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王国側の閑話です。
ティンティンが、カイルの元に訪れる一週間前の出来事。
「ぐぬぬぬぬ。差し向けた暗殺者たちが全滅だと!」
人気のない謁見の間で黒ずくめだがどこにでもいる、すれ違っても決して印象を残さないような男の前で、玉座に座る王が低く唸った。
「はい、確かに私も初めは甘く見て、レベルの低い者を差し向けていましたが……今回の者は私が直接目を掛けていた手練れ。それを撃退したとなると、ターゲットは相当の実力者と思わねばならぬでしょう」
微笑んだまま、淡々の真実を語る男の声。
だが、その笑みにはまったく特徴が無く、すれ違って数秒も立たないうちに存在があやふやになるほどだ。
なんとも印象に残らない顔立ちの男だった。
「して、次は用意しているのだろうな?」
「はい。もう盗賊や夜盗に偽装して襲うのは無理がありますゆえ、私自信が……」
覚悟を決めた男の言葉を遮るように、閉ざされた謁見の間の扉がノックされた。
「陛下。隣国からの密偵の報告書をお持ちしました」
「よし……入れ」
「失礼します!」
扉が開くと同時に、鎧姿の兵士が王に向かって小走りで近付くと、手に持った報告書を王に渡した。
「む!…………」
ザッと目を通し、視線だけで兵の退出を促す王。
兵士は礼をして謁見の間を出て行く。
「…………」
「どうなされました?」
さっきまで存在を消してた男が、報告書を見たまま動かない王に怪訝な笑みを向ける。
「村人め、命拾いしたな」
男の問いに答えず、王は独語を吐き視線だけを男に向けた。
「暗殺は一旦中止じゃ。すぐに奴を一時的だが勇者に復活させろ! それと魔王を倒すためにグラナダに向わせろ。そして国内外に宣言。我が王国は勇者を四人有していると」
「御意」
王の言葉を聞き男が頭を垂れた途端、姿を消した。
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