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第13話:先生っていい名言を持ってるよね。

大学の講義の期末テストの勉強で投稿が大幅に遅れてしまいました・・・反省してます

 ホグワール魔法学園の外観はサグラダファミリアのような造りだ。

見れば誰もが圧倒されるような建造物の中には多くの講義室と研究室が存在する。

300ほどの大講義室と50個ほどの研究室が存在し、授業や研究、会議などが行われている。

ただ、この講義室のほとんどは空間魔法で生成した亜空間の講義室である。

緊急時には学園の校庭に転送されるような仕組みになっているらしい。


この学園で使われている魔法は高度なものばかりだ。

照明は常につけっぱなし。夜も学園の廊下は明るい。

この照明器具もすべて魔法によって制御されている。

制御しているのはアブラカ=タブラ。ただ、エネルギーの魔素はアブラカ=タブラが出しているわけではなく、魔道具を使いエネルギーの変換によって魔素を得ているとのこと。

これについては実用魔法の講義で詳しく学べるらしい。




 今日から本格的な講義が始まる。

オレは一日に一つ講義を受けるように講義の受講予定を立てた。

記念すべき最初の講義は〈祝福概論〉だ。


オレが講義室に入ると少しざわついていた講義室が一瞬静まり返り、またざわつき始めた。


「おい見ろよ、例の仮面男だ。」

「精神階級がG級だった奴だよな。」

「すげえ、なんか凄いオーラを感じるぞ。」

「やっぱ仮面は着けたままなんだな。隠さなければならない事情があるのか・・・?」


どうやらオレのことを噂しているようだ。

この学園でオレのことを知らないものはもう居ないだろう。

ペネムが学園中がオレの話題で持ちきりだと言っていた。


「はーい。おしゃべりはそこまでにして、そろそろ講義に移るよー。」


教壇に立つ長い金髪が特徴の女性。この講義を担当する先生だ。


「はーい。この講義を担当するディーネです。よろしくね!

この講義は〈祝福概論〉。祝福についての知識を深める授業です。

祝福とは何か、祝福の基本知識、祝福の多様性などなど、様々なことについて学んでいきます!」


なぜアブラカ=タブラがこの講義を受けるように言ったのだろうか。祝福についてなら本でもたくさん読んで知らないことはないと思うのだが。


「はーい。まずは祝福とは何かについて話していこうと思います。

皆さんは祝福って何だと思います?

辞書には、〔12歳を迎えた人間が神から授かる才能・技術〕とされています。

様々な書物に祝福についての記載がありますが、どれも同じような説明がなされています。

しかし、これは大きな間違いです。

もしここに()()()の方が居たら申し訳ありません。

ですが、この授業では真理を知ることを目的としていますのでハッキリと申し上げます。

祝福は人間のみが授かるものではありません。魔物も神からの祝福を授かります。」


教室中がどよめいた。そりゃそうだろう。当たり前のように信じられていた常識を覆されたのだ。

オレは祝福の神ベネフィーに聞いたから知っていたが、他の生徒は信じられないという気持ちだろう。


陽信教か。人間至上主義。魔物を邪悪そのものとし、世界中の魔物を駆逐すべく正義の旗を掲げる宗教団体だ。

確かに、この場に陽信教の信者が居たら顔を真っ赤にして激怒するだろう。


「はーい。みんながビックリするのもわかるけど、これは真実です。

ただ、すべての魔物が祝福を授かっているというわけではありません。祝福を授かる生物は皆、共通して持っているものがあります。それは何か。

・・・そこの仮面をかぶっている君。なんだと思いますか?」

「・・・自我でしょうか?」

「お見事!そう、祝福を授かる生物には共通して自我があります。

一般的に自我のある魔物のことを高等魔物と呼びますが、そういった魔物には神からの祝福が与えられます。我々人間が祝福を授かるのも自我があるからなんですね。」


みんな、納得したようなしていないようなって顔だ。

いや、納得はしていないだろう。まだ人間以外も祝福を受けることの根拠が示されていないのだ。


「はーい。確かに、みんなが納得しないのは分かります。なんせ今までの常識が覆されたわけですから。しかし、私があなた達くらいの年齢の時、むしろその常識に違和感を感じていたのです。人間しか祝福を受けられないということの根拠は{人間が選ばれし種族だから}とか{邪悪な存在を排除するため}とかそういったもの。まったく理論的ではなく人間至上主義者による勝手な想像のもとに広まった間違った常識なんじゃないかと、私は考えたのです。

