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ライゼン、そろそろ決着と行こう

 ウサギが変化した。

 通常の変化とは違い、シロウサギの身体に外骨格、サソリの甲冑を纏ったような姿だ。

 ただのこけおどし、かと思えばそうではなかった。

 先程まで儂の雷魔法、磁力雷撃マグネティクスサンダーに引っ張られる姿が見受けられていたのに、今は逆に雷を使って不規則な移動で回避し始めている。

 まるで雷撃からウサギを避けるような、ウサギが雷から遠ざかるような動きである。


 おそらく、相手も磁力属性のスキルを使っているのだろう。

 確か磁力同士は引っ付く力と離れる力を操れた筈である。

 つまり、あの外骨格は磁力を帯びているということだ。


 なるほど、突然見知らぬ形態に変化したから何かと思えば、磁力対策まで持っておったか。


「神速ッ」


 ―― 電光石火ッ! ――


 互いに速度特化のスキル構成。

 ゆえに相手の動きがなんとなくわかる。

 後は武器による技量。

 しかし、儂の長年の経験をスキルの多寡でウサギは補っているようだ。


 加えて、状況に合わせて的確な存在進化。

 驚きなのは進化速度が秒単位で、雷属性が弱点のウサギ種になったかと思えば次の瞬間に居は雷属性特化のウサギ種になっていたり、羽が生えて飛翔したり、硬くなって槍をはじいたりと千変万化。


 これほどやりづらい敵は長い人生経験の中でもマズいない。

 儂と出会ったころは殆ど進化していないシロウサギに毛が生えたような存在だったくせに、わずか数年でようもここまで実力をつけたものよ。

 これ以上年数を経れば、儂など及びもつかないバケモノになるのだろうな。

 ゆえに、今ここで叩かねば。


 槍と槍の連撃が重なり合う。

 どれ程の技量で攻撃しても、ウサギはスキルで対応して来る。

 槍を弾き飛ばしても、サイコキネシスで操って来たり、アイテムボックスから新しい槍を取り出したりとすぐさま戦闘スタイルを変えて来る。

 普通に打ち合えばおそらく勝てる。

 しかし、時を経るごとに変化を続けるウサギの戦闘方法に追い付くのがやっとで儂の十全の力が振るえていない。


 そろそろ全力が振るえる、と乗ってきた瞬間に別の戦闘スタイルに変わるのだ。ゆえにそちらに対応することでまた一から調子を整えなければいけなくなる。

 このウサギ、そういったセンスが凄いのだ。

 相手の有利な状況に持ち込ませないことに特化している。


 自分の有利な場所や状況にまでは持って行けなくとも、相手が最高のパフォーマンスで闘える環境を作らせない事に秀でている。

 まるでそういう、絶対的に調子に乗らせたらマズい相手との戦闘を想定して闘い続けてきたような動きなのだ。


 皆の話や麗佳の話を総合してみるに、おそらく正義の味方という存在に対しての模擬戦を昔から想定してやっていたから、なのだろう。

 相手の本気を出させない、欲を言えば自分に有利な状況で闘う。

 だからフェイントだってするし、押し負けたフリだってやってのける。

 自分が負けたくないというプライドみたいなものは無く、むしろ自分の死すらいとわず相手諸共同士打ちしてでも致命傷を負わせる、あとは別の誰かが何とかする。そういった闘い方でもあった。


 さすがに後に続く者がいない今の状況ではその辺りはなりを潜めているものの、基本的に自分の命や勝負に負けるといったことは殆ど考えていない。

 とにかく儂を勝たせないことを目的に闘っている。

 ゆえにこちらが隙を見せたとしても襲ってはこない。


 勝つ気が無いようにすら見える。

 勝負にこだわる相手ならこの動きだけで激昂していることだろう。

 しかし、ウサギを知っていればむしろこの闘いこそが彼が勝利を諦めていないことを理解できる。

 彼にとっては自分が負けることなどどうでも良く、儂に殺されることもどうでもいい。

 ただ、自分がどれ程の状況でも生き延び、あるいは自分の仲間の生存をこそ優先させる。それさえ出来れば彼にとっては勝ちなのだ。


 今回のウサギは、おそらく生存だけを目的にしている筈だ。

 あるいは、例え死んでもディアリオに生き返して貰える。

 ゆえに、儂に近接状態で負けなければ問題無いと思っている。

 近接状態だと死んだ瞬間アイテムボックスを奪われかねないからのぅ。


「そろそろ、決着と行こうかの?」


 ―― 正直気は進まないんだがね。仕方ねぇ。怨むなよライゼンさん ――


「正直、リアとのことは絶対に許せん。しかし、お前さんの強さは認めるし、リアを幸せにするだろうことは確信しておる」


 ―― え? それは初耳なのですが!? ――


「じゃが、それとこれとは別じゃ。リアと共にこの先を生き続けるというのならば、我が屍、越えて行けいっ!!」


 ―― って、越えさせる気ゼロじゃねーか!? ――


 槍を腰だめに構え、魔法を唱える。

 スキル全てを完全開放。

 槍が放電を開始し、光り輝く。


 ―― うそーん。まだ奥の手あんの!? ――


「奥の手とは確実に殺すための最後の一手。ゆえにいくつも持っておくに越したことは無いわい。相手によって使い分けできるしの」


 ―― ごもっとも。これ、もしかして正に正論ッッとか言っちゃったほうがいいのかね? ――


 そんなもん知るか。

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