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改めまして、あけましておめでとうございます!
今年も(今年こそは?)良い年でありますように!
「…………さて、そろそろかな?」
月の明りも流れる雲に隠された真夜中。
懐かしいとも嫌なともつかない夢から目覚め、ぼんやりと覚醒する俺。
目覚めはあまり良くないが、悪気もない。
俺はむくりとベッドから体を起こすと、明りも持たずに部屋を出て隣の部屋をノックする。
「…………」
返事がないのでもう一回。
「はあ。やっぱ寝てんのか…………!!」
そう思った瞬間、カチャリと少々控えめな音を立て扉が開いた。
「遅いじゃないですかカイルさん。そろそろ起こしに行こうかと思ってたとこですよ!」
寝ていたわけじゃないらしい。
トーンは落としているが元気な声だ。
「さあ行きましょう!」
ビシリッと明後日の方向に指を向けるティンティン。
どうやら準備万端のようだ。
俺たちは無言で頷き合い、ひっそりと騎士殿の泊まる部屋へと向かう。
「開錠」
扉の前で、開錠の呪文を唱える。
俺の半径三〇センチの魔法領域の中で、違和感なく使える魔法の一つだ。
女神は俺に義賊にでもなれと言いたいのか?
ガチャッ。
天に向かって問い質しているうちに、扉の鍵が難なく開いた。
「…………カイルさん。天下の大盗賊の話、聞いたことあります?」
隣のティンがポツリッと呟いた。
どうやら似たようなことを考えていたらしい。
だが俺は、あえてその言葉をスルーしてドアノブに手を掛けた。
キイィィ。
わずかな音を立てて扉が開いた。
「カイルさん。何も見えません!」
なんのてらいも無く、堂々と言い放つティンティン。
当然と言えば当然。
部屋の中に灯りは無く、廊下にある蝋燭のわずかな光だけが、扉からわずかに入っているだけなのだ。
「ああそうだった。暗視」
俺は指先を彼女の額に向け、暗視の魔法を掛ける。
「うわぁぁぁぁ。こんな暗闇でも良く見えますぅ!」
彼女の感嘆の声に、自分がちょっと使える魔法使いっぽ思えて嬉しい。
「……おしゃべりはここまでだ」
「はい!」
元気よく、しかしこそこそと準備を始めるティン。
その間に俺は部屋の中を確認。
酒を飲んで、ベッドの上で泥酔している騎士殿。
俺の部屋と大差ない作りだが、床には酒瓶やら何かの食べ残しやらが散乱し、雰囲気的には俺の部屋の方が広く感じた。
もしかして、酒乱と言うやつなのだろうか?
もう、態度や言葉使いも含め、『キング・オブ・ザME・I・WA・KU』を名乗っても良いんじゃないかこのおっさん。
そんな旗でも作ってよあろうかと思うが、今は時間が無い。
「さて、起きるなよ」
床に散らばるゴミを避けながら、俺は高イビキのするベットに到着。
仰向けに寝ている彼を、そっとうつ伏せにしようとした。
刹那。
「ぐろぉぉぉぉ。お、俺は偉いんらろ!」
勝手なことをほざきながら、勝手にうつ伏せになる騎士殿。
極力避けたい、おっさんとの接触を減らしてくれてありがとう。
俺は心の中でお礼を言い、ソッと指先をおっさんの首筋に当て、
「麻痺」
背骨に沿って通る神経に麻痺の呪文を唱えた。
知っている人も多いと思うが、人間は脳から神経に指示を出し四肢を動かす。
だからもし、その指示する神経が麻痺してしまったらどうなる?
俺はニヤリと口角を吊り上げ、
(後は任せた!)
そのまま手振りだけでティンに丸投げ、俺は部屋の片隅に姿を消した。
「痛い、いたい、イタイ……」
金色の髪を茶色のカツラで覆い、恨めしそうな声を上げるティン。
「んあ⁉ 誰だ? もしかしてどこぞの町娘が、夜這いにでも来たのか?」
「ずいぶん希望に満ちた願望だなおい!」
彼の願望に思わずツッコんでしまうが。
大丈夫。
彼には気付かないどころか、体を起こしもしないで手首をクイクイと動かし手招きをした。
「ほんと、なんですかこの人! 予想を遥かに超えてダメ人間なんですけど!」
やや声だかに愚痴る彼女に俺はウンウンと同意いするが、そのまま続行するよう手振りで促す。
「恨めしや……。馬に蹴られなければ、私は夫と息子と幸せに暮らせていたのに……」
ティンが、さらに声を高ぶらせてベッドに眠る騎士殿の頬をソッと撫でた。
「ひっ! なんて冷たい……。お、お前は誰だ」
やっとこの異常な事態に気付いたのか。
騎士殿がベッドから飛び起き…………ようとした。
が、
「ふっふがぁぁぁぁぁぁ!」
頭を起こす勢いでバランスを崩し、ドスンッと床に転がり込む。
そこに追い打ちを掛けるように、
「ああ。ああ。なぜ私は死んでしまったの? 私は何も悪いことなどしていないのに!」
感極まったティンティンが胸に手を当て、叫びながら騎士殿に視線を向ける。
「お、お前、本当に、誰だ?」
昼間のことを忘れてしまったのか?
それとも本当に些細なことだと、思ってるのか?
己の馬で怪我をさせた国民を、舐めてるのか?
「あ、あなた! 昼間、あなたの馬が蹴った人を忘れたって言うんですか!」
同じことを思ったのだろう。
ティンが騎士殿の胸ぐらをつかみ、グワングワンと揺さぶる。
「ぐはっ! なにをしているのだ! 私はこの国の近衛騎士……」
「そんなの関係あるか! いや、関係大有りだ! あんたは、近衛騎士であるあんたは、最も守るべき国民を殺したんですよ! あんたはそれが普通で、たいしたことじゃないって言うんですか!」
せっかく念入りに打ち合わせをしたのに、彼女は自分の心の内を吐露した。
が、
「何を言っている! 国民は王のために存在する! だから王のために働く俺はなにをしても……」
「ふざけんな!」
バキッ!
止める間もなく、いや、止めるつもりもないが、彼女の拳は騎士殿の頬を殴っていた。
「ふざけんな。ふざけんな。ふざけんな! 私たちはあんたらの家畜じゃない!」
この瞬間。
「あんた、呪われてるから、この護符買え」作戦は終了した。
だがきっと、彼女に悔いはないはずだ。
もちろん俺にもだ。
だから次の作戦に移ることにした。
「おい!」
小声で合図を送ると、我を忘れていた彼女はハッとなりこちらに視線を向けた。
クィッと顎で促すと、作戦が失敗したことを悟ったのだろう。
彼女は悔しそうに顔を歪めながらも、忍び足で部屋を出た。
「おい、誰かいるのか⁉ このくせも……が!!」
俺はがなり散らすおっさんに向け、足元に転がる酒瓶を放り投げる。
酒瓶は放物線を描いて、トドのように横たわるおっさんの頭部を直撃。
よし。
これで次の作戦の第一段階は終了した。
俺は無理やりそう思い込むことにし、暗い部屋からそっと退出した。
最後までお読みいただきありがとうございます!
作者は明日、初詣に行く予定です・・・・・・。
賽銭とブクマや評価をかけたいのですが、なにも思いつきません。
なにで、賽銭は置いといて、ブクマ、評価、あと感想もお願いします。




