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第10話:仮面が必須アイテムになりました。

ホグワール魔法学園編ではトーマの一人称が変わっています。

貴族生活では「僕」でしたが、学園生活では「オレ」になります。


貴族なので、親の前ではオレなんて言えなかったんですよね。


 ホグワール魔法学園に進学することにしたが、どうやら入学試験なるものがあるらしい。毎回試験内容はガラリと変わるため対策は無意味らしい。


「今年はホグワール魔法学園のある山の麓で試験が行われるようです。」

「じゃあ、そこまでは送ってくれ。そのあとは僕一人でいいから。合格したらそのまま寮に入る流れになっているからね。帰ってこなかったら合格したと思ってくれ。」

「承知いたしました。では、出発いたします。」


家を出発した。少し遠いところにあるから出発は早朝。日の出を丁度迎えそうな時間帯。ほんのり明るく、涼しい。どうやら天気もよさそうだ。


「この馬車は速いね。」

「いつものような乗り心地を優先したものではなく、速さを重視した馬車でございます。揺れは多少大きくはなりますが、馬車酔いするほど激しくは揺れません。」


確かに、速さ重視の割には乗り心地はそこそこいい。


「着きましたぜ」

「ああ、ありがとう。じゃあレイカ。行ってくる。」

「いってらっしゃいませ。頑張ってください!」

「うん、がんばるよ」


・・・・・・・・・・


試験会場に着いた。なんとなく騒ぎになりそうなので仮面をしておいた。これでスムーズに試験を受けられるはずだ。山は木々の生い茂るとても高い山、グローブマウンテン。この山の頂上に学園はあるらしい。


この試験は世界の天才たちが集まる場。この中からさらに絞られるわけだから、ホグワール魔法学園に在籍している生徒たちは本物の天才たちというわけだな。


しかし・・・多いな。ざっと1500人は居そうだぞ?倍率はどれくらいだろうか。


「えーこんにちは。わたくしホグワール魔法学園入学試験試験監督を務めるものです。よろしくお願いします。」


名乗らないのか。目の下に隈ができてる・・・寝不足なのだろうかな。

気だるそうな雰囲気を包み隠さず放っている。


「試験内容は至って簡単。ここから山の頂上にあるホグワール魔法学園に行くだけです。先着100名を合格者とします。ただし、この山は危険な魔物が数多く存在しています。時間短縮のためにも、なるべく出くわさないように進むことをお勧めします。」


ん、なんだ。頂上に行くだけなのか。簡単じゃないか。そう思っていたのだが・・・


「まじかよ・・・。」

「この山、Aランクの魔物とかも生息してる山だろ?下手したら死ぬぞ・・・。」

「そんな中で競争をするなんて・・・しかもたった100人。」

「やべえな・・・」


こんな声が聞こえてきた。なるほど、この山自体が脅威となるわけか。魔物が出るのは面倒だな。


「他人を妨害すること以外は何でもアリとします。誰かを傷つけたり妨害するような動きをした場合は即失格とさせていただきます。日が暮れるまでに学園に到着してください。」


・・・なるほど。何でもありというのは魔法のことを指しているのだな。また、どんな手段を使ってもいいから、学園がある頂上に行けばいいわけだ。てか、こんな早朝から日が暮れるまで制限時間をくれるのか。制限時間なんてないようなものだな。倍率はだいたい15倍くらいか。


「では、試験開始。」


わああああああああ!!!!!


漫画にするとこんなオノマトペが付きそうな感じだな。皆が勢いよく山を駆け上がっていく。

今行くと押しつぶされそうだな。山は高い。魔物も出るのだし、もう少し慎重に行ったほうがいいのではないか?


「ハァ。バカな奴らだ。もう少し落ち着いて冷静になればいいものを。この山は魔物の強さ以上にその個体数の多さが有名な山。数多いる魔物を避けながら陸を進むなど愚策にもほどがある。」


いかにも呆れましたみたいなポーズをとっている男がいる。

メガネをかけていて、真面目そうな見た目をしている。

そこそこ整った顔をしているし、メガネフェチの女子にモテそうだ。


オレと意見がかぶってはいるが、何か策があるような言いぐさだな。


「この山をバカ正直に登って日が暮れる前にゴールできるわけがない。」

「じゃあ君はどうするんだい?」

「・・・なんだ君は?なぜ仮面をかぶっているのだ?・・・まあいい。僕が皆にお手本を見せるとしよう!

