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光を守護する影の物語 旧題:異世界転移物語  作者: 転移待人
1章 -異世界-
6/29

転移

──見渡す限り、木


 目を覚ました場所は、そんな感想を抱く様な景色の場所だった。

 誤った転移魔法陣のお陰で、いきなり異世界人とご対面とはならず、異世界の樹木達とご対面となったらしい。

 これからどうするかなぁ⋯⋯。何せ右も左も前も後ろも木ばかりだ、進む方向すら満足にわからん。


「とりあえずまぁ、プロパティっと」


 スキルを確認する為にプロパティを開く。


◾︎個体名:  スキル情報


 剣術 S

 格闘術 S

 隠密 S

 空腹耐性 C

 毒耐性 C

 偽装 S

 影魔法 S

 成長促進 S

 変幻自在

 言語理解


 ⋯⋯どうやらちゃんと希望は通ってる様だな。

 名前は表示されない⋯⋯と。これは俺の記憶関係ないだろうから、モザイクのお心遣いだろうな、わぁ素敵。


 各種スキルを認識し、意識を集中するとそのスキルの説明が頭に浮かぶ。


 変幻自在ってのは⋯⋯成る程な。自身または触った物を表面だけ作り変える、か。変化と違う点は変幻後が正となる為、見破られ難くなるってとこか。価値がないとか言ってたが、かなり有用じゃないか?


 言語理解はそのままの意味だ。人族・他種問わず話す言語を理解できる。これもかなり良い。


 続けて、得たものの次は失ったモノの確認だ。

 自分が誰で地球で何をしてたかがわからない。思い出せないのではなく、わからないのだ。

 記憶をタンスと引き出しで表す表現が有るが、それで表すなら、引き出しごと消失したかの様だ。


 親族や仲間の知識はあるが、何故大切に思っているかわからない。これは中々キツイな。


「くれてやったモノを悔やんでも仕方なし、か」


 口に出す事で喪失感に蓋をしようと試みつつ、自身の姿を確認する。

 黒ワイシャツに黒のチノパン。全身真っ黒だ⋯⋯センス×ってところだな。一体何の仕事してたんだ俺は。手が後ろに回るような仕事でなかったことを祈ろう。


 身辺整理(?)も一通り済ませて、目の前にある大樹に手を掛ける。


「周辺地理は高いところから、ってな」


 木の頂点近くまで登り、周辺を見渡すも木ばかり。森の終わりも見えないとはどういう事だろうか。

 現状に頭を抱えているところに、何やら衝突音が耳に入る。大きな木同士がぶつかった様な音。大きな音に反射的に音の方向へ視線を向けると、今にも折れ、倒れそうな木々が目に入る。


「流石に自然にああはならないよな⋯⋯」


 そう呟き木を降りて音の方向へ向かう事とした。


◆──────────◆


 目標地点の木々達が視界に入る頃には、そこで起きた惨状が目に入っていた。


「⋯⋯こりゃひでぇ」


 そこら中に散らばる木の角材や鉄くず、何より目を引くのは自身にも生えている腕や足が赤黒い何かに塗れ、転がっている光景だった。

 折れ掛けている木には大きな爪痕、鉄くずに見えたのは檻⋯⋯だろうか?


「この爪痕に見合うデカさの何かに襲われ、壊され、殺された⋯⋯か?」


 見渡すと人の頭や胴体を見かけない事に気づく、千切れた四肢には目を向けず、食い漁ったのか。

 それとも巣に持ち帰って保存するとしたか。


「気になる、が。今はそれよりも」


 現状大事なのはこの何かと遭遇せずに、上手くここを離れる事。血痕が引き摺られている方向に何かがいると仮定し、逆方向、つまり来た道を戻るのが一番か。


 そう考えてその場から離れようとすると、ふと物音がする事に気がついた。

 鉄くずかと思った檻の方から、何かを鉄に擦り付ける様な音が聞こえる。


 止めろ、行くな。心が叫ぶ。だが欲につられて、音に引き寄せられるように不用意に檻へ近づいて行く。

 鉄くずと化した檻の裏にはもう一つ檻があった。檻だと分かる程度には形は残っているようだ。

 問題はそこではない。音の発生源、そこには⋯⋯。


『フーッ⋯⋯フーッ⋯⋯』


 檻の中から伸びたナニかを咥えながら、咥えたものを檻に擦り付け、いや檻から出そうとしている大きな獣の姿があった。

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