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第12話:勇者になれと言われました。

投稿実行ボタンの押し忘れ・・・。

何回やらかすんだって感じですね。

更新遅くてすいません。

 長い廊下、赤い絨毯が敷かれた、どこまでも続いていそうな長い廊下の先にその部屋はあった。

赤のレンガで造られたその学園の最奥にその部屋はあった。

大きな扉、4メートルはありそうなその大きな扉の向こうにその部屋はあった。

「デカい扉だな。大きい人のためのユニバーサルデザインか?」


扉を三回たたく。


「失礼します、一年のマドルーナ=トーマです。」

「どうぞ。」


扉を押し開けた。大きい割に、その扉は簡単に開いた。


「こんにちは。一年のマドルーナ=トーマと言います。」

「ああ、あなたでしたか。学園長のアブラカ=タブラです。どうぞ、お座りください。」


椅子に座った。高級感のある木の椅子。座ると何故か心が落ち着く感じがした。


「名前はトーマというのですね。なぜ仮面を?」

「外すと騒ぎになるので。」

「ふふふ。何か理由があるのですね。この学園は普段の服装には何の決まりもありませんから、何も問題はありませんよ。」

「学園長、話したいこととは一体何でしょうか。」


アブラカ=タブラはいつの間にか用意されたティーカップを手に取り紅茶を軽くすすった。

一息つくと目を閉じて優しげな口調で話し始める。


「あなたの前世の話です。あなたのどういった過去がG級の精神力を生み出したのか気になったのです。」


「・・・すみません。それは出来かねます。」

「やはり、話したくない辛い過去がおありなのですね。良いでしょう。では質問を変えます。あなたは運命の神に会ったことはありますか?」

「!!!・・・・・学園長も転生者なのですか?」

「いえ、違いますよ。」

「ではなぜ、運命の神のことを知っているのですか?」


アブラカ=タブラはフッと笑うとまた一口、紅茶をすすった。


「勇者ヘラクレスが転生者だったからですよ。」

「っ・・・!?」


一瞬息が詰まった。勇者ヘラクレスが転生者?


「勇者ヘラクレスは転生者だったのですか?」

「ええそうですよ。前世の記憶を継承した転生者。前世の運命値が1であったために、前世の記憶を継承し、自らが望んだ運命を歩んだ伝説の勇者です。あなたもそうなのでしょう?」

「・・・はい、その通りです。しかし、なぜ精神階級が高いというだけでオレが転生者だとわかったのですか?」

「簡単なことです。

この世界では階級がS級以上の人間は存在しません。

非常に辛い時期を生きた暗黒時代の人間でさえも階級はS級でした。

階級がG級であるあなたはイレギュラーな存在と言えます。

前世の記憶を継承する条件は前世の運命値が1であること。

運命値が1である人間は悲惨な運命を強いられる。その悲惨な記憶を継承しているから必然的に精神力は高くなる。

あなたの階級が高いのは、前世の辛い記憶が精神力を強くしていたからに他ならない。前世のあなたの身に何が起こったのかはわかりませんが、精神階級がG級になるほどの記憶があなたの中にあるのでしょう。」


なるほど。オレが幼いころから精神力が高かったのは前世の記憶があったからだったのか。


「辛い記憶があると精神力が鍛えられるのですか?」

「はい、精神力が高い者は共通して過去に辛い経験をしていることが我が校の研究によって明らかになっています。」

「勇者も転生者だったということは勇者の階級も高かったのですか?」

「はい、ヘラクレスの階級はSS級でした。だから魔王の精神魔法に侵されることなく祝福を行使できた。持ち前の高い精神力と神の名を冠する祝福で魔王に対抗することができたのです。」

「ん?ちょっと質問良いですか?」

「はい、何でしょう。」

「勇者伝説の本には、勇者ヘラクレスは祝福によって魔王の支配から逃れたとありました。でも今の話を聞くと、勇者ヘラクレスは最初から魔王の支配から逃れていたということですか?」

「はい。そういうことになりますね。ただ、祝福を行使していないときの勇者は‶支配″からは逃れられたものの、‶圧力″からは逃れられませんでした。魔王の精神階級はG級でしたからね。ヘラクレスは祝福[ゴッドブレイブ]によってG級になることで魔王の精神魔法から完全に逃れ、人々を救ったのです。」


‶圧力″?何のことだ?


