第2話:孔子、15歳で学問を志す。オレ、3歳で学問を志す。
実はわたくし大学生なのですが、コロナの影響で遠隔授業と課題に追われていまして・・・
大変ですが、人気が上がらなくてもこの作品は頑張って投稿しようと思っています!
よろしくお願いします!
3歳になった。今オレは非常に悩んでいる。どれくらいの言葉をしゃべっていいのか、ということだ。
というのも、オレは生まれて2か月で声が出せるようになり、前世の記憶があるのでその時点でほぼ完ぺきに人と会話できるようになっていた。しかし、生後二か月で言葉を流暢に話したら両親はドン引きものだろう。
前世の記憶はあってもオレは子育てなどしたことがなかったので、いつ「ママ」や「マンマ」などを声に出したらいいのかわからないのだ。
(まあ、二か月で声が出せるようになったから、あと一か月ほどでママやパパと話せたら妥当だろう)
と思い、生後三か月で
「お父様・・・?」
と安易にしゃべってしまった。
結果両親とメイドたちは大騒ぎ。
「・・・!おい!エレス聞いたか!トーマがお父様といったぞ!トーマは天才かもしれん!」
「天才かどうかは置いといて、ビックリしたわ・・・普通、有意味語を話せるようになるのは生後六か月ほどだと聞いていたのに・・・レイカ、そうだったわよね?」
「はい、奥様。ほとんどの赤ちゃんは生後六か月ほどで有意味語を話すようになります。奥様も生後六か月を過ぎたあたりから『おきゃあしゃま』と話されていましたから。」
・・・やっちまったーー!オレは普通の子どもよりも三か月も早く言葉を話してしまった。両親はドン引きというよりは歓喜に包まれている。楽観的な親で助かったと思うべきか。・・・いや、オレのことをまさか異世界転生してきた子などと知る由もないわけだし、天才だと考えるのが普通なのか。
こんな感じで、三歳になった今でもどこまでの難易度の言葉を話していいものか見当もつかないというわけだ。天才だといわれるのは悪い気はしないが、あまり騒がれると後々面倒なことになるかもしれない。慎重に行かなければならない。
さて。最近の俺のブームは家の本を読み漁ることだ。幼児であるせいか、物覚えがものすごくいい。前世で六歳になるまでに右脳を鍛えれば高い記憶力を得ることができるとテレビで見た。高速で切り替わる絵を見続けるといいとかなんとか・・・よくわからないが、勉強はなるべく早いうちに、ということだろう。
三歳にもなれば家中を歩き回ることくらい容易にできる。家の中になかなか大きい書斎(中学校の図書室くらいの広さはある)があるので、毎日そこに通った。父親は毎日仕事で忙しく、母も毎日のように来る高貴な客人の相手をしているためレイカというメイドがオレのお守りをしている。このレイカと共にマドルーナ家クロノ邸書斎に行くのである。
書斎といっても父はほとんどの仕事を王宮で済ませてしまうし、家でも仕事は寝室でするのでこの書斎はいつもオレの貸し切りなのだ。
本を読んでこの世界についていろいろ分かったことがある。
1つ目、成人は16歳。
2つ目、この世界のあらゆる現象は魔素によって引き起こされる。
3つ目、魔法は扱う人間に秘められた魔気をエネルギーとして繰り出される。
4つ目、この世界のすべての生物は危険度でG~SS級にクラス分けされている。
危険度は以下の通りだ。
G級:ほとんど無害。襲われても致命傷を負うことはない。
F級:危険度は低い。大人であれば攻撃されても致命傷を負うことはないだろう。
E級:多少危険。場合によっては致命傷を負うことがある。
D級:知能は低いが、無防備で攻撃を食らうと致命傷を負う。
C級:訓練された大人でないと対処できない。粗末な武器を扱うことがある。
B級:騎士レベルでないと対処できない。
A級:討伐チームを組むなど、対策を入念にしなければ対処できない。
高い知能を持つ個体が多い。
S級:勇者しか太刀打ちできない。伝説級の破壊生物。
SS級:神級。対処できるとすれば神の力を持つものだけであろう。
ちなみに、人間にも戦闘力としてG~SS級が割り振られている。
C級の人間ならばD級生物までは倒す能力があるとみなされたことになるようだ。
三歳児の俺はF級だろうか?G級の生物ならオレでも倒せそうだ。
そして五つ目、人間は12歳になると祝福の神から祝福を受けるらしい。12回目の誕生日に祝福を神に祈る儀式を行うらしい。祝福とは才能のこと。祝福の内容は十人十色で、まったく使い道のない才能を与えられてしまうこともあるようだ。例えば父の弟ガイア。彼は父とのマドルーナ家後継者争いに祝福の差で負けてしまった。
父クロノの祝福は「先見の目」。いざというときの判断力が非常に優れており、要所で最善の一手を打つことができる。父の弟ガイアの祝福は「大食い」。常人以上に飯が食えるという同情するほどいらない才能だ。誰が言うよりも早くガイア自身が後継はクロノに譲ると宣言したらしい。