 そして何より。私の祝福[真理の究明]が真実の究明を求めたのです。[真理の究明]はこの世の真理を究明する事に長けた能力です。真理の究明の従って、私は祝福の真実を探求し始めました。

 答えは簡単に見つかりました。エルフの里に行ったのです。

エルフは自我を持つ高等魔物であり、人間に敵対心を持たない魔族でもあります。

彼らにエルフも祝福を授かるのかと聞いたところ、こんな返事が返ってきました。


『ああ。我々エルフも祝福を授かるよ。我々以外にも、自我のある魔物は皆、祝福を授かる。ただ君、このことを人間に広めない方が良い。そんなことをしたら陽信教の人間から殺されてしまうからね。』


そう、エルフは人間と友好な関係を保つためにあえて祝福が使えることを隠していたのです。」


教室内が大きくざわついた。しかし、魔物であるエルフが祝福を持っていたということは、人間以外も祝福を受けるということが真実だということだ。


「はーい。皆さんはここまでの話を聞いて、今まで自分たちが信じてきた常識や知識が間違っている可能性があることを大いに実感したと思います。祝福だけではありません。この学園で学ぶことは新しいことばかりで、時には自分が信じていたものが崩れ落ちることがあるかもしれません。しかし、皆さんはそのことを恐れてはいけません。

確かな知識と技術を学び、この世界に貢献してほしい。

間違った常識や認識に惑わされない聡明さを兼ね備えてほしい。

この学園を卒業した生徒は皆、それぞれの場所でこの世界をよりよくするために働いてくれています。

皆さんの中にはこの学園で学んだことを将来的には悪用しようとしている人もおるかもしれません。

しかし、最終的には。この世界に貢献し、争いのない世界を実現してほしいと思うのです。」


教室が静まり返る。その静寂がディーネ先生の言葉を深く身に染みわたらせる。

この教室にいる全員が、この学園ではこれまでの常識は通じないと覚悟し、また高揚感に身を震わせた。


「はーい。この祝福概論は皆さんにとって新しく知ることだらけだと思うから、常識にとらわれないことを特に意識して授業を受けてほしいです。固定概念は邪魔でしかありません。もし、私の理論に疑問を感じたらすぐに指摘してください。私の理論が間違っているかもしれませんからね!

私自身、自分が立てた理論を完全に信じているわけではありません。固定概念にとらわれないことを私自身が特に意識しているからです。

ここからが本当の授業、今話したことは皆さんがこれから知る世界の真理の一部でしかありません。

さあ!学びは尽きませんよ」


知的探求心をくすぶられる、良いスピーチだった。オレを含め、皆がやる気に満ち溢れている。

学びは尽きない。良い言葉だ。


「さて、皆さんは祝福の分類にはどのようなものがあるか知っていますか?

祝福は大きく分けて二つ、受動型と能動型があります。実に九割以上の祝福が受動型であり、能動型は保持者が少ないということがわかっています。能動型はそれだけでも希少であり、強力なものが多いです。」


確かに。オレや勇者ヘラクレスの祝福はもちろん、父の祝福もとても強力なものだった。

受動型は強さにバラつきがあるって感じか。


「ただ、能動型のデメリットもあります。能動型の祝福は魔力を消費します。

消費は物凄く少ないですが、能動型は魔力をエネルギーとして発動されるのことがわかっています。」


・・・なんだと?祝福で魔力が消費される?


