔法陣を書くことさえできれば誰でも魔法が使えるだけでなく、他のだれかが書いた魔法陣でも魔気さえ注入すれば扱うことができる。デメリットは魔気の消費量である。一つの属性であればそれほどでもないが、属性を組み合わせた魔法を使う場合、魔気注入の魔法陣も重なっているため、二属性なら消費量は二倍、三属性なら消費量は三倍になってしまう。また、大規模な魔法を発動させるときは大きな魔法陣を描く必要が出てくる。魔法陣はきれいに描かないと魔法が発動しないので困難を極める。

 詠唱のメリットは魔気の消費量である。大規模になるほど魔気の消費量は多くなるが属性の組み合わせによる魔気消費量の増大はない。デメリットとしては個人のセンスによって発動できない魔法が存在するため皆が扱えるわけではないところだ。


つまり、普段の生活では小規模な魔法しか求められないため魔法陣が使われるが、戦闘などの大規模かつ属性の組み合わせが必要な場合は詠唱が使われるということだ。

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『アブラカ=タブラ著:天才魔導士のすゝめ:第一部:第二章魔気注入の方法』

魔気注入に関してはとてもシンプルだ。魔法陣への注入は魔法陣の真ん中に手を置き、少し手に力を入れれば注入できる。注入した量で魔法の発動時間を調節できる。

詠唱は専用の杖が使用される。一般的に魔法の杖と呼ばれているこの杖の先には魔物からとれる魔石が埋め込んである。杖を強く握りることで魔気を注入することができる。

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・・・アブラカ=タブラってなんか聞いたことあるな。まあそれは置いといて。意外と魔法とは簡単にできるものらしい。魔法陣で魔法が発動できることはこの世界で生きてきた三年間で知っていたが、詠唱による発動もあるのか。紙とペンならあるから、魔法陣を描いてみるか。この魔導書第一部の最終章には簡単な魔法陣が書いてある。それをまねればいいだろう。


~一時間後~


ダメでした。どうも俺にはお絵かきの才能がないらしい。まず円が書けない。魔法陣の基本である魔気注入魔法陣は円とオクタグラムの組み合わせだ。円が書けないと話にならないのだ。

思えば、前世でも漫画やアニメは見る専だった。センスのあるオタクどもは自分の嫁をキレイに描いてSNSにアップしていた。オレも一時期あこがれてアイキャンを描いたことがあったが、それはもう見るに堪えない出来栄えだった。学校の美術の成績もひどかった。5段階評価で2しか取ったことがなかった。容姿はよくなっても手先の不器用さだけは完璧に引き継がれているようだな。


オレが悪戦苦闘しているとレイカが声をかけてきた。

「・・・トーマ様?」

「なに?今集中してるんだけど。」

「魔法を使ってみたいだけでしたら、メイドたちが普段使っている水の魔法陣がありますが、持ってきましょうか?」


・・・その魔法陣を使ってしまったらオレは何かに負けてしまうような気がする。しかしオレが意地を張って魔法陣に手こずっていたら他の勉強に手を付ける前に六歳を迎えてしまいそうだ。


「・・・ああ、お願いするよ。」

「承知しました!」


レイカはそう言ってニコニコしながら部屋を出て行った。なんでか知らないが嬉しそうだった。そんなにオレの魔法陣はへたくそだったか。ちょっと恥ずかしい。



少し待っているとレイカは魔法陣の書かれた紙を持ってきた。とてもきれいに描かれていてオレのとは段違いだ。これを描いた人に弟子入りしたい。


「ん、この紙はずいぶんと丈夫にできているね。」

「水にぬれても破けないように工夫されているのです。魔法陣が描かれるものはその魔法陣が何度の使えるように工夫されます。例えばこの紙は撥水加工が施されており何度も水魔法を使うことができます。熱魔法は大抵金属など燃えないものに描かれます。」


なるほど、陣が壊れなければ魔法は何回でも出せるのか。


「この魔法陣はとてもきれいに描かれているけど誰が描いたの?」

「それは町の印刷業者が作った魔法陣紙ですね。きれいに描かれた魔法陣を型としてコピーすることで魔法陣を量産しているのです。ただ、魔法陣を描く職人はいます。職人型を作り印刷業者にそれを売ることで収入を得ています。」


何ということだ。魔法陣がコピーされているだと?そりゃあ魔法陣が主流になるわけだ。ただ、この紙に描かれている魔法陣の型を作った職人がいることも事実。是非一度魔法陣が描かれる瞬間を見学させてほしいものだ。


さて。魔法陣についての勉強は今日はここまでだ。お待ちかね、人生初の魔法体験の日!

「魔法陣の中心に手を置く、軽く力を入れることで魔気を魔法陣に注入、手を離すと魔法発動だ。ここには本がたくさんあるから、この魔導書だけ持って庭に出よう!」

「承知しました。」


庭に出た。この家の庭は無駄に広い。

「さて、早速やってみよう!」

「トーマ様、体に異常を感じたらすぐに魔気注入を注視してくださいね。」

「?わかった。きをつけるよ」

魔法陣に手をかざし力を入れてみる。すると次の瞬間。魔法陣に描かれたオクタグラムが光り始め、その光はどんどん強くなってく。

「おお、それはすごい。魔気ってどれくらい注入したらいいのかな?」

「トーマ様!手を魔法陣から離してください!」

レイカに大きな声で言われ、ビックリして手を離してしまった。


ひらひらと地面に落ちた紙から水が噴水のように出始めた!

