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半径三〇センチぐらいの最強勇者  作者: 岸根 紅華
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出来る限り今日中に一章までを更新します! たぶん。

『その願い、叶えましょう』


「え? なに? どの願い? 誰か何か言った?」


 脳内に響く透き通る綺麗な声に、俺は立ち止まりキョロキョロと辺りを見回す。

 しかし、視界には護衛の騎士と門番だけ。

 見渡す限り綺麗な声を出すような貴婦人は無く、むさい男しかいない。


「何をしているのですカイン殿。もしかして女神の声でも聴きましたかな?」

「女神の声?」


 聞きたいとは思わない護衛騎士のダミ声に首を傾ける。


「ええ。『真に勇者に選ばれ者、女神の門を越える時、その強き思いに女神が祝福を与える』って、教本にあるのですが……知りませんでしたかな?」

「知らねーよ! なんで教会も無い最果て村出身の田舎者に、教本の知識があるの前提で話すんだよ! そんなの先に教えておけよ!」


 未知の声を聴いたからなのか?

 思わずタメ口でツッコんでしまった。

 でも待てよ?

 

「もしあれが女神の声なら、もしかして願いが叶うのか? 俺の、この手が届く範囲で……いやいや、そんな都合の良いことなんて……」


 そう口にしながらも気分は急上昇。

 分不相応な希望を胸に、俺は旅の疲れも忘れ軽やかに騎士の後に続き足を進めようと教会の中へと足を進めた。


 どんっ!


 だがそれは瞬間で阻止された。


「あいたたたた。何が……」


 振り向きざまに何かにぶつかり、ヒスイの床に尻餅をついてしまった。

 村長の家の家宝より品質の高いヒスイに尻をつけた俺は、すでに村長を超えたかもしれない。

 そんな馬鹿なことを想いながらも、何にぶつかったのかと視線を上げた。


 そして。

 女神を見つけた。


「すまない……。もしかして君も勇者なのか?」


 ふわりと宙を舞う、腰までかかる青みがかった銀色の髪。

 同色の、意思の強そうな瞳。

 健康そうな褐色の肌に、整った顔立ち。

 真紅の服に映える銀色の胸鎧ブレストプレートは手入れが行き届いているのだろう、主人を引き立たせようと光り輝いていた。


 そこにはメンコイ……いやいや、とても美しい女神のような少女がいた。


「都会ってやっぱ凄いわ。こんな可愛こちゃん(死語?)がいるなんて……」

「ほう。例えお世辞でも嬉しいな」


 どうやら心の声が口に出ていたらしい。

 俺が吐いた今どき田舎の酔っぱらいのおっさんでも言わないような褒め言葉に、にこやかにほほ笑み手を差し伸べてくる、俺と大して年の変わらない少女。


 いや女神。


 もしかしたら、これが運命的な出会いってやつか!


 俺は子犬のようにはしゃぎまくる心と内から湧き出る欲望と言う名の興奮を抑え込み、彼女の手を借りずサッと立ち上がり、


「初めまして。俺……いや私は勇者に選ばれたカインと申します。田舎者ゆえ無礼だったらごめんなさい」


 尻餅ついた後で恰好がつかないが、俺は自分の持っている全ての経験……は無いから想像力をフル活用し、出来るだけ爽やかで紳士っぽい言葉と笑顔で、彼女が差し伸べた手をそっと握った。


「初めまして。シェリー・フォン・ルードリッヒだ。いきなり勇者とか言われて色々思うとこもあるだろうが、お互い頑張ろう」


 ギュッと握り返してくる彼女の力に、友情以上のモノを感じた。

 

 これはもう結婚か!

 いやいいや、紳士は順序を尊ぶものと誰かが言ってたから、まずは婚約か!


 女神からギフトを貰う前に、天からギフトを貰ってしまった俺。

 これでハッピーエンドってことで、このまま彼女を連れて家に帰らせてもらえないだろうか?


「それではまた、女神降臨の聖域の場で」


 妄想全開の俺の手を名残惜しそうに(俺はそう思った)放し、護衛騎士と一緒に階段を上る彼女。

 その後ろ姿を見つめながら俺の妄想は終わることなく、すでに彼女との幸せな結婚生活『子供が出来た編!』にまで突入していた。


最後まで読んでいただきありがとうございました!

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