「今学園長が言っている‶支配″や‶圧力″というのは精神魔法の種類ですか?」

「ああ、そうですね。あなたはこの学園に入ったばかりだから精神魔法についてよく知らないのでしょう。」

「はい、学園長の書かれた魔導書も全部読みましたが精神魔法は載っていなかったので。」


オレがこういうと、アブラカ=タブラは少し目を大きく開けてビックリするような顔でオレを見た。


「・・・市販に出回っているのは『天才魔導士のすゝめ』。あれを全部読んだのですか?」

「はい。父が全部持っていたので全部読みました。」

「そうですか。・・・それはすごいですね。あれを既に読破しているとは。相当長い書物ですが」

「でも、精神魔法についての記述はありませんでした。」

「悪用されないためですよ。精神魔法を使えば人攫いが簡単に出来てしまいますからね。

精神魔法について簡単に説明しましょう。


精神魔法とは、対象の精神力に何らかの影響を及ぼす魔法のことを言います。精神魔法には5つの種類があります。

【支配】【圧力】【封印】【忠誠】【魅惑】

の五つです。

魔王は人間に【支配】と【圧力】の精神魔法をかけていました。


支配系の魔法は階級が二つ以上下の者に、圧力系は一つ以上下の者にかけることができます。

支配系の魔法は対象を完全に支配下に置くことができ、命令をすることができます。支配下に置かれたものは祝福の行使さえもできません。受動系の祝福さえもです。


圧力系の魔法は対象の行動や思考を鈍らせることができます。


ヘラクレスは魔王の【支配】から逃れることができたおかげで、祝福を行使でき、祝福によって人々を救ったのです。」


「その、勇者ヘラクレスの祝福[ゴッドブレイブ]とはどんな能力なのですか?」

「祝福[ゴッドブレイブ]、神のような勇敢な精神を獲得する。その勇敢な姿は味方にも大きな勇気を与える。という能力です。」

「・・・その本質は?」

「まず、神のような勇敢な精神を獲得したヘラクレスの精神力はG級になりました。また、勇者の祝福による加護を受けたものも皆、精神階級がG級になったのです。つまり、この祝福は〈自分、及び味方の精神階級をG級まで引き上げる〉という能力だったのです。」

「・・・なるほど、とても強力ですね。」

「G級になったことで、私の魔気量も大幅に増えました。祝福の行使も可能になったため、禁術魔法の一つである封印魔法を使えるようになり、魔王を封印することができたのです。」

「学園長の祝福はどんな能力なのですか?」

「私の祝福は[グリモワール]。あらゆる魔法を発動させることができる、最上級の祝福です。属性魔法・禁術魔法・天災魔法など、魔気量さえ足りればどんな魔法でも扱うことができます。」


グリモワール、魔導書か。あらゆる魔法強化系祝福の上位互換になりえる祝福だろう。


「凄まじいですね・・・。少し気になったのですが、勇者の加護による魔気量上昇と祝福[グリモワール]があったのに、魔王を滅ぼすのではなく封印したのはなぜですか?」

「そうするしか方法がなかったのです。ヘラクレスと私の力を合わせても魔王を撃ち滅ぼすことは出来ませんでした。」

「それほどまでに魔王は強かったのですか?」

「圧倒的でした。奴にはあらゆる攻撃が通用しません。物理攻撃も、属性魔法も。」

「それは・・・魔王の祝福ですか?」

「ほう・・・。あなたは魔物も祝福を授かることを知っているのですね。」

「祝福の神に聞きました。」

「なるほど。そうです。魔王はこの世界で最も強い存在だといえます。

魔王の祝福は[ゴッドアーマー]。

神の名を冠する祝福で、あらゆる攻撃を無効化する鎧を着ることができます。

神の鎧を着ているため物理攻撃の威力も凄まじく、ヘラクレスが必死に応戦していましたが、やられるのも時間の問題でした。そこで、彼は自らを犠牲にして魔王に一瞬の隙を作りました。その一瞬で魔王に完全封印魔法をかけ、封印したのです。」