 ‶ウインドアップ″」


男の体が宙に浮いた。彼の周りにだけ風が吹き荒れている。なるほど、風魔法で体を浮かせているのか。


「では、おさきに!」


そういうと、彼は優雅に山を翔け上がる。なるほど。飛行して行けば一瞬で頂上を目指せそうだ。

オレも続こう。


「‶エンジェルウィング″」


これは光魔法。高速飛行が可能だし、この魔法が最適だろう。

ギュン!というオノマトペを伴って、オレも一気に山を翔け上がった。

すぐに男に追いついた。


「やあ。」

「うお!き、君も空を飛べるのか。」

「まあね。君は風魔法がとてもうまいね。オレも風魔法は使うけど、そんなに手を動かすように自由に操れないよ。」

「祝福のおかげさ。君の光魔法だって、とても優雅でかっこいいじゃないか。祝福のおかげかい?」

「いや、祝福のおかげではないよ。」

「それはすごいな。やはりこの学園は本物の天才が集まるようだ。」


話してみると意外と良いやつだった。変な対抗心を燃やして嫌味を言ってくるかと思いきや、素直にオレのことを褒めてきた。

こいつはきっと合格するだろう。仲良くしたいものだ。


「他の者たちは姿が見えないな。」

「当然だろう。陸を走っていたら日が暮れてしまうさ。」


「グギャァァァ!!!」

「うお!レックスか!」

「なるほど、飛翔する魔物もいるというわけだな。」

「僕が始末する!‶ウインドスラッシュ″!!」


レックスの首が刎ねられた。こいつ、戦闘能力も高そうだな。


「他愛もない。さあ、行こう。」

「やるね。」

「レックスくらいならどうってことないさ。さあ、見えてきたぞ」


目の前に見えてきたのは「サグラダファミリア」を彷彿させるとても大きい建物。これがホグワール魔法学園か。霧がかかっていて雰囲気を妖しいものにしている。


「グギャァァァ!!!」

「チッ!雑魚のくせに、面倒な奴だ!」

「いやまて、あれは・・・」


レックスが五匹ほど森から出てきた。そのうちの一体は明らかにサイズがデカい。


「ギガレックスだ・・・。」

「ふん!所詮レックスの上位個体というだけだろう?僕が仕留めてやる!‶ウインドスラッシュ″!!」


五つの風の刃がギガレックスたちを襲う。四体のレックスは先ほどのレックス同様、簡単に首を刎ねられてしまう。しかしギガレックスはその風の刃を簡単に弾いてしまった。相当硬い鱗を持っているようだ。


