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半径三〇センチぐらいの最強勇者  作者: 岸根 紅華
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 一章:1なぜか勇者に選ばれたのですが……。

新作です。

よろしくお願いします!

 魔王復活する。


 その報がフォーリア大陸全土に響き渡って半年。


 世界中に恐怖が蔓延した。

 だが、それと同時に、ある噂が囁かれ始めた。


『魔王現れしとき、女神に選ばれし勇者現る。その手の甲に聖印を纏う聖なる者が集、心ひとつにした時、魔王は光の元、滅する』

 

 その言い伝えの通り、手の甲に聖印の現れた者は各地に現れた。


 だが、噂と違い聖印を持つ者たちの心には、功名心や義務感を多く持つ者たちだった。

 それでも不安を持つ民は、希望とわずかな不安を持ちながらも自分の住まう王国、帝国、はたまた共和国に赴く勇者を讃えた。


 そんな城下町の一角をごつい騎士に続き、かったるそうに歩く。


「はあ。疲れた、だるい、もう村に帰って半年ぐらい眠りたい。ねぇ、帰っちゃダメ……だよね」


 誰に聞かせるでもなくため息を吐く俺は、傍から見たら行動以上に酷いのだろうがまったく直す気は無い。

 いや、絶対直すもんかと意固地になるレベル。


 何せ俺は今から、かたっ苦しい教会に向わねばならないからだ。

 しかもただの教会では無い。

 大陸に五つしかない、なんかすっごくデカい教会にだ。


「ホント、なんで俺なんかに聖印が……。そもそも聖印が現れたからって巡回の騎士も来ないような最果ての村からここまで……あれ? ならこれ聖印じゃありませんって白を切っとけばよかった?」


 今更ながら、自分の迂闊さにため息が出た。

 チラリと視線を前に向ければ、ガシャガシャと耳障りな音を立てながら規則正しく歩く騎士の姿。

 その音は、俺を急かすように背後からもしていている。

 大教会までの護衛と言う名目で村から行動を共にしている騎士たちだが、それはフェイクだ。

 だって彼らは俺を逃がさないように見張っている、監視なのだ。

 現に彼らは俺がちょっと出店に寄ろうとしても、ちょっと可愛い女の子に視線を奪われても、


『勇者様、先を急ぎましょう!』


 とか言って、ちっとも自由を与えてくれないのだから。


「まあ、素直にここまで来ちまった俺も悪いのか……はあ」


 聖印に導かれ……と言えばカッコイイが、ろくに仕事も出来ないごく潰しの俺の手に聖印が現れた時。

 喜々として近くの町に駐屯していた騎士に使いを出し、諸手を上げて見送ってくれた村の奴らに思う所が無いと言えば嘘になるが、悪意はないと思いたい。


「それにしても……はあ」


 俺はこの数日で、何度目になるか分からないため息をついた。

 魔物もろくにいないような最果ての村で育った俺は、剣を握るどころか見ることも稀だった。

 そんなごく潰しに、いくら女神が勇者に与える特別な聖印ギフトを貰っても、猫に真珠。豚に大金貨だと思うのは俺だけか?


 それにしても…………。


「あの……城門通ってかれこれ一時間は歩いていると思うんですけど、大教会ってまだですか?」


 本当は分かってる。

 視線の先に、まったく近付かない豪華な建物が大教会だって、分かってるんだ。

 でも、それでも聞かずにいられない。

 俺は言外に、


『なんでこんなに遠いのに、城門で馬車下りちゃったの? 俺はあんたたちみたいに訓練してないから体力無いんですけど⁉』


 っと言いたいだけだ。

 なのに、


「はい、あともう少しで到着します!」


 前方を歩く騎士は何度目かになる同じセリフを、爽やかすぎる笑顔で吐いた。


『ふざけんな、この脳筋が!』


 愛想笑いを返しながら脳内で叫んだ俺は、決して間違ってないと思う。

 それから一時間後、


「や、やっと着いた……」


 俺はくじけそうな膝に両手を突いて、ぜぇぜぇと荒い息を吐いた。


 騎士の言ってた到着時刻より遅れたのは、俺が休憩を要求したからだ。

 いやいや、俺は悪くないよ。

 だって俺が言わなきゃ、こいつら休むこと無く黙々と歩く気だったんだよ。

 兎にも角にも、なんとか教会に着いた俺はすでに体力の限界を感じていた。


 そして思う。

 もし、女神から貰えるギフトが選べるなら、俺は魔法使いになりたい。

 だって自由に魔法を使えるなら、ここからテレポートの呪文を使い村に帰って惰眠をむさぼれるから。

 いや、テレポートが使えるならいろんな国に行くのもありか?

 歩き疲れた筋肉痛の足に回復の呪文を掛けられるのも便利だし、靴擦れも治したいので治癒の呪文はぜひとも覚えたい。


 でも他国に行くのは風土病とか怖いな。

 環境の変化で疲労がたまって、風邪もひきそうだ。


 なら、病気とか怪我とか、人間の体の作りが分かれば治療も効率良いかも!


 それに今にも壊れそうな靴も修理したいし、所々ほころび始めた服も直したい。

 ああそうだ。

 いっそのこと、いろんな魔法が使えたら便利だな。

 疲れきった心と体で、そんな欲望まっしぐらなことを考えていると、


「開門!」


 良く通る声と同時に、巨人でも通れそうな巨大な王扉が、なんの軋みも無く静かに開いた。

 その先のに見える光景は田舎者の俺に言わせりゃ。


 スゴイ!


 の一言だった。

 村一番の成金で有名な村長の家が、確実に五個は余裕で入るエントランス!

(エントランスって言葉自体初めて使った!)。

 そして村長に家に家宝として祭られていた拳大のヒスイが、床にぎっしりと敷き詰められたいた。

 しかも原石では無く、ちゃんとした処理をされ磨き上げられているヒスイだ。

 田舎にいたんじゃ想像もできないような光景が広がっていた。


「べ、別に、ビビってないし!」


 そんな光景を目の当たりにし、数秒間あんぐりと口を開けてしまっていたが、誰に言うでもなく自分の気持ちを口にして己を鼓舞。

 そのまま扉を通った俺は称賛に値すると思う。


 刹那。


『その願い、叶えましょう』


 俺の耳朶に透明な声が響いた。

作者が、今度こそくじけず最後まで書けますよう。

お手数ですが、ブックマークお願いします。

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