「封印魔法は通じたのですか?」

「封印魔法は精神魔法の一種でもあります。ゴッドアーマーは精神魔法だけは防げなかったのです。」



[グリモワール]って実質、神の名を冠する祝福並みの強さなんじゃ・・・。


「今はもう使えませんけどね。」

「なぜですか?」

「魔気が足りないからです。ヘラクレスの加護によって一時的にG級の魔気量になり、文字通りあらゆる魔法を行使できたのですが、今はS級。禁術魔法を使うには魔気量が足りないのです。」


なるほど・・・。

あらゆる魔法を使えても、魔気量が足りないことで行使できる魔法に制限がかかるのか。


「さて、本題に入る前にあと一つだけ聞きたいことがあるのですが、よろしいですか?」

「はい、何でしょう。」

「トーマは運命の神にどんな運命を望んだのですか?

ヘラクレスが言うには、“運命値が1だったものは記憶の継承と運命決定権が与えられる”と言っていました。

ヘラクレスは“前世は周りから忌み嫌われる存在だったから、《人々の希望となり、人々を悪から救う伝説の勇者のなりたい》と願った”と言っていました。あなたも運命の神になにか願った運命があるのでしょう?それを知りたいのです。」


・・・なぜだろう、なんとなく言いたくないのだが。

口に出すとドン引きされそうである。


「《神をも惚れさせる世界一の容姿》を願いました。」

「・・・へ?」

「いや、あの、だから。《神をも惚れさせる世界一の容姿》を願いました。」

「・・・フフフ。そんなことを願ったのですか?なるほど、だから仮面をつけているのですね。」


アブラカ=タブラは爆笑したいのを我慢しているようだった。とても恥ずかしい。

この運命にまったく後悔はしていないが、今振り返ると結構恥ずかしいことを言ったという自覚はあるのだ。


「学園長は笑っていますが、案外バカには出来ないのですよ。この運命のおかげで祝福の神を惚れさせることができ、神の名を冠する祝福を得ることができたんですからね!!!」


開き直って胸を張ってこんなことを言ってみたが、オレの心の中まではごまかせない。

恥ずかしさのあまりに沸騰しそうなのである。


と、オレの言葉を聞いたアブラカ=タブラは笑うのを急にやめて、驚いた顔でオレをみた。


「今、神の名を冠する祝福を得たといいましたか?」

「ええ、そうですよ?なかなかいい運命を望んだものです。」

「そ、それで。その祝福はどんなものなのですか?」

「祝福[ゴッドハンド]。発動状態で触れたものの魔素を奪うことができる。という祝福です。」

「・・・何ということでしょう。」

(間違いなく最強の祝福じゃない・・・。魔王との相性も抜群だわ。)


「どうしたのですか?」

「トーマ、これから話すことは本題です。あなたに魔王の討伐を依頼したい。」

「・・・・・へ?」


聞き間違えただろうか。今、魔王を討伐してほしいといわれたような気がしたのだが。


「そもそも、私がこの学園を設立したのは、いつか魔王が何かのきっかけで復活したときに、魔王に対抗しうる力をつけるためでした。

入学式で言った“身に着けた力を世界の平和のために使ってほしい”といったのも、そのためです。

あなたの階級がG級だと分かった時、魔王の精神攻撃に対抗できるこの世で唯一の存在であるあなたに魔王討伐を依頼したいと考えたのです。そうすれば、人間がこれから未曽有の危険にさらされることがなくなります。この学園を設立した目的を達成できるのです。」


オレに勇者になれというのか・・・。


「でも、魔王に攻撃は通じないんですよね?どんなにオレが魔法に対して無敵でも滅ぼすことは出来ないんじゃ・・・。」

「・・・。あなたはまだ祝福[ゴッドハンド]の本質に気づけていないようですね。」

「へ?」

「あなたが[ゴッドハンド]の本質に気づけたとき、あなたの祝福は世界最強の能力を発揮することでしょう。」


なんだと?オレはまだ本質に気づけていないのか?魔法が効かないこと以外に使い道があるってのか?


