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半径三〇センチぐらいの最強勇者  作者: 岸根 紅華
23/54

 翌朝。

 澄んだ空気に照りそそぐ朝日。

 誰もが認める旅立ちには絶好な天候の中。


 なんか、色んな面倒事に巻き込まれる前に、さっさと目的地に行きたいのだが……。


「カイルさん。もう旅立っちゃいます? ホントに旅立っちゃって良いんですか?」


 俺を試すようにニヤニヤ笑うティンティン。

 言いたいことは分かる。

 だが、

(良いように俺を誘導してるつもりだろうけど、他の勇者と合流できないとお前が困るんじゃないのか?)

 そう思ってはいるのだが、


「…………もう少しここで、出来る限りの治療をする」


 すでに選択肢の無い俺は、そう言うしかなかった。



「はいは~い! 治療を受けたい方はこちらに並んでくださ~い! 親切・丁寧・安心の価格で治療いたしま~す!」


 二日酔いと言う言葉を知らないティンティンが、元は露店の立ち並ぶ賑やかな広場だった場所。

 今は教会の治療や、炊き出しに並ぶ人々に向かって大声を上げる。

 昨日の状態ならこんな怪しい奴ら、誰も見向きはしなかったろう。

 だが、


「おおう! この先生のおかげで、俺の娘が助かったんだ!」

「そうだよ! あたしの娘は、もう……教会の神父様にも諦められた娘は……この先生に救われたんだよ!」


 どうやら宿屋の夫婦は、この町では結構顔が利くらしい。

 彼らの声に教会で治療を待つ列の、最後尾の人達がこちらに並び始めた。


 ちなみに大声で呼び込みをしていたティンティンは、


「大声で叫ぶなど、聖女候補の品が無い!」


 っと、教会の偉そうな人に怒られていた。


「よし、治療を始めるが、並んでいる中で自分より重傷だと思える奴がいたら譲ってやってくれ。ちゃんと全員見るから。ああ、そうだ。女子供、じいさんばあさんに順番を譲ってやれる男は、紳士の中の紳士だって、王都でモテモテだったぞ」


 そんな俺の呟きを聞くと、男どもがこぞって順番を譲り始めた。

 やはり俺を含めて、男って奴は格好つけたがる(女にモテたい)生き物だったことに思わず苦笑した。


「はいは~い、サクサク見るよ。お嬢ちゃんはどうした? どこが痛い? ああ、足を切っちゃたのか? え? それよりママの怪我? あ! 奥さん腕の傷の血が止まってないじゃないですか! すぐに治療します。はぁ? お代が娘の分しかない? そんなの気にしないで早く傷口を診せて」


 自分でも思うのだが、診察中って子供だろうがおっさんだろうが、はたまた妙齢の婦女子だろうが、普通に話せるのが不思議だ。

 しかも自分でも驚くほど調子がいい。


「よし、治療完了。少し休憩を入れたいから、午前の部は終了で良いかな? 大丈夫。あんたらの顔は覚えたから、三〇分間後にまた来てくれ」


 俺は午前中だけで重軽症者合わせて、三〇人以上の患者を診ていた。

 魔力はまだ尽きる気配を見せないが、さすがに精神的にくたびれた。


 治療と言うのは集中力が切れるとミスが増える。

 それが致命的なモノになる前に、俺は一旦休憩をすることにした。


「さて、昼飯はなににするかな?」


(午後の診察を乗り切るためにも、肉料理が食べたいな。でも、この町の惨状じゃあまり期待は……)

 なんて心の中で葛藤していると、


「……(もぐもぐ)。カイルさん、お昼持ってきました! ギトさんとセタさんが、特製サンドイッチをくれました!」


 そんな俺にスッタカターっと駆け寄ってくる、にこやかな未聖女。

 とてもありがたいのだが、彼女の持ってきたサンドイッチに他の具材が挟まっていたような隙間があるのは気のせいか?

 それにいまだにもぐもぐと動く口元に付いているソース。


 まあ、それは後で問い質すとして、俺は出来立てのサンドイッチを頬張った。


「うん、美味い!」


 若干、具が少ない気もするが、宿屋夫婦の作ったサンドイッチは素直に美味しいと思えた。

 ちなみに自分の分はもう食べたと申告したティンティンが、羨ましそうに指を咥えて見ていたが、それは無視した。


「さて、一休みしたら午後の診察を……」


「きやぁぁぁぁぁぁ!」


 サンドイッチを食べ終え、大きく伸びをしている俺の耳朶に響く悲鳴。

 

「ティンティン!」

「はい!」


 俺はティンティンと顔を見合わせ頷き合うと、悲鳴がした方へと走り出した。

年末で忙しいな! って方も、

年末だけど別に・・・・・・って方も、

最後までお読みいただきありがとうございます。

この後、もうちょっとスクロールしていただけると、

肩こり、腰痛に効く評価のツボがございます。

そこをポチポチっと押していただくと、あら不思議!

作者の肩こりと腰痛が治ります!

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