表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
半径三〇センチぐらいの最強勇者  作者: 岸根 紅華
21/54

よろしくお願いします。

「良し、感染症はこれで何とかなるだろう。次は腕の傷だ」


 少女の体内を犯す病原体は、ほぼ排除した。

 残りは自然治癒でなんとかなるだろう。

 一息つく間もなく、俺は感染症の原因になった腕の治療を開始する。


「うわ、こりゃヒドイな」


 少女の裂傷は酷いものだった。

 傷口はろくに消毒もされないまま、只々包帯を巻かれている状態。


「まあ、王宮の治療術師も知らないことを、ただの町人が知る訳ないか」


 呟きながらも、俺は娘を心配そうに見つめるおっさんと目を合した。


「おっさん頼みがある。今すぐこの宿で一番強い酒持ってきてくれ」

「な!? お、お前、まだ娘の治療が終わってないのに……飲むつもりか⁉」

 

 驚愕の表情のおっさんに、


「この娘の傷を消毒するんだ! だから早く持って来い!」


「よ、よく分からないが、分かった!」

 

 苛立ちを含めたの罵声に、おっさんは脱兎のごとく食堂へと向かった。


「……体格の割に身軽だな」


 思わず感心している間に、


「これで良いか?」


 おっさんが一本の酒瓶を持って来た。

 それを無言で頷き受け取ると、蓋を開けて鼻を近付ける。

 鼻をつくピリリとした刺激臭。

 注文通り、かなり強い酒のようだ。


「あと包帯か、それに代わる清潔なシーツとか持ってきてくれ」

「分かった」

 

 素直に走り去るおっさん。

 俺は故意におっさんをここから遠ざけた。


 多分これからの治療は、おっさんに少々酷く見えてしまうから。


「おかみさん、これから彼女の傷口の壊死した部分を取り除く。彼女の神経を切らないよう頑張るが、彼女が止めてくれと叫ぶかもしれないが……手が出そうなら極力見ないでくれ」


 一応気を使った俺に、


「何言ってんだい。わたしゃあんたらを信じたんだ。だから娘の首をはねようとしない限り、手を出すつもりはないよ!」


 腕を組み、「むふうぅぅぅん!」っと息巻くおかみさん。

 どうやら彼女の肝はかなり据わってるようだ。


「分かった。最善を尽くす」


 とにかく言質はとった。

 これで心置きなく治療に集中出来るってもんだ。


麻痺パラライズ魔剣カリバー!」


 俺は患部を麻痺させ、指先三〇センチの魔剣を呼び出した。


「患部を切除するため、多少の出血がある。ティンティン。お前はいつでもヒールが出来るように待機しておけ」

「分かりました!」


 こういう時だけ素直に言うことを聞く彼女。

 それを心地よく思う自分に苦笑しながらも、指先に現れた魔剣を慎重に患部に押し当てた。



「ん⁉ ううぅぅう」


 魔剣で壊死をした部分を一部切り取ると、熱にうなされ患部を麻痺させていても違和感を覚えるのだろうか?

 少女の眉間にシワが寄る。


「悪いな、さっさと済ませるから、もう少し我慢してくれ」


 意識のないだろう少女に語りかけながら、魔剣がある指先を休まず動かす。

 

 ビシュッ!


 途中、壊死した患部からドロッとした膿交じりの血が噴き出る。


「ティン、止血!」

「はい!」


 胸まで飛んできた血を無視しティンティンに止血を頼み、俺のそのまま患部の除去を続ける。


「おい! 変な血が出たぞ! 本当に大丈夫なのか!」


 いつの間にか戻ってきたおっさんの、悲鳴に近い声が聞こえるが、


「あんたはうるさいんだよ! 吠える暇があるなら夕食の芋むきでもしときな!」

「え? 今はそんな場合じゃ…………わかった」


 渋々といった感じで、姿を消すおっさん。

 ちょこっとおっさんが不憫に思えたが、おかみさんの判断はナイスだ。


「…………治療を続ける」


 俺はそのまま治療を再開。

 そして、


「……よし、壊死した部分は全て除去した。あとは傷を塞ぐだけだ」


 純度の高い酒を惜しみなく用意されてた布に沁み込ませ、出来るだけ優しく患部を消毒。

 最後に、


「ヒール、ヒール、ヒール、ヒール!」


 治癒の呪文を連呼し傷口を塞ぐ。


「よし、治療完了!」


 俺は肺に溜まった空気を吐き出すように呟いた。


最後までお読みいただきありがとうございます。

ブクマ、評価、感想などを書いていただける方、絶賛募集中です!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