エピローグ
最終話です!
あの後、俺は豪華な食事とたっぷりの睡眠で英気を養い、朝早くに町の西門まで来ていた。
「ふあ~~~~~~」
うん嘘です。
ほんとは二時間半しか寝て無いので、かなりの寝不足だ!
治療が終わったのが明け方。
半開きの眼でも、昇る朝日は眩しく目を背けるほどだ。
ここにはティン、レフ、ライ、剣の勇者もアルデラもいない。
俺は誰にも言わず、一人で旅立とうと思う。
王様からの次の指示が来る前に、トンズラしちまおうって魂胆だ。
正直、ティンとここまで来た旅は楽しかった。
アルデラはもちろん、レフもライも良い奴だ。
でも……。
「さて、今度はどこに行こうかな? まあ、どこに行っても俺の腕があれば何とか食いつなげるだろう?」
しんみりなりそうな心を払うため、わざと軽く言った独語。
なんだけど……。
「ええそうですね! カイルさんと私がいれば、どこでも行けますよ! それでも、魔王との決戦場での治療は勘弁ですけど」
「いやいや、私が戦い、ティンの聖域でカイル殿の治癒を受けれられれば、私たちは最強だと思わないか?」
「「お姉様に同意」」
いつの間にか、一人だった俺の周りに、アルデラ、ティン、レフとライがいた。
「あの……………………。君たちどこからで出てきた!」
しんみりしてた俺が悪いのか?
こいつらの気配が全くなかったんだけど!
「いや、カイル殿のことだから、きっと次に助けを求める地へ行くと思って、待っていたのだ」
「いやいや、いつから待ってたの?」
「ん? 今から二時間前からかな?」
「うん。そんな事してんなら、休んで! せっかく俺が腕をつなげたんだから! しっかり休んで!」
ツッコむ俺に彼女はニコリと笑い、治ったばかりの右手を差し出す。
「そうだ! 改めてお礼も言いたかったんだ!」
そんな彼女は、治ったばかりの右手を俺に差し出し、
「ありがとう。君のおかげでこの腕……私の夢は潰えなかった」
ニコリとほほ笑むアルデラに、
「ああ。助かってくれてありがとう」
俺は笑って握り返した。
そして、
「私は君に救われた。だから君に恩を返す責務がある!」
「いやいや、それは俺が好きでやったことで、アルデラに恩を売った訳じゃない!」
彼女には、彼女の夢を追って欲しいと思っただけでだと言ったつもりなのだが、
「ふふふ。分かってるつもりだよ。でも、私がそうしたい。それが私の夢の近道だと思ってしまったんだ。だから……」
「ちょ!ちょっとアルデラお姉さま! なんか凄くいい感じですけど、駄目ですよ! カイルさんはこれからの旅で、頼りになる聖女と恋に落ちるんですから!」
「え? 頼りになる聖女ってどこ? 誰? これから出会うのか?」
「むきぃ! なんで素の顔でそんなこと言えるんですかね! 私ですよ! せ・い・じょは私です!」
「えええ? お前と恋に落ちるの? 俺が?」
「なんでそんなに嫌そうなんですか! カイルさん、いったん落ち着いて!」
「いや、お前がな!」
「ぷっ……ぷはははは!」
俺たちのやり取りに、たまらずといった感じでアルデラが笑いだす。
レフもライも苦笑している。
しかも良く見れば皆、俺と同等かそれ以上の旅支度。
彼女らの目が言ってる。
『もちろん一緒に行く!』と……。
「はあ……。言っとくけど、俺は好き勝手に移動するからな! ついて来るなら文句言うなよ!」
俺はそれだけ言うと西の門から外に出る。
それなりにカッコウ付けたつもりなのだが……。
「あ! アルデラさん知ってました! 魔王城の近くにある東の町は魔物の襲撃で、怪我人が多く出ていて治癒術師が足りないんですって!」
ニマニマと俺を見るティン。
それに被せるように、
「なに! それは大変だ! すぐにでも行きたい! けれども……」
ちらちらと、視線を感じる。
「うん君たち。俺に付いてくるどころか、俺の行く方向も町も決定してるよね?」
無駄だと思いつつ叫んだ。
そして、俺は諦める。
「はあ………………。よし、それじゃ、東の町に向おうか」
「「「「はい!」」」」
背後の声を諦め顔で聴きつつ、でも、なんだか暖かく感じる背中に、苦笑したまま東の町へと歩み出した。
<了>
長い間、お読みいただきありがとうございます。
皆様の応援のおかげで、エタらず一応の完結まで辿りつけました。
また、ふらふらと書き続ける予定なので、どこかで見かけたら
応援よろしくおねがいします。




