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気が付けばもう年末。
でも、できる限り更新は続けます!
「これより治療を開始する!」
俺の独語が結界内に響いた。
別に宣言しなくても良い事を口にする。
なぜなら口にしなきゃ、逃げ出したくなるからだ。
何を今さら言ってんだ?
なんて思うかも知れないが、実は俺、さっさと家に帰りたいと思っている。
俺の手に、人の命が掛かっているんだぞ。
逃げ出したいと思うのは、普通だろ?
だって、ちょっと前まで、俺はただの村人だったんだから……。
でも、泣き言を言ってもどうにもならない。
だからこれは、俺の儀式。
ここから逃げないための宣言なのだ。
「麻痺、麻痺、麻痺、麻痺、麻痺、麻痺、麻痺」
続いて、
「氷球、氷球、氷球、氷球、氷球、氷球」
俺は頭部の傷口を重点的に麻痺の魔法を連続で掛け、氷の魔法も連続で唱えて出血を止めた。
これで患者は痛みを感じないし、出血で患部が見えないことは無いはずだ。
指先数十センチの魔法は戦闘には不向きだが、場所が限定されていればこんなに使える魔法は無い。
「魔剣!」
消毒済ませた俺は、指先に一〇センチほどの刀身を具現化した。
魔剣と言ったがこの刀身。
実は魔王でも倒せると言われる伝説の剣だったりするのだが…………。
俺が作り出せる刀身は一〇センチ。
魔王の体を貫くにはまったく足りない。
だがこの魔剣。
大根だろうが煉瓦だろうが、スパスパ切れてしまう魔法の剣。
しかもこの刀身には魔を払うばかりか滅菌作用もあり、治療にとっては非常に有意義な俺の治療具《剣》なのだ。
「頭部を切開」
頭蓋骨の厚みは平均して約八ミリ。
脳を傷つけないためには、この厚みを大幅に超えてはならない。
俺の魔剣は硬いはずの患者の頭蓋骨を、まるでバターのようにサクサク切っていき……。
「…………よし。あった」
予想通りの場所に結線を見つけた俺が、ポツリと呟きそのまま魔剣を患部に向けるが……。
「え? どれですか? 私にも見せて下さいよ!」
結界を張った後、暇だったのだろうティンティンが駆け寄って来て、
「え? 何これ? グロッ! きやぁぁぁぁ!」
ブシュッ! と頭に溜まっていた血が勢いよく噴き出る。
分かってた俺は、身を引いて避けるが、何も知らずに駆け寄ってきた彼女には、もちろんそれは……。
「うっ! うぷぷぷぷぷぷ!!」
突然の顔射(血)を受け、ふっと現状を把握した彼女は口元に手を当てた。
「バカお前、吐くなら結界から出てやれ! 雑菌が飛ぶ!」
「ええ! もしかして聖女(候補)である私を菌扱い!!」
驚愕しているが、人間の体には菌がいっぱい。
もちろん腹の中もだ。
そんなの、患者の頭掻っ捌いてる時にさせられないだろ?
旅の道中、彼女には口を酸っぱくするほど言ったはずなのだが。
「ううう! 酷いです! 女の子に優しく出来ない男の子はモテないんですよ!」
場違いに俺を責めるティンティン。
今すぐ殴りたいのだが、状況がそれを許さない。
俺は密かに心にダメージを受けつつ、彼女を一睨みして手当てを再開。
「縫合……。良し、治療完了」
なんとか無事に処置を完了したのだった。
いや~ブクマの効果はすごいですね。
おかげで寝違いが治りました。
もうどこも痛くはないですが、評価やブクマのツボを押してもらえると嬉しいです。