「それに・・・。あなたなら、神剣‶雷霆ケラウノス″を扱えるかもしれませんね。」

「ケラウノス?」

「それについても、あなたがゴッドハンドの本質に気づき、魔王を討伐する気になったときに話しましょう。」


ケラウノス、前世ではギリシア神話の主神ゼウスの主要武器とされていたものだ。

オレなら扱えるかもってどういうことだろう。


「返事は今すぐでなくてもよいのです。この学園にいる間に決断してください。一つ言えることは、あなたには魔王を撃ち滅ぼせるだけの素質はあるということです。」

「わかりました・・・。」


「魔王を倒してほしいとは言いましたが、それと同じくらいこの学園での生活を楽しんでほしいとも思っています。これからの学園生活を楽しみつつ、世界の平和のために、努力を惜しまないでほしいと思います。」


アブラカ=タブラは最後にそう言って微笑んだ。


・・・・・・・・・・


「どうだった?学園長との話は。風に聞いてみたが、やはり何もわからなかったよ。」

「そりゃそうだろ。学園長ほどの魔導士が障害壁を張らないわけがない。」

「勇者の話をしたのよね?」

「勇者の話はしたけど、シークレットな話は聞けなかったよ。(転生者の話は出来ないからな。)学園長がしたかったのは、学園長直々に講義の推薦状を出してくれるという話だった。実力者しか受けられない講義があるらしく、それを受けられるようになるらしい。それとは別に、オレが受けたほうがいいと思われる講義も選んでくれた。」


そう、実はあの話の後、アブラカ=タブラがオレに受ける授業のアドバイスをしてくれたのだ。

まあ、魔王に対抗できるだけの力をオレに着けるために受けてほしい授業をしただけだろうが。

ありがたいことである。この学園はとても講義の種類が豊富だ。魔法のに関するものしかないが、魔法の種類と難易度で講義を分けているため、全部で1000ほどの講義がある。どの講義を受けるのか、迷っていたのだ。


「学園長から直々に・・・。羨ましいわね。講義の種類が多すぎてどれを取るべきかみんな迷っているわ。」

「それで?どんな講義を受けることになったんだ?」

「身体強化魔法γ、戦闘魔法γ、祝福概論、精神魔法、魔気概論の五つ。

精神魔法の講義は学園長の許可がないと受けられないらしい。」

「許可がいるのは危険だからか?」

「いや、精神魔法は悪用されると危険な魔法だから、学園長が悪用しないと見込んだものにしか許可を出さないようだ。」

「すごいな。既に学園長の信頼を得ているのか。」

「・・・・・。」

「エル、どうかしたかい?悩んでいるような顔をしているが。」

「実は私、精神魔法について学びたいと思っていたの。」

「精神魔法を学びに来た?何のために?」

「それは言えないわ。でも、まさか許可がいるなんて・・・。」

「学園長に掛け合うといいよ。悪用する気がないのなら、きっと許可してくれると思うよ。」

「そうね、学園長に掛け合ってみるわ。」


精神魔法を学びたい。何か深い事情があるのだろうか。

いつか仲良くなったとき、聞けたらいいなと思う。


精神力が高い者は過去に辛い経験をしているという。彼らにも過去に辛い経験をしているのだろうか。

いつか仲良くなったときに、お互いの過去を語れる日が来るのだろうか。

そんなことを想いながら、オレは三人と話していたのだった。

読んでいただき、ありがとうございます。

熊本の大雨。心配ですね。

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