「クッ!面倒な奴だ。」

「オレがやろう。‶サラスヴァティの聖剣″!!」

「グギャァァァ!!!」


ギガレックスがオレをめがけて突進してきた。オレはそれを華麗に後ろに受け流すと、そのままギガレックスの首を刎ねた。ギガレックスはそのまま山へと落ちていった。


「・・・君は何者だ?その魔法も祝福の恩恵を受けていないのかい?」

「ああ。これはオレが初めて習得した魔法だよ。今まで何回も使ってきたから馴染み深い魔法なんだ。」

「剣術の心得もあるのか?」

「ああ、岩水派の剣術を習得しているんだ。」

「フハハハハハ!君のようなものに出会えて、僕は幸運だな!ぜひ仲良くしてほしい。僕の名はペネム。よろしく。」

「トーマだ。よろしくな。」

「しかし、君はなぜ仮面をつけているのだ?」

「外すと騒ぎになるからな。学園に着いたら外すよ。」


その後は何の魔物にも出くわすことなく学園に着いたのだった。


・・・・・・・・・・


「ようこそホグワール魔法学園へ。早かったですね。おめでとうございます、あなた方はこの学園への入学権を獲得されました。どうぞ、中へ。」


見た目は80歳くらいのおじいさんに促され、中へ入った。キリスト教の教会みたいな造りだ。なんとなく神秘的な雰囲気がある。


「なかなか幻想的な場所だな。僕はこんな装飾がとても好みなんだ。」

「オレはもっと落ち着いた雰囲気のほうが好きだけどな。」




「おお!オレが一番だと思ったのに、先着がいたとは!こりゃあ驚いた!」


何だか騒がしいやつが入ってきたな。


「僕たちは空を飛んできたからな。君も相当早いではないか。」

「オレは祝福 [()()()()()] で一気に駆け上がってきただけさ。他の連中が魔物の足止めを食らっている間、オレは魔物をすり抜けるように上ってきたからな。」

「なるほど、魔物をスルー出来るほどの俊足か。良い祝福だな。」

「まあ、それでも何体かとは交戦したがな。俊足の蹴りで切り抜けたよ。

・・・もしかして、頂上付近で空から降ってきたギガレックスはお前らがやったのか?」

「ギガレックスをやったのはこちらのトーマさ。」

「ああ、オレが斬ったやつだろう。邪魔して悪かったな。妨害するつもりはなかったんだ。」

「問題ないさ。ていうか、こんなに早く到着できる者が他の者を邪魔する理由などないからな。オレの名はダネル。よろしく頼む。」

「トーマだ。よろしく。」

「ペネムだ。こちらこそよろしく。さて、あと何人が制限時間内に来れるかな。」

「日が暮れるまでにつけばいいんだろう?100人集まらないと思ってるのか?」

「この山は高いうえに魔物の数が尋常じゃない。一体一体が強力だから、急いで駆け上がろうとすると魔物に襲われて下手したら命を落とす。かといって慎重になりすぎると時間切れになる。」

「オレみたいに魔物を振り切れるほどの速度があれば別だろうがな。」


死ぬ危険さえあるこの試験。前世ならあり得ないな。死ぬ可能性のある試験なんて実施したら非難の嵐だ。


「ところで、トーマはまだ仮面をとらないのかい?」

「ああ、そうだね。」

「オレぁてっきり、トーマには仮面を外せない何かがあると思っていたのだが、そういうわけではないのか。」

「そういうわけではないんだけどね。」


そういってオレは仮面を外した。


「うぉ・・・・・。これは驚いた。」

「・・・トーマ、お前はずっと仮面をつけていたほうがいいかもな。これは確かに騒ぎになりそうだ。」

「やはり付けたままがいいかな?」

「ああ。今後の学園生活を平和に過ごしたいならな。モテすぎて大変なことになりそうだ。」

「モテすぎるのだけはやめてくれよ?オレが付き合う女がいなくなっちまう。」

「ダネルはモテたいのか?」

「当たり前だろ?オレは生粋の女好きだからな」

「しかし・・・僕が今まで出会ってきた人の中で誰よりもイケメンだったよ。」

「ああ、オレは自分のことをそこそこイケメンだと思っていたが、トーマを見ると考えが変わったよ。」

「ダネルは普通にイケメンだと思うけどね。トーマほどではないが。」

「おお!ペネム、お前結構良いやつじゃねえか!メガネかけてるからクソ真面目で嫌な奴かと思ってたぜ!」

「君は正直だな。僕が真面目なのはそうだが、他人の才能を妬んだりはしないタイプなのさ。」

(オレも第一印象はそんな感じだったが、意外と冗談のわかるやつっぽいな。)


と、その時。周辺の空気の温度が下がったような感覚を覚えた。

軽く身震いするほどだ。


「なんだ。私が一番だと思ったら、先着が居たのね。」


髪が水色で整った顔立ちをしている女が現れた。同じ受験生だろう。


「君こそ、早かったじゃないか。」

「おう、オレも午前中のうちに到着できるのはこの三人だけだと思ったぜ。なあ?ペネム。」

「・・・・・。」

「ん?おい、ペネム!どうしたんだ?」

「ん、あ、ああ。僕も驚いたよ。」

(なんだ?顔が赤いな。もしかして・・・。)


「マルティエルよ。エルって呼ばれてるわ。これからよろしくね。」

「ダネルだ。よろしくな!」

「トーマです。よろしく。」

「ペネムです、よろしくお願いします。」


「どうやってこんなに早く着いたんだ?」

「襲い掛かる魔物の足を凍らせながら来たのよ。私に便乗して他の受験生が付いてくるのが嫌だったから、完全には凍らせなかったけどね。私に便乗して通過しようとした人たちはことごとく氷漬けから解放された魔物たちに襲われていったわ。」

