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半径三〇センチぐらいの最強勇者  作者: 岸根 紅華
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作者体調不良のため、本日は予約投稿とさせていただきます。

インフルじゃないといいな・・・・・・。

「動ける者から配置に着け! コロリが治ったからって無理はしなくていい。兵力は十分回復したからな!」


 あの場をなんとかうやむやにした俺が広場に付くと、軽口を叩きながらも爽やかに笑顔を振りまき、味方の士気を上げるクレインがいた。


 真面目な話、こいつ、なんか一番勇者っぽくって苦手なんですけど?

 そんな思いで見つめる俺の視線に奴が気付き、にこやかに近付いて来るクレイン。


「やあカイル君。君の治療のおかげで、戦力が八割がた回復したよ。ありがとう!」


 爽やかすぎる顔で手を差し出してくる。

 その態度は、まさに光に愛された、おとぎ話にも出てきそうな完璧な勇者。

 もしくはアーシャの治療が上手くいき、手のひらを返したように懐く犬のようにも見えた。


「ああ……」


 だがそんなキラキラした目の勇者を、元村人でひねくれ者の俺は直視することなど出来ず、適当な言葉で視線を逸らす。


「城壁を補強しろ!」

「近隣の村人も、食料も、出来るだけ運び込め!」

 

 逸らした視線の先では、兵も町民も無く、皆生き残るために動き回っていた。

 やはりこの広場は人の流れの中心のようだ。

 

「なあ、剣の勇者さんよ、ここに治療所を設置する許可をくれないか?」


 握手の代わりに提案したのは、コレラの時とほぼ同じ位置に治療所の許可をもらう言葉だった。



「よし、このおっさんの腹は直した。次は……はあ? 突き指だぁ? そんなもん後だ! こっちには重症の患者を連れて来い!」


 剣の勇者から許可を貰い、治療所を設置すると同時に、魔物の攻撃が始まった。

 

 それからいくらもしないうちに、この医療所には冒険者や兵士の列が出来た。

 

「せ、せんせ! 腹が……おでの腹が……」

「大丈夫。腸ってのは押し込めば入る! 他に傷は無いな。よし洗浄! 治癒治癒……ほら治った!」


 下腹部を切られ、腸がはみ出していた冒険者を、俺は乱暴に治療。


「おお! ありがとうセンセ! ほんじゃ行ってくるわ!」

「ああ、もうここには戻って来るなよ!」


 そしてさっきまで鼻水流してた彼は戦場へ戻っていった。

 

『傷を癒した者を、再び戦場に送り出す』


 もしかしたら俺は、治癒術師としては間違ってるのかもしれない。

 でも、

 それでも……。


「カイルさん! 重症の兵士さんが二。中傷冒険者さんが三です!」

「重傷者の二人をベッドに、同時に治療する」


 兵士や冒険者が戦ってくれてるうちは、一般の人に被害が出ない。

 だから俺は、これが間違っていたとしても、治療を続ける!


 そう心に決めた途端。


「西の門が破られた! 魔物が雪崩れ込んでくるぞ!」


 頭を抱えたいほどの事態に陥っていた。



「カイルさん、魔物! 魔物が来ますよ! どうしましょう?」


 手伝ってくれるシスターと、治療を待つ患者の心を代弁するようにティンが口を開いた。

 怖いのは分かる。

 俺だって本当は逃げ出したい。

 でも、


 俺が治さなきゃ、今にも死んでしまいそうな患者を見捨てて、どこに逃げる?


 答えは簡単だった。


 逃げてもどうしょうも無いなら、俺は逃げずに治療を続ける!


「ティン! 今すぐここに結界を張れ! 魔物の攻撃を防げる出来るだけ大きいやつだ!」

「は、はい! 聖域《絶対領域》!」


 俺の言葉に、ほぼ反射的に聖域を展開するティン。

 さすがは聖女候補!

 っと褒めると調子に乗るから言わないが、今いる患者をカバーできる広さだ。


「よし、それと逃げ込んでくる人や患者のために、人が通れるぐらい聖域の弱い場所は作っとけ!」

「ええ! そんな精密な魔力コントロール。物凄く疲れ……」

「良いからやれ!」

「はいい!」


 彼女の愚痴を遮るように、少々荒っぽい口調で叫ぶ。

 

「ぶぅぅぅぅぅ! 分かりました!」


 渋々といった感じで魔力操作に集中するティン。

 後でほんの少しだけ労ってやろうと思う。


「さあ、これから患者がどんどん来るぞ! 今のうち俺とティン以外は、交替で休んでくれ!」

「ええええ! 私は休憩なしですか!」


 ティンには申し訳ないが、彼女の非難の声はスルー。

 なぜなら、これから俺は経験した事のないほどの患者を治療するのだから……。

最後までお読みいただきありがとうございます。

今後ともブクマ、評価よろしくお願いします!


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