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半径三〇センチぐらいの最強勇者  作者: 岸根 紅華
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「聖女未満ってなんですか未満って! それに私は重傷患者ですよ」


 そう言いつつ、ガッと立ち勢いよく上がる元重傷患者。

 手伝えと言った手前なんだが、『本当は君一週間ほど安静しなきゃダメなんだよ? 分かってる?』と言いたい。

 でもなんか元気だ。

 なので遠慮なく、


「うるさい黙れ、お前はすでに治療済みだ。それに体力は戻らなくても魔力は残ってるだろ? これから患部を開くから指示した場所にヒールを掛けろ。あと、唾が飛んで不衛生だから大声出すな雑菌が入る」


 なんか変な方向に話が言ったな、っと思いつつ彼女の様子を眺めていると、


「なに言ってんですか! 私のつばは由緒正しき聖なるもので、決して……汚くは……」


 勢いは最初だけ、自分で言ってて恥ずかしくなったのか?

 彼女の言葉は尻つぼみになって消え、羞恥まみれの朱に染まる顔を両手で覆う。

 そんな彼女を、ネチネチとからかってやりたい気持が持ち上がるが、今は一刻一秒を争う時なので自粛。

 さらに、


「お前が命懸けで助けたかった命だろ? なら、最後まで責任もって付き合え」


 彼女には無視できない言葉を吐き、手伝を決定付けさせた。



「先に右腕の骨折を治療する。麻痺パラライズ


 まずは時間のかかる右足より先に、右腕の治療を開始した。

 痛みで患者が暴れないよう、患部周辺を麻痺の魔法で痛覚を鈍くし、


魔剣カリバー


 クリーンの魔法で手を除菌した後、指先から一〇センチ程度の魔法の剣を出す。

 魔剣と言っているが、これはあくまで魔法剣の略称で斬った相手の生命力など吸い取ることも呪われることも無い。

 むしろ、魔力によって患部付近の雑菌を死滅させる優れものだ。

 俺はカリバーを最も破損が激しい場所に突き刺した。


 ブシュッ!


 内出血していた体内の血が勢いよく飛び散るが、そんなことで狼狽えたりしない。


「うぎゃぁぁぁ! 血、血が、こんなにいっぱい……あなた、何やってんですか!」


 俺の言ったとおり、今まで黙々と左足にヒールをしていた未聖女が叫ぶ。


「うるさい。お前それでも聖女候補か? 血管を流れない血は体内では邪魔者でしかないからわざと出してんだよ」


「血が邪魔?」


 呆然と俺を見る彼女。

 それは多分、この世界では正しい反応。

 この世界で血と言うのは尊いもので、体内から出すものではないと言うのが通説だ。

 だが、女神さまから貰った本の『現代医学の章』によれば、血管を通らず体内に溜まったままの血は、邪魔にしかならない。

 こえは本当の事だ。

 なぜなら俺が治療した患者で経験済みだからだ。


「とにかく、未聖女はヒールを続行。その間に右腕を片付ける」


 俺は出血し続ける患部をジッと見つめ、


「まったく、複雑骨折と内出血、あとフラグ立ちまくりで二八〇パーセントの死亡率のくせに運がいい」


 自分でも良くわからない台詞を吐き、口の端を吊り上げた。

 透視で見た限り、欠けた骨の欠片での神経や血管の破損ヶ所が、驚くほど少ないのだ。

 本当にこの患者、運が良いのか悪いのか判断に困る。

 まあ無事に助かったら良かったことにしよう。


「テレポート」


 神経組織に絡まっていた骨の欠片を、魔剣とは反対側の手に移動。

 その欠片を砕けた骨を除菌後、再び体内にテレポート。

 つながっていたと思われる部分に移動。

 そして、


「ヒール!」


 多少形は違うが、治癒呪文で欠片を骨にくっつけた。

 この要領で、作業を続ける。

 淡々と神経や血管、筋肉に挟まっている大小さまざまな骨の欠片をテレポートさせ、砕けた腕の骨にくっつけていく。

 単純作業に見えるが、少しでもテレポートの位置がズレると出血、もしくは筋肉や筋を傷つけてしまう。

 そんな精神をゴリゴリ削る、終わりの見えない精密作業の果て。

 

「よし、これですべて欠片は無くなった。仕上げに」


 細心の注意を払いつつ、ヒールで成形した太い骨同士を近付け、


「ヒールヒールヒールヒール…………」


 ヒールの連弾でつなぎ合わせた。


「……よし、右腕の治療は完了」


 最後に切り裂いた皮膚にヒールを掛け、右腕の治療は完了した。


「さて続けて右足の治療を開始する」


 未聖女な少女と入れ替わり、俺は再び患部にパラライズを掛け右腕同様、気の遠くなるような治療を開始した。

ブックマークが増えてた……。

べ、別に、ブックマークとか評価とか、嬉しくないんだからね!(嘘です。嬉しいです!)

感想なんて欲しくないんだからね!(嘘ですかなり欲しいです!)

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