「おお!すごい!本当に紙から水がでてる!」

「トーマ様!体に異常はありませんか?」

必死の形相でオレの肩をつかみながらレイカが体の調子を聞いてきた。ったく、さっきからなんだというのだ。

「どうもないよ?」

「そ、そうですか・・・。よかったです。普通小さい子どもがあんなに長い時間魔気を注入してたら精神力を激しく消耗して危険な状態に陥ってしまうので。やはりトーマ様は天才なのかもしれなせんね。」

「そ、そんなにおかしいの?30秒くらいしかかざしてないと思うけど・・・」

「この小さい魔法陣なら10秒注入するだけでも一時間は水を出し続けます。ですから私たちメイドでもだいたい5秒程度しか魔気は注入いたしません。精神が未熟な子どもが30秒も魔気注入をしていたらほぼ確実に精神力を消耗しきってしまいます。」

「ま、まあ他の子よりも早く勉強を始めたから鍛えられてるのかもね。」

「おそらくトーマ様の魔気量は私よりも多いと思われます。」

「そ、それはないんじゃない?」

「もし私がその魔法陣に30秒も魔気を注入し続けたら枯渇はしないとしても気だるさは感じるでしょう。魔気を消耗しすぎると気だるさを感じるのです。しかしトーマ様は30秒魔気を注入したのにケロッとしておられました。これはすごい才能ですよ!トーマ様は天才魔導士の素質があるのかもしれませんね!」

「ハ、ハハハ、僕は貴族の息子だから魔導士にはならないさ。」

「トーマ様のような優秀な息子が居たらクロノ様も安心でしょう。」


またオレはやってしまったようだ。気だるさなんて微塵も感じなかったぞ。まだまだ注入してやるぜ!くらいの気分ではあったのだ。こんな才能があふれるような3歳児はオレ以外には居ないだろう。普通3歳児というのは、同じくらいの年の子とやるおままごとに全身全霊をかけている年頃だ。オレのように水魔法で広い庭を水浸しにして遊ぶ3歳児は居ない。

それにしても、何でオレは魔気量が多いのだろうか。同じ年の子たちよりも多いのは当たり前だが、レイカのような大人よりも多いのは不思議だ。寝る前にでも原因を考えてみよう。まぁ考えすぎるのもよくない。本当にオレの才能かもしれないのだから。


 詠唱の魔法が使えるようになりたいな。魔法陣だと中二病心がくすぐられる大規模魔法は使えない。魔法陣が量産されているのに魔法陣に関して詳しくなっても意味がない気がする。オレの手先では魔法陣を描くなんて到底無理だからな。今日の勉強はここまでだが、明日からは詠唱による魔法の勉強をしよう。






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どうも皆さん、レイカです。

今日はトーマ様のかわいい一面が見られました。


私は今までトーマ様に苦手なものなど存在しないと思っていました。

勉強のことだけではありません。

苦手な食べ物はありませんし、暗いところもへっちゃら。大抵のものをこなしてしまうスーパー三歳児です。今日もいつもの書斎で勉強をなさっていました。昨日の出来事があったからか、今日はいつにもましてやる気に満ち溢れていらっしゃいました。


 今日は魔法の勉強をなさるようです。かの有名な世界学者ネイチャーが書いた『世界の節理』。私は読書をしないので読んだことはありませんが、あまりに有名な本ですから本の存在自体は知っています。そんな本をトーマ様は黙々と読んでいます。難しい内容であるはずなのに、トーマ様は黙々と読み進めていきます。あんな分厚い本をまだ三歳のトーマ様が読んでいる、その姿に頼もしさを感じてしまいます。

 すると今度は魔導書を手に取られました。こちらも有名な魔法研究家のアブラカが書いた魔導書。魔導書の名前は分かりませんが、アブラカは過去に何度か勃発した世界大戦の魔法騎士軍司令官を務めていたことで有名です。

 トーマ様は途中まで読んだところで本を閉じ、紙になにやら書き始めました。

(ああ、トーマ様は魔法陣を描こうとしていらっしゃるのだわ。魔法陣はとてもきれいに書かないと効果を発揮しないから専用の道具が必要なのだけど、紙とペンだけで挑戦していらっしゃるのだわ。どんなに手先が器用な人でも魔法陣を描くのは難しいのだけど、トーマ様ならできてしまいそうね。)


そんなことを思ってみていたのですが、なかなかうまくいっていないようです。こそっと横から覗いてみたら最初の円でトーマ様は苦戦しているようでした。

トーマ様が苦戦しているのはとても珍しいので少しびっくりしたのですが、その一生懸命に円を描こうとしている姿は、まるで一生懸命にお絵かきをしている普通の三歳児のようでした。もちろん書いているのは魔法陣で普通のお絵かきとはレベルが違うのですが、その一生懸命に円を描いている姿はとても可愛らしくほほえましいものだったのです。


いつもはトーマ様のかっこいい姿しか見れていなかったのですが、今日はかわいい姿も見れてとても私は満足したのです。

このように毎日トーマ様の成長が見れるのは本当に幸せなことだと私は思うのです。


読んでいただきありがとうございます。

主人公が三歳から成長しない・・・。

次話では頑張って主人公を成長させたいと思っています。

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