母の祝福は「超健康」。あらゆる病気にかからない。毒物さえもその祝福で解毒してしまう。彼女はきっと寿命を迎えるまで元気に走り回ることができるだろう。
オレはどんな祝福を与えられるのだろうか。まあ既に「世界一の容姿」という才能は得ているわけだが。何か役に立つ才能がいいな。
ちなみにこの祝福の内容は本人の性格や運動神経等は全く関係がないらしい。
この世界には前世には存在しなかった生物がたくさん存在しているようだ。
こちらの世界では人間以外のすべての生物を魔物と呼ぶらしい。
また、人間と友好的で危害を加えない知的魔物は特別に魔族と呼ぶらしい。
エルフなんかはその代表例だ。
対照的に、人間と常に敵対している魔物の王国があるらしい。そこの王は魔王と呼ばれていてものすごく強いらしい。戦闘力はS級。勇者級じゃないと倒せないってことだな。
てかやっぱり魔王っているのか。前世で読んだラノベなんかでは意外といいやつだったりしたのだが、この世界の魔王もそうなのだろうか。
「トーマ様は非常に勉強熱心ですよね。頭が下がりますわ。」
「こっそりと勉強してお父様を驚かせてやるんだ!だからレイカ、誰にも言っちゃだめだよ?」
こんな感じでレイカには口止めしてある。
三歳児らしい言葉遣いを意識しているがうまくやれているのだろうか。
「承知しております。しかし・・・まだ三歳の息子が文字の読み書きができるだけでなく本を読んで勉強していると知ったら、クロノ様とエレス様はビックリされるでしょうね。」
「そ、そんなにおかしいかな?」
「文字が読めるだけならともかく、そのような文字ばかりの難しい本まで読める三歳児はお坊ちゃま以外居ないでしょうねぇ。」
(そ、そうなのか・・・やっぱまだ勉強するのは控えたほうが・・・)
「・・・トーマ様」
「・・・なに?レイカ」
「やはり本を読んでいることをクロノ様に打ち明けてはいかがでしょう。」
「なんで?もうちょっと秘密にしておきたいよー。」
「王族や貴族の子どもに専属の教師をつけるのは六歳からが主流ですが、トーマ様は今から専属の教師がつけられてもおかしくないほどの学力を有しておられます。クロノ様なら今のトーマ様を見ればすぐに専属の教師をつけてくれると考えました。いかがでしょうか?」
なるほど・・・正直アリだ。オレも今の勉強の仕方でいいものか悩んでいたところだ。この世界で必要な知識が前世と同じであるとは限らない。この世界で生きる上で必要な知識を身に着けたい。
「そうだね!僕も先生から勉強を教わりたいかも!お父様に今日言ってみるよ!レイカも一緒に説得してよ?」
「承知いたしました。」
ということで父に学力を披露することになった。
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「・・・という具合に、トーマ様は文字の読み書きだけでなく文字だけの本や難しい論文を読んで勉強していらっしゃるのです。」
「ふふん、すごいでしょ、お父様!」
大げさに胸をそってみた。
「・・・エレス、やっぱりトーマは天才だ!こんなに賢い三歳児が他にいるか?すごい!えらいぞトーマ!」
と父は興奮気味でオレの頭をなでてきた。父はオレの頭をよく撫でてくれる。なんだかくすぐったいが、とてもうれしい気持ちになるのだ。
「ふふふ、トーマすごいじゃない!確かにトーマは天才かもしれないわね。」
いつもは冷静な母もびっくりしたようだ。この母は笑うときに目を細めるのだが、それが絶妙にかわいいのだ。
「ねぇ、あなた?ここまでできるならトーマに専属教師をつけてもいいんじゃない?」
おお、こちらから言う前に母が言ってくれたか。思わぬ展開にオレとレイカは目を合わせてニヤッとする。うまくいきそうだ。
「ふむ・・・」
おや?父はなにやら迷っているようだ。いつもならオレと母が言ったことは大抵OKしてくれるのに。
すると父は一瞬目を閉じ、カッと目を見開いた。黒目を囲むように赤い光の輪が父の目に浮かんでいる。初めて見たが、どうやら「先見の目」を発動しているようだ。
「・・・いや、トーマにはこのまま自分で勉強をさせておこう。」
「一応、理由を聞いてもいい?」
「トーマに専属の教師をつけた未来では、トーマは貴族生活で必要な知識だけを身に着けた人間に成長してしまう。つけない未来では、トーマはより幅広い、様々な知識を身に着けることになる。『目』で感じたのはそんなところだ。うちには様々な本が置いてある。貴族社会での作法だけでなく、世界の本、魔法の本、古くに書かれた本など。今からトーマを縛る必要はない。トーマにとって、様々な知識を身に着けていたほうがいいだろう。今のまま自由に学習させておくほうがいい。」