「先生。魔力が消費されるというのは、人間は魔気を、魔物は魔素を消費するからあえてそう言っているという認識で間違いないですか?」

「いい指摘ですね、仮面の君。まさにその通りです。」


・・・なるほど。[ゴッドハンド]、オレは確かにこの能力の本質に気づけていなかった。



オレはこれ以降の授業のことを覚えていない。ゴッドハンドの祝福の本質に気づいたことで頭が混乱したのだ。

恐怖を感じるほどの性能。確かに[ゴッドハンド]があれば魔王に対抗できるかもしれない。


ゴッドハンドの能力は

【触れたものの魔素を奪う】

だ。

つまり、ゴッドハンドを使えば魔王の[ゴッドアーマー]を貫通できるというわけだ。

アブラカ=タブラがオレに魔王討伐を依頼したのも、ゴッドハンドを使えば魔王の無敵の鎧を無効化できると気づいたからだろう。



・・・・・・・・・・


部屋に戻り、ベットの上で祝福について考える。


先ほどは能動系の祝福をすべて無効化できるような気分でいたが、そういうわけではない。

例えは父の[先見の目]。ゴッドハンドを使っても無効化は出来ない能動系祝福の一つだろう。そもそも魔気は奪えないし、奪えたとしても先見の目に使われる魔気には触れられないので奪えない。勇者の[ゴッドブレイブ]も奪えない。

つまり、ゴッドハンドという能力は[ゴッドアーマーキラー]ともいえる、魔王への唯一の対抗手段といえるだろう。


・・・なんかオレがやらなきゃいけない気がしてきた。

魔王を倒せる手段はオレのゴッドハンドしかない。

別に勇者にはならなくてもいいが、人類が滅亡したら困る。

オレはこの世界を全力で楽しみたいのだ。


そんなことを考えながら、オレはゆっくりと眠りについた。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


真っ白の世界、何度か来たことのある不思議な空間にオレは居た。



「やあ、トーマ。初めまして。」


「初めまして。初めてなのに、オレの名前は知っているのですね。」



「当然さ。僕はずっと君のことを見ていたからね。」


「この空間にいるってことは、あなたも何かの神なんですか?」


「まあ、神といえば神だけど、完全な神じゃない。僕は半神半人デミゴッド。神の力の一部と不老の性質を持つなんちゃって神様なのさ。」


「・・・まさか、勇者ヘラクレスですか?」


「正解!今はもう勇者ではないけどね!」


「勇者様がなぜオレの夢に?」


「君の夢っていうか、君の精神を天界に無理やり連れてきたんだよ。もちろん、君に迷惑が掛からないように寝ている間に連れてきたし、君の身に何かあったらすぐに君を現世に戻すことを約束するよ。」


ここって天界だったのか。てか、そういえばオレは今声で意思疎通をしている。勇者は完全な神じゃないからだろうか。他の神様とは勝手が違うな。


「で、なぜオレをここに?」


「君と話をしてみたかったのさ。君の前世の話をしたいんだ。モイラに聞いたけど、トーマは【神をも惚れさせる世界一の容姿】を運命として願ったらしいじゃないか。何でそんなことを願ったんだい?」


「私は前世で最悪の容姿のせいで周りから人間として扱われませんでした。・・・」


オレの前世での話をした。この話をするのは嫌なはずなのに、勇者には気兼ねなくすべてを話すことができた。


「・・・なるほどね。だから君はそんな運命を選んだのか。結果的にはその容姿がマジで神を惚れさせて最高の祝福を手に入れたってわけだ。」


「それは本当に予想外でしたけどね。勇者様も前世の運命値が1だったんですよね。今度は勇者様の前世の話と願った運命を聞きたいですね。」


「そうだね、僕の話もしようか。

前世の僕には生まれつき四肢がなかった。体も弱く、手足がないせいでまともな生活は出来なかった。家は財閥の一族でものすごく裕福ではあったんだけど、生まれつきの出来損ないである僕は両親にとって邪魔な存在でしかなかったらしく、オレが生まれた次の年にできた弟だけを可愛がって、オレのことは使用人に任せっきりだった。使用人も気味悪がって食事を運んで食べさせるとき以外は顔を合わせることも無かった。