「氷魔法が得意なのか。」

「私の祝福は[()()]。冷気を支配しているの。」

「攻撃力の高そうな祝福だな。そういえば、トーマとペネムの祝福はどんなんだ?」

「僕の祝福は[()()()()()()()()]。風魔法を完璧に使いこなせる。そよ風も暴風も自由自在さ。」

「風か。なるほど、空を飛んだのも風魔法によるものか。トーマは?」

「オレの祝福の名は[()()()()()()]。」


「「「()()()()()()!?」」」


「神の名を冠する祝福・・・伝説の勇者と同じじゃねえか!」

「驚いたわ。信じられない。」

「いったいどんな祝福なんだ?」

「ゴッドハンド発動状態で何かに触れると、対象の魔素を一瞬で奪うという能力だ。オレはあらゆる魔法を無効化できる。どんなに強力な魔法も、オレの前では無意味だ。」

「なるほど・・・。すごい能力ね。この学園では特に力を発揮しそうな祝福だわ。」

「確かに強力だが、オレみたいな魔法に頼らず物理攻撃を主体とする相手には不利じゃないか?」

「いや、ダネル。トーマは岩水派の達人でもある。近接戦闘をトーマは苦手としていない。」

「達人は買い被りだよ。」

「いや、さきほどのギガレックスの突進を華麗に受け流し首を一刀両断に切り捨てたのは達人というほかないだろう。」

「あの頂上付近に死んでたギガレックスはあなたがやったの?祝福の恩恵を受けてないのにそんなことができるなんて・・・。世界は広いわね。」

「なあ、トーマ!今度オレと組み手しようぜ!めちゃくちゃいい試合ができそうだ!」

「気が早いな。まだ合格が決まったばっかりだぞ?」

「しかも組み手とは・・・。君はホグワール魔法学園に来たという自覚はあるのかい?」

「もちろんあるとも!オレは近接戦闘しかできないから、魔法の勉強をして中遠距離攻撃系の魔法を覚えたいと思ったんだ。この学園には【戦闘系魔法研究室】があるからな。」

「なるほど。魔法とは縁のなさそうな君がこの学園に入学するのが謎だったが、ちゃんと志があったのだな。」



四人で雑談しているとさっき案内してくれた爺さんが入ってきた。

「君たち、せっかく早くゴールできたのだから近くの食堂で食事でもしたらいい。この学園は広いから学園内を見て回るのは迷子になるからオススメしないが、食堂はここから廊下に出て左にまっすぐ行ったところにあるから迷う心配もない。」

「おお!ありがとうございます!丁度腹が減ったところだったのだ!」

「腹は減ってないが、ここで立ち話をしているのも疲れるし、食堂で話そうか。」

「日が暮れる前にまたここに来てくれ。君たちは既にこの学園の生徒だが、人数確認と寮への案内があるからね。」

「わかりました。」


オレたちは食堂に行き、おしゃべりをしたり昼食をとったりして時間をつぶした。食堂には在籍している生徒や教授の姿も見られた。


時間になり、教会っぽい建物に戻ったところ、約60人ほどの受験者がぼろぼろの姿で座り込んでいた。ここにいるということは合格者だ。



「そろそろ門を・・・おや。」

「はぁ、はぁ・・・ま、間に合った・・。」

「はい、ではここまで。丁度日が暮れましたので、まだゴールできていない受験生は失格とさせていただきます。」


そういうと爺さんは外の門を閉めた。最後に入ってきた女子は運が良かったな。後少しでも遅れていたら間に合わなかっただろう。

ん?あの女子、どこかで見たことあるような気がするな・・・。



「では、負傷者はここに集まってください。回復魔法ヒーリングマジックをかけます。」


そういうと爺さんは集まった受験生に回復魔法をかけていった。傷がみるみる治っていくのがわかる。さすが世界トップの魔法学園だ。生徒が天才だらけなら教える教授も天才でなければならない。この爺さんも、見た目はただの年寄りだが、相当なやり手に違いない。


「では、今から皆さんに寮を案内いたします。」


何の挨拶もなしに寮の案内をし始めた。おめでとうの一言があってもよさそうなんだが。







まあ、何はともあれ、無事にホグワール魔法学園に入学できた。不安要素であった友達作りもなんか上手くいってしまった。仲良くなった三人以外とも是非仲良くしたいものだ。これから始まる学園生活に、いまだ消えないトラウマをほんの少しだけ残しつつ、楽しくなりそうな予感に期待を膨らませるのであった。

読んでいただき、ありがとうございます。

大学のレポートとなろうの両立ができるようになりました。


最近料理にはまってます。奥が深いですよね

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