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月の影  作者: キリくん
3/3

『影』の仕事

第3話です!

レンが帰ったあと深也は祖母と夕食を食べていた。


「やっぱりばあちゃんの卵焼きは美味いなぁ」

「あらあら。シンが喜んでくれて私も嬉しいわぁ。夜に備えてしっかり食べなさいね」

「・・・うん」


祖母の言葉に深也はうつむく


「・・・シン。無理しちゃダメよ。私には何もできないかもしれないけど相談ぐらいならできるから」

「・・・うん。ありがとうばあちゃん」


その後食事を済ませて深也は部屋に戻った。



------------------------------------------



時間が過ぎ、真夜中の1時を時計が刺した。


「・・・時間か」


ベッドから起き上がると深也はクローゼットの奥から闇に溶け込むような黒いフード付きのコートを取り出しそれを羽織った。そのまま部屋を出て少し重い足取りで玄関に向かう。靴を履いて出ようとしたところに後ろから祖母が出てきた。


「行ってらっしゃい」

「・・・行ってきます」


振り返らずに言葉を返し外に出ると深也は月に向かって人間とは思えない力で跳んだ。

そのまま屋根の上に着地して走り出す。だがその足音は普通の人には聞こえないほど静かで素早いものだ。さらに深也の目はまるで血のように真っ赤に輝き、走った後には赤い軌跡が残っていた。


彼は『影』。大昔から人に取り憑く謎の存在の妖を狩り続けている一族の者だ。妖に取り憑かれた人間は心にある暗い部分を増幅させられ、犯罪を犯すようになってしまう。彼らはそれを防ぐために妖が動き出す真夜中に見回りをしている。


(今日も月が綺麗だな)


雲ひとつない空には美しい三日月が浮かんでいた。

月に見とれていると深也の耳がピクッと反応した。


『・・・ォォオン』

「・・・了解」


犬の遠吠えのような声を聞き、声の方に走り出した。



-----------------------------



遠吠えの出処は公園だった。茂みの中を掻き分けるとレンがそこにいた。レンも深也同様フード付きのコートを着ており、目は真っ赤に変わっている。


『やっほーシン。さっきぶり』

『それでどうするんだ?』


2人の声は人間のものではなかった。普通の人が聞けば犬の鳴き声のようにしか聞こえないだろう。


『とりあえず今日は2人で一緒に行動しよう。取り憑かれている人がいたら・・・妖に尋問でもしてみる?』

『尋問って・・・』

『ま、何とかなるでしょ。さ、いこいこ』


レンのあとを追いかけ、再び深也は夜の町を駆け抜ける。



『そういえばシン。今日美夜ちゃんと帰ってたでしょ』

『!?なんでそれを』


レンからの突然の言葉に驚きを隠せず体のバランスを崩しそうになる


『実は2人が帰ってるところをこっそり見てた』

『嘘だろ・・・』


俺が絶句しているとレンが笑いだした。


『あはは!うそうそ。適当に言ったらシンが勝手に自爆しただけ』

『な・・・!?』


また言葉を失ってしまった。まんまとはめられてしまった。


『まさか本当に帰ってたとはね。デートかな?』

『そんなわけないだろ!・・・死体が発見されたから怖くて1人で帰れないって言われたから仕方なく・・・』

『クスクス・・・』

『笑うな!』

『ごめんごめん。でも気分転換にはなったでしょ?』

『・・・!』


(まさかレン。俺のことを心配して・・・)


『・・・そうだな。ありがとう』

『ところで本格的に付き合うのはいつになるのかな?』


(前言撤回。いつものレンだった)



しばらくして深也が何かを見つけた。


『・・・いた。妖だ』

『じゃあ行こうか』


2人は妖に向かって走り出す。2人の超人的な足なら妖の元に辿り着くのは一瞬だった。

塀の角に隠れて様子を見るとそこに1人でフラフラと歩くスーツ姿の男がいた。


「くそっ、あのクソ上司が!いちいち偉そうに命令しやがって・・・」


どうやら仕事の上司に対しての怒りを膨らませているようだ。


『とりあえずまだ乗っ取られてはいないね』

『ああ。変わったところもないな。直ぐに引き剥がそう』


そう言うとシンはあたりに誰もいないことを確認し、男の後ろに音もなく近づいた。


「・・・待て」


深也は男に静かに声をかける。


「だ、だれだ!」


男の声はいきなり現れた深也に驚いたのか声が震えていた。


「・・・俺は影。闇に潜み妖を狩るもの」

「か、影?」


シンはゆっくりと男に歩み寄っていく。


「く、来るな!こっちに来るんじゃない!」


男は後退りをするがシンはゆっくりと近づく。


「少し痛いが我慢してくれ」


男の前まで行くと深也は右手を思いっきり振りかざし、男の胸に手を突っ込んだ。

深也の腕は男を貫いたわけではなく、男の胸にできた空間の穴ような場所に入り込んでいた。


「う・・・ぁ・・・」


男はその場に立ち尽くし、白目を向いている。


「・・・捕まえた。出て・・・来い!」


シンが勢いよく手を引っ張り出すと黒い塊のようなものがでてきた。


「ぎゃぁぁ!!・・・くそっ!何しやがる!」


黒い塊・・・妖は深也に掴まれたまま騒いでいる。


『レン!』

『りょーかい。記憶処理は任せたよ』

『わかった』


深也はレンに妖を渡し、気絶している男の元へ向かった。


『さてさて。君には聞きたいことがあるんだ〜』

「けっ!お前ら影に話すことなんかねぇよ」

『まぁまぁ、そう言わずに。質問に答えてくれないと━━殺すよ』

「・・・クククク。怖い怖い。だが脅されようが答えることは無いな」

『ふーん・・・・・・。ならいいや。さよなら』


ザシュッ


「ぎゃぁぁ!!!!」

「はぁ・・・」


レンは妖の体を切り裂き、不満げにため息をついた。


『終わったか?』

『はずれ。何も知らなかった。そっちは?』

『処理は済ませた。そのうち目が覚めるだろ』

『あーあ、なんの情報もなしかー』

『いきなり有益な情報は手に入らないだろ。この人を救えただけでもよかったじゃないか』

『・・・はいはい。わかったよ。・・・もう夜があけるね。ここで別れようか』

『そうだな』

『じゃ、またねー』


そう言うとレンは一瞬で走り去ってしまった。


『・・・帰るか』


家に戻ろうとしたところで倒れている男に振り返った。


「どうか幸せな人生を」


そう言うと深也は跳び去っていった。




少しして男は目を覚ました。


「あれ?俺こんな所でなにしてたんだっけ?うわ、もうこんな時間じゃないか!早く帰らないと」


男は何事も無かったかのように帰って行った。

こういうことを隠れてやってるのってかっこよくない?

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