君とは違う形だけど、僕も相当な孤独を味わった。

人として扱われるどころか、そこら辺の動物よりもひどい扱いを受けながら僕は六歳まで生きた。

当時の僕には一つだけ楽しみがあった。テレビを見ることだった。両親の情けで一台のテレビを僕の部屋に置いてくれた。特に『勇者放浪記』ってアニメは大好きで、最強の勇者が旅先で出会う人々を救う姿にあこがれた。

丁度七歳になったころに僕は死んだ。母親に殺されたんだ。

母が僕に行った最後の言葉はこうだ。


・・・お前さえ、お前さえいなければ・・・。


何があったかなんて、僕には知る由もない。ただ確かなことは、僕は人の何の役にも立てないどころか、この世に存在するだけで両親をも不幸にしてしまうということだ。

運命の神に願う運命を聞かれたとき、僕は迷わず答えた。


勇者になりたい。人々に希望と勇気を与え、人々を救い、人々に感謝される勇者になりたい。


こうして僕はこの世界の勇者になったというわけだ。」


四肢がないために両親から忌み嫌われ、オレとは違う形で不幸な運命を辿ったようだ。

願ったのは人々を救う勇者。前世で見たアニメの勇者にあこがれた結果だろう。


「僕の祝福が[ゴッドブレイブ]だったのも、僕が願った運命を全うするためのものだった。その能力で僕は人々に希望と勇気を与え、人類を救ったんだからね。」


「いい話ですね。」


「君も勇者になるのだろう?」


「迷ってるんです。確かにゴッドハンドがあれば倒せるのかもしれませんが、魔王はゴッドアーマーがなくても単純な戦闘能力が圧倒的だと思うし、正直勝てるようには思えないのです。」


「今戦えば当然負けてしまうだろうね。でも、魔王を倒せる可能性があるのは君だけだろう?」


「そもそも、封印されているのなら魔王を倒す必要なんてないようにも思えますが。」


「封印は永遠ではない。タブラに万が一のことがあれば封印は解かれてしまうし、魔王を復活させるべく計画を練っている最上級悪魔もいる。急がなければまた人類に不幸が訪れるよ。」


「そもそも、なぜ魔王は人間を恨んでいるのですか?共存は出来ないんですか?」


「人間を恨んでいる理由はきっと奴の前世が関係している。

これは僕しか知らないことだが、魔王も実は転生者なんだ。」


「マジか・・・」


「これは、僕が魔王と戦っているときの話だ・・・


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

魔王よ、なぜ人間を恨むのだ!ともに危害を加えず、仲良くしすることは出来ないのか?


・・・貴様も転生者なのだろう?逆に問おう。なぜ人間を恨まない。


お前も転生者なのか?


ああそうだ。人間を恨んでいる。貴様はそうではないというのか?


恨んでなどいない。オレは人間を救うためにこの世界に転生した。


・・・貴様と私は一生分かり合うことはないだろう。この恨みもまた、貴様には理解できぬものであるのだろう。悲しいことだ。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


・・・魔王は前世で相当人間を恨んでいたようだった。どんな運命を願ったかはわからないが、その運命が人間への深い憎悪によるものであることは間違いない。」


魔王も転生者。前世で人間に対する深い恨みを持ったまま死んだのだろう。


「魔王が[ゴッドアーマー]を授かったのも、その運命が関係しているということですね?」


「うん、間違いないだろうね。」


前世で魔王に何があったのだろう。魔王を倒さねばこの世界に平和は訪れないということか。


「話せて楽しかったよ。またいつか話をしよう。」


「はい、ぜひお願いします」


「どう?魔王を倒す気にはなったかい?」


「・・・倒すべき相手だという認識は持てた気がします。」


「そうか・・ではまたいつか・・・。」




目が覚めた。辺りはまだ暗い。窓から外を見ると、雲一つない夜空に満天の星空が広がっていた。

読んでいただき、ありがとうございます。

コロナ、増え続けてますね。講義もずっとオンラインです。

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