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半径三〇センチぐらいの最強勇者  作者: 岸根 紅華
36/54

ちょっと短めです。

「ティン! 防御壁展開! レフ、ライ、立ち止まった魔物から片付けろ! 魔物の意識がこちらに集中してる間にアルデラ、頭《大将》潰せ!」


「「「「了解!」」」」


 翌朝、なぜか俺は名も無い村の近くの平原で、ゴブリンの集団を殲滅するための戦闘指揮を取っていた。


「絶対防御!」


 ティンが指示通り透明な壁を作り出すと、ゴブリンどもが見えない壁に激突。

 

「てぃ!」

「やぁ!」


 透明な壁にぶつかり戸惑い、もしくは何もない所でうめき声を上げる仲間を見て、呆然とするゴブリンに投げナイフで止めを刺していくレフとライ。

 そして、


「はあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


 背後でさんざんゴブリンを焚き付けてたゴブリンジェネラルを、アルデラは一直線に向かい護衛もろとも一刀両断にした。


「これ、わざわざ指示する意味あるのか?」


 そう思えるほどの力技である。

 そもそもなんで指揮なんか取ってるかと言うと、俺が戦闘では役に立たずで他に出来ることが無いからだ。

 もちろん、指揮なんて初めてだ。

 でも、俺には女神から貰った異世界の本があった。

 まあ、戦闘に特化した彼女らには、一言えば一〇行動してくれるから俺の出番は……。


 言いたいことは山ほどあるが、それでも俺たちは順調にグラナダに向かっていた。

 多分、予定より二日遅れで今日の夕方には着くはずだ。

 もちろん。


「やったなカイル殿! 三つ目の魔物の群れを倒したぞ!」


 今日、これ以上の魔物が現れなければだが……。

 当たり前だろうがグラナダに近付くにつれ、魔物に出会う率が増えていく。


 確かに俺は、魔物の排除も容認したが……これって多くない?

 もしや、あの変装した魔物が言う通り、グラナダはもう陥落したって言われた方が納得いくレベルの多さである。


 アルデラとレフとライの戦闘力、それにティンの防御魔法でなんとか大きな怪我などは無いのだが……。


「カイルさ~ん! もうわらひ、魔力が~~~」


 ヘロヘロとその場に座り込むティン。


「そうだな、ひと段落着いたから、少し早いが昼食にしようか」


 剣に付いた血糊を丁寧に布で拭いながら、アルデラが呟けば、


「「はい、食事の準備に取り掛かります」」


 レフとライが軽快に動き出す。


「こいつら、戦闘で疲れてるだろうに……ブレ無いな」


 しみじみ呟く俺の前で、彼女たちがサクサクと食事の準備を始めた。


「この森を抜ければグラナダに着くんだな?」

「ああ。大きな森では無いので、一、二時間で抜けられるだろ」


 アルデラがにこやかに答える。

 なんとか予定通り? に目的地に着きそうだ。

 そう安堵した俺の気持ちは、森に入って一時間で裏切られた。


「レナ。カナンを連れて逃げろ!」

「無理だよサイン! カナンこんなにいっぱい血が出ちゃって、動かしたら死んじゃうよ!」

「くそ! いったい、どうしたらいいんだよ!」

「誰か、誰か助けて!」


 森に入ってすぐに血の匂いがした。

 嫌な予感を覚えつつも先に進むと匂いは濃くなり、先ほどの悲鳴に近い声が耳朶を打った。


 様子を見るため、木陰に隠れ身を潜める俺に、


「……カイル殿」


 同じく息をひそめるアルデラの喜々とした声。


「分かってる。レフ、ライ、魔物の背後から強襲。その後、負傷者から遠ざけるように逃げてくれ、追って来る魔物の背後にアルデラが着いたら反撃。挟撃して全滅させろ」

「分かった」

「了解した」


 レフとライの姿が森に消え、アルデラが無言で準備を始める。


「ティン。彼女らが魔物を引きつけてる間に彼らを助ける。治療を初めたら範囲は狭くていいから多少の攻撃じゃびくともしない結界を張ってくれ」

「分かりました!」


 ビッと伸ばした指先を額に当てるティン。

 

『なぜだろう? このメンバーと一緒だと、厄介事が寄ってくる気がする』


 そんな思いを口にしなかった俺を、誰か褒めてくれるととても嬉しい。

最後までお読みいただきありがとうございます!

そしてついに、初感想来ました!

一〇数回読み返してから返事をしたいと思います。

引き続きブクマ、評価、感想募集してます!

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