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なにぃぃぃぃぃぃぃ! ブクマと評価が増えてるだとぉぉぉぉ!
「で、なんで勇者様がこんなに疲労困憊で、ここまで戻ってきたわけ?」
ティンが張った結界の中で治療を続けながら、俺は彼女らの状況を聞く。
俺以外の勇者は蝶よ花よと育てられていたはずだ。
なのになぜ彼女は、こんなにくたびれている?
町の噂話をまとめ、いくつかの理由は考えているのだが、
「ああ。それは王がいきなり方針を変更されてな」
どうやら一番ろくでもない理由な気がしてきた。
彼女たちがこうなった理由を要約すると……。
「つまり、王の我侭で他国の勇者より早く魔王を倒せと、そのためにこの国の勇者たちを競わし戦わしてると」
「まあ、だいたいそんな感じだ」
俺のなんか言いたそうな顔に、彼女淡々と頷いた。
彼女は金や名誉などの下賤な理由で動かない。
勝手に理想像を作って悪いが、ここまで酷い疲労がそんな理由だったのが、なんか癪に障った。
「ふ~ん。で、アルデラさんはなにを鼻にぶら下げられて競っておいでで? お金? それとも名誉ですか?」
「「きさま!」」
不満顔をしつつも、今まで静かだったレフとライがいきり立つ。
高貴で崇高な心の持ち主だと思っていた彼女が、金とか名誉とか、下賤な理由でこんなに疲労困憊、傷だらけだと思ったら、意図せず嫌味な言い回しになってしまった。
そんな俺に彼女は、
「ふふふ。私だって聖人君主ではないのだから、欲はあるよ」
見透かすように微笑んだ。
人の生き方を決めつけるのは、自分でも良くないとは思ってる。
でも、彼女には俺の、ゆくゆくは人類の目標であって欲しかったのだ。
そんな自分勝手な俺の想像に、
「ゲスなきさまは、何か勘違いしているみたいだが、お姉様は下賤な理由で頑張っているのではない」
「クズなきさまは、何か勘違いしているみたいだが、お姉様は卑しい理由で頑張っているのではない」
「そうですよカイルさん! アルデラ姉様が、カイルさんのように俗世に紛れてる訳ないじゃないですか!」
「ねえ、なんでお前までアルデラさん側なの? しかも何気に俺をディスってますよね?」
気が付けば、物凄い勢いでティンがアルデラに懐いてた。
しかも、レフとライと同じお姉様呼びしてだ。
さすが光りの勇者。
カリスマ感がハンパない。
「…………」
四面楚歌状態で、無言で続きを促す俺に、アルデラは皮肉げな笑みを浮かべるばかりで何も言おうとしない。
代りに口を開いたのは双子だった。
「きさまは知っているのか? お姉様の住む領地が辺境のアンデルスだということを」
「きさまは知っているのか? その領地が魔の森が誓うにあるため、作物の育たぬ不毛な土地だということを」
アンデルス。
俺はその名を聞いた途端に、ハッとアルデラに視線を向ける。
「ああ、数年前、私がらみで父上がちょっと王族といざこざを起こしてな……」
俺の視線に、バツが悪そうに頬を掻くアルデラ。
「だから、私が少しでも役に立てばと……」
「お姉様は魔王城に一番乗りすれば、国境の守りを固めてくれと願った」
「お姉様は魔王城に一番乗りすれば、飢えに苦しむ民の救済を願った」
「「きさまは、これを卑しい願いと言うのか⁉」」
レフとライのが睨み、アルデラは苦笑する。
知らなかったとはいえ、俺の態度は彼女たちを不快にさせただろう。
俺の頭の中の詫びるリストは、遥か東の小島に言い伝えられる『Do・Ge・Za』なる最上級の詫び方一択だったが、それはなんだが彼女の苦笑を誘うだけだと思った。
だから俺は、
「……なんか、悪かった。本当に、真摯にそう思うので、この魔王騒ぎが終わったら、無料で一ヶ月、いや、二ヶ月。あんたの領地で民の治療を約束する」
真正面から彼女の顔を見れない俺が、そう言い放つと。
「え、ええ! そ、それは本当か! あ、ああ。別にさっきの言葉は本当だから気にしてないのだが、それは願っても無いことだ。本当に君の時間が取れる時で良い。ぜひうちの民を見てやってくれ!」
直視して無くて良かった。
そう思えるほど、目の端に映る彼女の笑顔はキラキラしていた。
「うん。我が領地に来てくれたら……まず脚気に苦しむオン爺に……いや、腰が痛いと言っていたババヤーガの方が……いやいや、ここはやはり孤児の子供たちの健康診断を……」
すでにアルデラとレフとライの治療は済んでいるのだが……。
それから彼女の嬉しそうな独語は、一時間をゆうに超えた。
それに対し、普通は鬱陶しくて、おざなりな返事しかしない俺は、
「はいもちろん。気力の続く限り治療しますよ!」
にこやかに笑う彼女の顔に、俺がこれ以外の言葉の何を言えるだろう?
「うん。それではさっさと魔王とやらを退治しよう。そして、王国からの救援物資と君に民の健康を管理してもらい、我が領地は安泰だ!」
とても、とても眩しい彼女の夢に、俺は口をはさめない。
むしろ彼女の夢に加わっているのが、なぜかとても誇らしく思う自分がいる。
そんな、何ともユルユルな時の流れを切り裂く、大地を蹴る馬蹄の音と、それに乗る兵士の悲鳴にも近い絶叫が響いた。
「城塞都市グラナダが、魔物の群れに襲われ落ちた! 逃げてくる人々を追って魔物がこの町に近付いて来てるぞ! 早く逃げろ!」
半狂乱の馬をなんとか操る兵士が、町の中央市場に駆け込んできた。
賑やかな町の喧騒が、悲鳴に変わった瞬間だった。
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