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やっほう! 目標のブクマ五〇超えました!
「サインどうしよう? カナンの血が止まらないよう!」
「とにかく傷口を押さえてろ! 魔物は俺が……ぐわ!」
レナの絶望に染まる声に一瞬意識を逸らした瞬間、オーガの棍棒に吹き飛ばされた。
吹き飛びながら俺は思う「こんなはずじゃなかった」っと。
『グラナダが魔物の大軍に囲まれた。至急援軍を乞う』
三日前。
その言葉を届けるために各地に出て行った騎士たちは、誰も帰ってこなかった。
グラナダの食料が底を尽きかけたころ、この地域でそこそこ名を馳せてる冒険者。
俺たち『疾風のサイン』に依頼が来た。
装飾品を付けた馬に乗る国の伝令より、職業柄隠密行動などもする俺たちに不安は無かった。
知恵の無い魔物たちを出し抜くことなんて、大したこと無い。
そう思ってたんだ。
だが、グラナダを囲む魔物たちはいつも俺たちが相手をしている魔物とはレベルが違っていた。
力を示せば逃げ去る様なゴブリンが、味方の連絡係が逃げるまで己の体を盾にするように沿い掛かってくる。
さらに、自分の体に刺さった剣をつかみ、味方の攻撃を促すことまでした。
俺たちは戦慄した。
魔物たちの動きはまるで、訓練された兵士のそれだからだ。
規律なんて知らない知性の低いゴブリンまで、鍛え抜かれた兵士のように自己犠牲も問わずに襲い掛かってくる。
俺は認識を新たにした。
有象無象の魔物の集団が、ただ単に襲って来たんじゃない。
これは人間と魔物の戦争なのだと。
だが意識を切り替え、近くの森に逃げ込んだ時にはもう遅かった。
なぜなら俺たちはすでに、四方からの殺気に囲まれていたのだから。
「背後からゴブリンの群れ、右も、左も、周りじゅう殺気だらけの敵だらけだよ!」
いつもの余裕が感じられないレナの声に、
「このまま森を突っ切る! 二人とも、息の続く限り走れ!」
これは不味いと今までの経験と勘……より先に本能が叫んだ。
何度となく窮地から脱した生を求める本能に従い、行く手を阻む魔物を切裂きながら走り出す。
「そこどけ!」
殺る気満々で襲ってくる魔物を、斬り、殴り、蹴り倒す。
カナンの射る矢がゴブリンの額に突き刺さり、レナの火球がオークを火だるまにした。
俺たちだって伊達にシルバーランクの冒険者じゃない。
低級の魔物なんか相手にならない。
だが、今回は状況が違った。
魔物の数も殺気も段違い。
当然のようにゴリゴリと削られる気力と体力。
そして、
俺たちの動きが鈍くなったのを見計らったように、魔物が攻勢に出た。
「きゃっ!」
すぐ後ろを走っていたカナンの悲鳴。
俺の横をすり抜けたゴブリンが、錆びた槍で彼女の脇腹を突き刺したのだ。
「カナン!」
悲痛なレナの叫び。
(もう駄目……)
「まだだ、まだおわっちゃいねぇ!」
折れそうな心を頭から振り払う。
まあ、殺気だった魔物に囲まれ、逃げられないってのが本当だけど。
「それでも仲間を見捨てて逃げて死ぬか、仲間を最後まで守って死ぬか。その差って俺の中じゃ大きいんだよね」
皮肉げに口角を吊り上げ、再び剣を構える。
「きやがれ魔物ども! 勇者になり損ねた疾風のサイン様が、一匹でも多く地獄の道連れにしてやる!」
最後まで、子供のころ憧れた勇者のようにあろうと、覚悟をきめた刹那。
「その意気は良し!」
魔物を切裂く白銀の刃。
現れたのは薄暗い森でも輝く、銀色の鎧に身を包む銀髪の美女。
彼女のやや古風な言い回しに、勝手に納得した。
「ああ。俺は戦乙女に認められ、天界に召されるんだ!」
戦乙女に認められた嬉しさ半分。
死ぬことへの恐怖半分で、呆然と彼女の踊る様な戦いぶりを見ていた俺に、
「あんた、なに呆けてんだ! 暇なら手伝え!」
いつのまにか現れたのは、どうにも冴えない、どこにでもいるような顔と服装の男。
『もしかして、戦乙女の付き人っぽい人かな?』
そんなことをぼんやり考えてる間に、彼は俺の腕をつかむとグイッと引き寄せ、襲い掛かって来る魔物の前に立たせた。
「彼女を助ける。だからお前はここで援護しろ!」
乱雑に投げ出される俺。
それでも、反射的に襲い掛かって来るオーガの一撃を躱し、脇腹に剣を突き刺す。
「そうだ! その調子で時間を稼いでくれ!」
その男は、一瞬だけ俺に笑みをこぼすと、カナンへと体を向けた。
どうやら天界に行くには、まだまだ修行が足りないらしい……。
目標ブクマ超えました!
嬉しいです!
今夜中にもう一話投稿します。
あと、目標数に到達しましたが、ブクマ、評価、常時募集中で~す!
よろしくお願いします。




