13:閑話 メイドたちの情事 ナオ視線
「あ、そう。でも俺、もう眠いから、二人になんかしようなんて思わないから、頃合いを見計らって勝手に(自室に戻って)寝てくれ!」
そう言って私たちを無視し、疲れ切った顔でベッドの上で毛布をかぶる目標。
おかしい。
私たちのこの姿を見て、無視できる男は不能か同性愛者だ。
もしかしたら伝説級で聞いた事のある、『好きな人としかしない』なんて言い張る人種なのか?
いやいやそんなことは無い。
むしろ男の人って死ぬほど疲れ切っていた方が、種の保存のためにいたそうとするはずだ。
なのに…………。
「あの……ナオ。この男、私たちを前に、完全に寝に入っているのですが……」
そう。
あろうことかこの男は、エロッっぽい私たちを完全に無視してお眠りやがったのです!
「そ、そうねユナ。この男、私たちに何もしないで、気持ちよさそうに毛布に包まって寝息を立ててるわね……」
きっと今の私はユナと同じく、青筋立ちまくりの顔をしてるのでしょう。
当たり前なのです!
私とユナは、この町の色町では最強で最狂に、男を落とす娼婦なのです!
私たちと一夜を共にするために、貴族ですら土下座するのに……。
スヤスヤ眠る彼を見て、苛立ち以外のなにを思えばいいのだろう。
「……よし、とりあえず、既成事実だけは作りましょう!」
別に相手が、本当の意味で寝ててもいいのだ。
それでもヤルことはやれる。
私たちにはその手練手管がある。
まあ、物凄く納得はいかないのだが、私たちもプロとしての矜持がある。
二人で無言で頷き合うと、彼の眠るベッドへ向かう。
そして彼のかぶる、毛布を引っぺがすと……。
「むにゃ……よしこれでもう大丈夫だ……次……」
彼の寝言が聞こえた。
眉間にシワを寄せ、難しい問題にぶち当たったかのように唸ったかと思うと、最後には満面の笑みを浮かべる。
それからしばらく。
ホントは起きてるのでは? っと思えるほど、彼の表情はめまぐるしく変わる。
そして最後の『もう大丈夫』と言う寝言のときには、必ず笑みを浮かべた。
その笑顔は、私たちがいつも見るような性欲まみれの好色な顔ではなく、まるで母親に褒められた様な、屈託ない子供の笑顔だった。
「「…………」」
それからしばらく、満足そうで幸せそうな寝顔を見逃すまいと、ジッと見つめて動けない私とユナ。
なぜだろう?
母性でも目覚めたのか? 彼の顔を、もう少し眺めていたいと思ってしまう。
「ナオ……私、今回の仕事…………。無報酬で良いかなって思っちゃったんだけど?」
人の心に機敏なユナが眉を下げて、まるでおねだりするように話しかけてきた。
その顔は彼女の得意技ではあるのだが、今回はまるで素のようだ。
そして私も、
「私も今、そう言おうと思った所。こんな笑顔見せられちゃ、正直、やる気も失せちゃうわよね。でも、せめて、私たちのプライドを傷つけたお礼は、ある程度しないとね」
「ええ。それぐらいはさせてもらわないとね」
私たちはニッコリ微笑み合うと、音を立てずに彼を挟みこむようにベッドに潜り込む。
「ちょっと寒いわよね?」
「そうね、ならもっと身を寄せ合わなければね?」
そして私とユナは彼の腕を取りピタリッと身を寄せまぶたを閉じ、彼が目覚めた時の驚き戸惑う顔を想像しながら、久しぶりに静かに夢の中へと落ちていった。
最後までお読みいただきありがとうございます!
もうすぐラストバトルです。
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