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半径三〇センチぐらいの最強勇者  作者: 岸根 紅華
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せっかくのクリスマスイブだし、キリが良いので更新します。

決して、決してブクマと評価が嬉しいわけじゃ・・・・・・なくもないわけではないくもない。

(いや、だからどっち!?)

「さて、改めて話を聞こうか?」

「は、はい! ちゃ、ちゃんと話します! だ、だから、だからもうその話の続きは……いや、ここまで聞いたんだから、いっそ最後まで……で、でももし、最悪の結末だったら……いや~~~! 私はどうすれば良いの!!」

「別にどっちでも良いけど、さっさとお前の話をしろ!」

「はいぃぃぃぃぃぃぃ!」


 新しく入れたお茶の湯気も立たなくなったころ、対面に座る、恐怖で涙目の彼女に俺が優しい笑顔を向ける。


 手ごたえがあった。

 どやら彼女には肉体的苦痛より、精神的苦痛の方が有効のようだ。

 それに気付いた俺は、とっておきの話をしてやった。

 すると、数分も経たずにこの従順さ。

 もっと早くすれば良かった。


「とにかく、速攻で断るからさっさと言いたいこと言え」

「断るの前提! 少しぐらい考えて下さい! これでも私、かなりギリギリなんですから!」


 なにがギリギリなのか分からないが、話が進まないのでさっさとしろと視線で促した。


「そうです! 王様言う。私の育った孤児院ピンチ! 聖女の私が、あなたをグラナダに連れてかないと! タイヘン!」


『こいつ、説明がへたくそだな』


 脳内でそう思いつつ、俺は彼女の言葉を、想像と言う糸でつなぎ合わせる。


「……もしかして、俺をグラナダに連れて行かなきゃ、お前が育った孤児院を潰すとか脅されたのか?」

「はい! ベリーハングリーです!」

「それ、正解って意味じゃないから。物凄く腹減ってるって言ってるからな!」


 なんで西の大陸の言葉を使おうとするのかは不明だが、彼女の伝えたいことは大体理解できた。

 国民を人と思わず、道具として操る。

 あのクソ王がしそうなことだ。

 彼女もきっと、孤児院出身だからって不当な扱いを受けていたのだろう。

 だから偽物勇者と言われる俺の所に回された。


「王様言いました。『この国が他の国と、勇者数同等。納得いかない』と」


 魔王が出現すると、勇者は大陸にある幾多の国にランダムに現れる。


 そして歴史から、勇者を多数輩出した国が魔王を倒す確率が非常に高かった。

 だから王様は偽勇者と言った俺にも、勇者として働けと言うのだろう。

 そんな無茶ぶりの命令を受けた、彼女の立ち位置には同情はするが、


「でもまあ、見ず知らずのお前の立場より、俺は気に入ってる今の生活を……」


 さて、どうやって彼女に、穏便に帰ってもらおうかと言葉を選び始めたその時。


「すでに他の三勇者はグラナダに向かっているのです。私も早く行かないと……」


 彼女の声に、否定の言葉を飲み込んだ。

『三勇者。ってことは彼女もそこに?』

 俺の脳裏には、銀髪の笑みが蘇っていた。

 あの時、俺を庇ってくれた彼女に、一度ちゃんとお礼を言いたかったのだ。


「ふ、ふ~ん、そうなんだ。皆が行くなら俺も、条件次第じゃ行っても良いかな……」


 だが、それだけのために行くには、俺の何の裏付けの無いプライドが許さなかった。


「はい、その点は大丈夫です! 王様からちゃんと支度金を……もらって……」


 慌ただしく視線を彷徨わせるティンティン。

 あ~。

 こんな経験俺にもあるわ。

 彼女の表情は確か俺が悪友と共に、隣町に買い物を頼まれたのに、預かった金で酒を……そして全部飲んでしまった時のようだった。


 ん?

 それって、もしかして。


「確認なんだがお前、俺が貰うはずの支度金……」


 もしかしなくても確認のためなのだが。


「まさか聖女候補とあろう者が人の金、使い込んだりしてないよな?」


 出来るだけ優しく問いかける俺に、彼女は視線を合さないばかりか、胸の前で指先を突き合わし。


「お、お菓子って、美味しいですよね?」


 どうやら俺が貰うはずだった支度金は、お菓子となり彼女の腹の中に納まったようだ。


「ごめんなさい!」


 俺の冷めた目を見て、滑り込むように土下座するティンティン。

 でも俺には、その土下座はとても軽いものに思えた。

 別に王からの金なんか欲しくはないが、人に託された金を私利私欲に使う彼女に幻滅したのだ。


 だからこいつとは一緒に行動は出来ない。

 そう思ったのだが、


「ごめんなさい! 私の支度金だけじゃ、孤児院の子供全員にお菓子が行き渡らなくって……。でもでも『おねえちゃんは聖女になったんだ!』って喜んでくれたあの子たちに、もっともっと喜んでもらいたくて……悪いこととは思っていたんですが……本当にごめんなさい!」


 頭を垂れているので表情は分からないが、涙声で謝罪を繰り返すティンティン。


「え? お前が菓子を食ったんじゃないの?」

「食べましたよ! だってだって、私が食べないと、あの子たち遠慮して食べないんだもの。悪いとは思いましたけど、一つ頂きました!」

「え? 一つしか食べて無いの?」

「だって子供達に買ってきたお菓子ですよ? 私がバクバク食べられると思いますか?」


 彼女の言葉に、『金を使い込んで、お前が一人で食べたんだろ?』と思ってましたとは、さすがに言えなかった。

 だから、


「そっか、じゃ、お前がいた孤児院に、俺がそのお菓子を匿名で寄付したことになるんだな?」


 俺の最大限の譲歩を、


「へ? 何言ってんですか? 今はお金の使い道じゃなくて、あなたが受け取るはずのお金を、わたしが使い込んじゃったってことが問題なんですよ?」


 彼女は「何言ってんだこいつ?」みたいに顔を上げた。

 もちろん。

 こいつが空気のくの字も読めないのは分かっていた。

 だから俺は代案を出す。


「それじゃ、支度金分俺のために働け」

「え? え?」


 意味が分からないとばかりに、彼女が首をかしげる頭上に『?』を浮かべる。

 ホントに空気の読めない未聖女様である。


「だからお前は、グラナダまで俺の助手兼、荷物持ち兼、奴隷だって言ってんだよ!」

「あ! ああ!はい! はい! 体力には自信があるので任せて下さい! え? ええ! 奴隷ってどう言うことですか⁉」


 叫ぶ彼女に俺は無言でこの日、一番の笑みを俺に向けた。


なんとか二章まで終わりました。

これまでブクマ、評価、ありがとうございます。

そして、これからも応援よろしくお願いします!

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