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よろしくお願いします。
「良し、感染症はこれで何とかなるだろう。次は腕の傷だ」
少女の体内を犯す病原体は、ほぼ排除した。
残りは自然治癒でなんとかなるだろう。
一息つく間もなく、俺は感染症の原因になった腕の治療を開始する。
「うわ、こりゃヒドイな」
少女の裂傷は酷いものだった。
傷口はろくに消毒もされないまま、只々包帯を巻かれている状態。
「まあ、王宮の治療術師も知らないことを、ただの町人が知る訳ないか」
呟きながらも、俺は娘を心配そうに見つめるおっさんと目を合した。
「おっさん頼みがある。今すぐこの宿で一番強い酒持ってきてくれ」
「な!? お、お前、まだ娘の治療が終わってないのに……飲むつもりか⁉」
驚愕の表情のおっさんに、
「この娘の傷を消毒するんだ! だから早く持って来い!」
「よ、よく分からないが、分かった!」
苛立ちを含めたの罵声に、おっさんは脱兎のごとく食堂へと向かった。
「……体格の割に身軽だな」
思わず感心している間に、
「これで良いか?」
おっさんが一本の酒瓶を持って来た。
それを無言で頷き受け取ると、蓋を開けて鼻を近付ける。
鼻をつくピリリとした刺激臭。
注文通り、かなり強い酒のようだ。
「あと包帯か、それに代わる清潔なシーツとか持ってきてくれ」
「分かった」
素直に走り去るおっさん。
俺は故意におっさんをここから遠ざけた。
多分これからの治療は、おっさんに少々酷く見えてしまうから。
「おかみさん、これから彼女の傷口の壊死した部分を取り除く。彼女の神経を切らないよう頑張るが、彼女が止めてくれと叫ぶかもしれないが……手が出そうなら極力見ないでくれ」
一応気を使った俺に、
「何言ってんだい。わたしゃあんたらを信じたんだ。だから娘の首をはねようとしない限り、手を出すつもりはないよ!」
腕を組み、「むふうぅぅぅん!」っと息巻くおかみさん。
どうやら彼女の肝はかなり据わってるようだ。
「分かった。最善を尽くす」
とにかく言質はとった。
これで心置きなく治療に集中出来るってもんだ。
「麻痺。魔剣!」
俺は患部を麻痺させ、指先三〇センチの魔剣を呼び出した。
「患部を切除するため、多少の出血がある。ティンティン。お前はいつでもヒールが出来るように待機しておけ」
「分かりました!」
こういう時だけ素直に言うことを聞く彼女。
それを心地よく思う自分に苦笑しながらも、指先に現れた魔剣を慎重に患部に押し当てた。
「ん⁉ ううぅぅう」
魔剣で壊死をした部分を一部切り取ると、熱にうなされ患部を麻痺させていても違和感を覚えるのだろうか?
少女の眉間にシワが寄る。
「悪いな、さっさと済ませるから、もう少し我慢してくれ」
意識のないだろう少女に語りかけながら、魔剣がある指先を休まず動かす。
ビシュッ!
途中、壊死した患部からドロッとした膿交じりの血が噴き出る。
「ティン、止血!」
「はい!」
胸まで飛んできた血を無視しティンティンに止血を頼み、俺のそのまま患部の除去を続ける。
「おい! 変な血が出たぞ! 本当に大丈夫なのか!」
いつの間にか戻ってきたおっさんの、悲鳴に近い声が聞こえるが、
「あんたはうるさいんだよ! 吠える暇があるなら夕食の芋むきでもしときな!」
「え? 今はそんな場合じゃ…………わかった」
渋々といった感じで、姿を消すおっさん。
ちょこっとおっさんが不憫に思えたが、おかみさんの判断はナイスだ。
「…………治療を続ける」
俺はそのまま治療を再開。
そして、
「……よし、壊死した部分は全て除去した。あとは傷を塞ぐだけだ」
純度の高い酒を惜しみなく用意されてた布に沁み込ませ、出来るだけ優しく患部を消毒。
最後に、
「ヒール、ヒール、ヒール、ヒール!」
治癒の呪文を連呼し傷口を塞ぐ。
「よし、治療完了!」
俺は肺に溜まった空気を吐き出すように呟いた。
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