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「「お帰りなさいませご主人様!」」
通された部屋には、なぜか物凄く布地が薄くて少ないメイドっぽい少女が二人、俺を笑顔で出迎えた。
「うん? 部屋を間違えたかな? それに君たち。春先とは言え夜は冷える。その薄着は体によろしくないと思うんだが?」
「はい。私はナオ。彼女はユナと申します」
俺の苦言を完全にスルーし、深々と頭を下げるナオとユナ。
ツッコみたい気持ちは山ほどあるのだが、俺は彼女たちの姿に声が出せない。
メイドっぽい服装とは言った。
確かに姿形は俺の知ってるメイドの姿なのだが、明らかにその服の寸法が彼女たちに合ってない。
言うなれば、洗濯して縮んだメイド服か、間違って子供用メイド服(子供用のメイド服があるかは不明)を着てしまったのかと思うほどだ。
「えっと……何を考えているかは良く分かりませんが、この衣装はサイズを間違った訳でもなく、その……そう言うこと用の衣装と言うか……」
ポリポリと頬をかき、良く分からないと言う割には、さらりと俺の思考を読むミニスカメイド。
いや、ミニスカだけじゃ無く、上着も下から見れば色々と不味いものが見えそうなほどきわどい。
いやホントに、上半身の下着はどうした?
まさか、下の方も……。
そこまで考え俺はハッと我に戻り、己を取り戻すと疲れてあまり動かない頭をブンブンと振った。
「男って、死ぬような目に会ったり死ぬほど疲れたりすると、子孫を残そうとするって……本当なんだな……」
異世界の現代医学書に書かれている通り、俺の下半身は大変なことになっていた。
でも、それでも俺は、暴走しそうな俺の欲望を無理やり抑え込んだ。
だって、
「だ、大丈夫です。こう見えても私たちは、プ、プロです!」
「そうです! 私もユナも、その……本番の経験はないですが、カイル様が満足するよう頑張ります!」
なにがプロなんだか分からないが、経験もないと自白する少女二人が、真っ白な顔して覚悟を決めるように胸元で手を組む姿は、絶対プロじゃないと思うから。
いや本当に何のプロか分からないが。
(でも、町長《権力者》に言われて来たのなら、俺が無下に断ると彼女たちに責任が行きそうなんだよな……)
ぼんやりした頭で、そこまでは考えられた。
だが、そこまでだった。
俺の体と脳は完全に停止し、
「あ、そう。でも俺、もう眠いから、二人になんかしようなんて体力無いから、頃合いを見計らって勝手に(自室に戻って)寝てくれ!」
何とかそれだけ言って、俺はベッドに倒れ込んだ。
「ん? もう朝か?」
翌朝なのか?
俺は窓から漏れる光に、まだ重い目蓋を押し上げた。
「………………はあ?」
そして目前にある者に、焦点を合わせる。
「ん? んん? カイル様……」
そこには、いろんな意味でミニな姿のナオの寝顔。
「……うん。もしかして俺、まだ夢の中なのかな?」
なんて思い、夢よ覚めよと寝返りを打つと、
「すぴ~。ご主人さまぁ!」
幸せな夢でも見てるのか、頬を緩めたユナの寝顔。
「あれ? 俺、昨日、そのまま寝たよね? はっ! まさか、俺ってば無意識のうちに……」
何それ、俺ってば本能のまま動くと、そんな畜生だったの!!
そうじゃないと思いたい。
でも……。
たまらず俺はベッドから半身を起こした。
刹那。
むにゅん!
ぽよんっ!
体を起こす支えにした右腕に、例えようもない柔らかい感触と、左肩に信じられないぐらいの弾力を感じた。
それと同時に、掛けられていた幅広の毛布がめくれた。
マ…………マズイ。
彼女たちの安心しきった可愛い寝顔はともかく、きわどすぎる服装があちらこちらはだけていて……。
二人とも予想以上に、あそこやそこの肉好きが良くて……。
ある意味裸よりエロい……。
マズイことになったいた。
もし仮に、俺の記憶の無いとこで過ちがあったとすると彼女たちは……。
ぐるぐると答えの出ないことで頭を回転させ、せわしなく泳がす俺の視線が彼女たちの姿を確認して止まる。
はだけてきわどい衣装は、彼女たちの姿は俺が寝落ちする前のまま。
噂に聞くような、あんなことやこんなことがあったような気配無い……はず。
「よ、良かった。とりあえず間違いは無いよう……」
コンコン!
ホッと胸を撫で下ろした俺に、新たな試練。
「カイル殿! 疲れて寝ているかも知れぬが、少々確認したいことが……」
「カイルさん! 昨日は私が添い寝しなくてもちゃんと寝られまし……」
ノックしてから間髪入れずに扉を開ける、ティンとアルデラ。
「あ、君たち。扉はノックして、相手が答えたら開くのが礼儀だよ」
俺が叫ぶが、もう遅い。
扉を開けて顔を覗かせたのは、無邪気に笑うティンとアルデラ。
その二人の笑顔が、俺と左右に寝ている美女を見て、そのまま固まった……。
最後までお読みいただきありがとうございます!
同時連載中の『悪役令嬢? 婚約破棄? 何それ美味しいの? 私には弟の愛さえあればいいのです!』は、大変なことになっていますが、この作品は通常運航で参ります。
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