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済みません、キリが良いので本日短めです。
「あ、あれ? わ、私昨日、『添い寝しましょうか?』って聞いたら、『邪魔!』って頭ぶたれた気がするんですが?」
「私は寝付くまで護衛を兼ねて一緒にいようの、『ね』と言っただけで『緊張するから一人で寝ます』っと走り去っていかれたのだが?」
ティンとアルデラ。
二人とも固まったままの笑みのままで、でも、全く感情のこもってない瞳で俺を見ていた。
背筋がゾッとした。
なんて生易しいものじゃない。
二人の視線は、少しでも動いたらブツ切りにされると思うほど研ぎ澄まされていた。
「う、うん。二人とも、とにかく俺の話を聞こうか? 話を聞く余裕……あるよね?」
懇願に近い俺の視線を、
「ええ? カイルさん、なんで怯えってるんですか? まるで奥さんに浮気が見つかって、アレをちょん切られるかと怯える、浮気旦那みたいですよ?」
瞳孔が開いたままの、ティンの笑顔が恐ろしく、
「何を言ってるんだティンティン。ちょん切るだなんてはした無い……。ただ理性も無く己のタネを撒き散らそうとする駄犬は……去勢するしかないだろうがね!!」
決意に満ちたアルデラの瞳は、それはもう魔王城での決戦のような覚悟を感じられた。
どうしよう?
俺と、まだ未使用な俺の分身に、消滅以外の未来が見えない。
頬を伝う冷たい汗。
絶体絶命のピンチに、何か逃げ道が無いかと思考を巡らせる俺に、
「ち、違います! こ、これは、私たちが勝手にしたことで……」
「そ、そうです! 私たちがカイル様の優しさに……つい……」
俺を庇う様に立ちはだかるナオとユナ。
これが着崩したきわどいメイド服じゃなきゃ、もう少し説得力があったかもしれない。
だが、
彼女たちの献身的に俺を庇おうとする姿は、完全に逆効果だった。
「へえ。勝手に……」
「ほう。優しさに……つい……」
にこやかにほほ笑む羅刹がいた!
「うん。とりあえず落ち着いて話を……」
俺の頭が高速で回転し、良い言い訳を捻り出そうとしたその時だった。
「敵襲! 魔物が大軍で押し寄せて来たぞ!」
幸か不幸か俺たちの知らない所で、この場をうやむやに出来るだけの出来事が起こっていた。
最後までお読みいただきありがとうございます。
ブクマ七〇越えたので、今夜中にもう一話投稿します。