・・・なんていい父親だ。オレはそんな風に思った。前世では親の愛情なんて一つも感じたことがなかったが、この父親はオレのことを一番に考えてくれているようだ。
自分の跡を継がせるなら貴族生活で必要な知識だけでよかったはずだ。つまり父はマドルーナ家の跡取りよりもオレを優先してくれたということだ。
この世界で必要な知識だけ身につければいいなどと考えていた自分が愚かだった。前世の偉い人も言っていたではないか。「知っておいて無駄なことなんか一つもない」と。一見無駄に見える知識もいつか役に立つ時が来るかもしれない。そういう気持ちで勉学に励むのだ。
「もちろん、トーマが専属教師をつけてほしいというのであれば優秀な専属教師を雇うが、どうする?」
「・・・いえ、お父様の言う通り、一人で頑張ってみようと思います!」
「そうか!・・・トーマはなんか、かっこいいな!」
「顔が、ですか?」
「いやいや、そうじゃない。もちろん顔はかっこいいのだが、頑張るって気持ちがひしひしと伝わってきて、輝いて見えるということさ。」
「ふふふ、トーマの将来が楽しみね!」
「・・・ありがとうございます!」
なんだろう、この二人に褒められると頬がかゆくなる。なんだか照れくさい。見た目は三歳でも、前世から合わせたらオレは18歳。真正面からストレートに褒められると恥ずかしい。しかもオレは前世ではほとんど褒められた経験がない。つまりオレは褒められなれてないのだ。親から褒められるのはこれほど嬉しいことなのか。
オレは今、やる気に満ち溢れている。期待にこたえたい。この二人にもっと褒められたい。そんな気持ちが心を支配しているようだ。
明日は今日よりもっと勉強を頑張ろう。今までよりもっと頑張ろう。
そんなことを思いながらなかなか眠れない夜を過ごしたのだった。
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どうも。私はマドルーナ家に仕えるメイド、レイカでございます。元々はユウレイラン家に勤めていましたが、エレナ様がマドルーナ家の当主候補であるクロノ様とご結婚なされる際、長らくエレナ様のお世話をしていた私は引き続きエレナ様の身の周りのお世話をするという形でマドルーナ家に仕えることとなったのです。
そして今はお二人の長男坊であるトーマ様のお世話係を申し付けられております。
というのも、私は祝福にて「動体視力〇」という才能を授かりました。常人よりも動くものに対して敏感に反応できるのでトーマ様が危険なことをしようとしたり何か危険なものが襲い掛かっても反応して守ることができるというわけです。
まあ、正直なところ。トーマ様がなにか危険な行動をとることはほぼないと思わってしまうのです。トーマ様は既に言葉を完璧に話すことが可能で難しい本や論文を私を頼ることなく読み進めてしまいます。危険なことは一切しないし、とてもしっかりしていらっしゃるので、本当に三歳児なのかと思ってしまうほどです。
ここ最近のトーマ様の勉学の内容を見ると「既に私よりも頭がいいのでは?」と思ってしまいます。私はメイドとしての勉強しかしてこなかったため、元々頭が良いわけではないのですが、一般常識くらいは身に着けています。普通なら三歳児に負けるはずはないのですが、トーマ様の姿を見ていたらそんなことを思わずにはいられませんでした。隠れて勉強して親を驚かせたいという考えは、子供らしくて少し安心したりもしましたが。
そんなトーマ様のすごい一面をまた見てしまったのです。私はトーマ様に「専属教師をつけてもらうようにクロノ様に言ってみては?」と提案してみました。言った後に、「こんな話をしても私の意図は理解できないか・・・」と思い、やはり何でもないと撤回しようとしたのですが、少し考えた後「なるほど」と賛成の意思を示してくれたのです。それはなんとなく賛成したのではなく、ちゃんと早めに専属教師をつけることへの利点を理解した上での賛成であるように見えました。
その日の夜、さらに驚くことがありました。専属教師はまだつけない方が良いというクロノ様の考えに対し「お父様の言う通り、自分で勉強する」とトーマ様はおっしゃったのです。一見すると、よく意味が分からず父の言うことにとりあえず従った、あるいは流されたようにみえます。しかし、私には今のトーマ様は明らかに自分の意思で自分で勉強することを選んだようにみえたのです。クロノ様とエレス様も同じように感じ取ったのでしょう。トーマ様の選択を褒めていらっしゃいました。なんて三歳児でしょうか。
エレス様は大げさだとおっしゃっていますが、私もクロノ様の考えと同じく、トーマ様は天才だと思います。これからトーマ様の成長を近くで見れるというのはとても幸せなことだと私は思うのです。
読んでいただきありがとうございます!
こういうのって、タイトル考えてる時が一番楽しいんですよね。