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半径三〇センチぐらいの最強勇者  作者: 岸根 紅華
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年末年始は更新が危ういので、予約投稿とさせていただきます。

「ふう。今日も一日、なんとかなったな」


 俺はひとりごち、宿屋のベッドにダイブ。

 色々と体に溜まった物を吐き出すように、大きくため息をついた。


 疲れた俺の体を包み込むように受け止めるベッドは、もはや寝具を越え神具と呼んでも過言ではないかもしれない。


 騎士の乗る馬に蹴られて重傷だったご婦人を救った俺は、町民たちの好意でこの町一番の宿屋に招待された。

 別に俺はギドの宿屋で良かったのだが、宿代はタダと言われ、料理も腕によりを掛けるからと押し切られた。

 確かに夕食は、俺が叫び、ティンティンが泣き崩れるほど美味しかったし、一番広い風呂に、一番に入れてもらったりもした。


 実は俺の救ったご婦人。

 この町の有力者の奥方だったらしい。

 しかも、次期町長だと言われる仁徳者。

 まさに『情けは人の為ならず』である。


「ええい! なんだこの町は! 食事は不味いし、風呂も汚い。これがこの町の、精一杯の接待か!」


 そんな俺の気分を害するように、隣の部屋から悪態をつく声が聞こえる。

 ちなみに騎士様の食べたのは、俺たちが食べた食材のあまりを、「補給が乏しくて」なんて言って食中毒にならない程度煮込み、適当に味付けしたものだとか……。


 町民の怒りのほどが伺える食事となっていた。

 

「これが王宮騎士に対する態度なのか!!」

 

 騎士様の腹の虫は治まらないようだ。


 ここで疑問が浮かぶ。

 先を急いでいたはずの騎士様が、なぜこの町に宿泊しているのか?

 彼らの回答は単純。

 次の町まで行くのに、夜になってしまうからだそうだ。


「夜に魔物に襲われて、勇者様に届ける大事な手紙を落したら一大事だ」

 

 とか言って、町長に宿の手配をさせたらしい。


 先を急いでいるとか言ってたのは誰だったっけ?


 それに、それを知った町民の怒りがどれほどだったろうか?


 そんなこんなで俺の止まる宿に騎士様がいた。

 騎士様は二階を貸し切り俺たちは一階ではあるが、これって運命?

 嘘です。

 もちろんそんなことは無く、これは俺が望んだこと。

 なぜなら俺はまだ、あのご婦人の、治療の代金を貰ってないからだ。


『被害者が負った怪我の医療費は、加害者が全額払うべき!』


 それが俺の持論であり格言だ。


 だ・か・ら。


 ご婦人の治療費は、怪我を負わせた者《騎士様》が払うべきと俺は判断した。

 

「は~い、カイルさん。ほぼほぼ準備完了で~す!」


 物凄く悪い笑みを浮かべる、元聖女候補の娘。


「いやいや、なんか今私、さらりと聖女候補から外された気がするんですけど気のせいですよね?」

「ああ、気のせい……じゃなけど」

 

 なんだか無駄に勘の良い、元聖女候補を軽く一蹴。

 

 とにかくこれで準備万端。

 後は治療費を貰うだけ。

 

 ご婦人に怪我をさせて、しかも急いでいるのだと言っておきながら何だかんだでこの町に一泊する、自称王宮騎士(笑)のおっさん。

 いい加減この町の住民が、おっさんの態度に怒り心頭だってことを分かって欲しい。


 まあ、俺は治療費を貰うだけで、彼らとは全く無関係。

 情報の共有も、連携も取ってはいない。

 そう言うことになっているのだ。


「さて、それじゃ時間まで休むとするか」

 まだ騒いでる騎士様の文句を聞き流し、俺はフカフカのベッドに体を沈めた。


早いものでもう年越し。

みなさんの今年はどうだったでしょうか?

良い人も、悪かった人も、来年は良い年でありますように!

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