ウサギさん、爺ちゃん、後じゃ駄目?
―― あなた、大変よ! 坂上って奴がスキルを盗むを連射してエイシェントドラゴンとタコの守護者からスキルを根こそぎ奪って殺したわ。既にヘリザレクシアのスキルも奪ってたみた……あ、まだタコさん生きてるわ ――
そりゃ不幸中の幸いだ。でも悪いユーリンデ。こっちはこっちで大問題だ。
あー、その、爺ちゃん。とりあえず坂上最初に倒さない?
その後でもよくね?
「そうしたくもあるがのぅ、お前さん、絶対に逃げるじゃろ」
うぐ、それは否定できない。
だって爺ちゃんと殺し合いとかしたらリアが悲しむし、俺二度も死にたくねーよ。
「ふむ。我は行かぬ方が良さそうだな」
「あれ? ディアリオさん行きマセーン?」
「うむ。下手に向ってスキルを盗まれると場合によっては世界が滅ぶからな。我が動くなら確実に潰さねば。今は近くに味方が多いので極大魔法は唱えられんしな」
ディアリオさん、確殺できる方法は持ってるらしいけど、多分使う時は世界の半分が灰燼に帰すくらいの一撃なんだろうなぁ。ふふ、強さのインフレが起こってやがる。
後から出て来る奴ほど強くなるから味方で付いて来れる奴が少しずつ居なくなるんだよ。だから唐突な理不尽パワーアップか敵が味方にシチュしなきゃ勝てないんだぜ。
坂上の奴も理不尽パワーアップ決めたけど、完全な魔王キャラになってるから、皆で力を合わせればワンチャンあるのでは?
しかし、アーボとピスカの共同戦線とか、何秒持つかと思ったんだがな、むしろこっちが苦戦ってどういうことだよ?
あー、もう、こんな気になる戦闘が近くで始まってるってのに、俺は参加すら出来ずに爺ちゃんとの一騎打ちか。
―― あー、その、ヘンドリックさんや ――
「ああ、分かってる。坂上を倒せ、だろ。言われなくてもやるさ、自分の本当の目的が分かったからな。あいつは生かしといちゃダメだ。後々やらかすのは確定してる。今この状況で転生不可状態で倒さないと」
先生のために。とは言わなかったけど、気持はひしひし伝わってきた。
つまり、ヘンドリックたちも坂上退治に一役買ってくれるらしい。
だったらもう、仕方ない。
「ようやくやる気になったかうさしゃん。いや……磁石寺啓太」
全く、ホントにしつこいなぁライゼンさん。
リアとのことは確かに全面的に俺が悪いが、だからと言って追いまわし過ぎじゃねーか?
「天啓を得てしまったものでな。残念ながら諦めて闘って貰わんと困る。殺すつもりで、やらせてもらうぞ」
殺意満々ですもんねー。
はぁ、しやーない。ディアリオさん。見届け人お願いしゃす。
「良かろう。どうせ我はここに居るつもりだしな」
「では隣で見学させていただきマース」
「あ、来た深海生物。キモッ。でも、これはこれでじゅるり」
セレスティ―アが迎えに来た海の生物たちを見て何か考え付いたようで怪しい笑みを浮かべる。
「んじゃー、本当にいいのね? うさしゃん? 私、行ってくるわよ?」
もう、諦めたよ。お前さんは好きにしてくれ。
これは寝取られと言うべきなのだろうか? それともただの別れ?
むしろセレスティ―アなら普通に飽きた。とか言って戻って来そうまである。
とりあえず、海の底で深海生物さんがたと楽しく遊んで来てくれ。
セレスティ―アが海の住民と共に去って行くのを見届けて、ライゼンさんが槍を構える。
「さて、せめて準備が整うまでは待てやるぞ?」
俺に準備なんざ要らねぇっつの。
そっちこそ、時世の句は考えたか?
なんってな。
スキル発動、疾風怒濤、アクセラレート、風圧操作、遅延時空、スタック、高速真言、範囲強化、状態付与率増加、ウォークライ。
行くぜ必殺、咆哮!!
「キィィィィィ―――――――――――――――――ッ!!」
「開幕咆哮だと!?」
開始と同時に突撃を仕掛けるつもりだったライゼンさん、雷属性を纏った槍が放電するが、俺の咆哮により出鼻を挫かれた。
全身が硬直するのは一瞬。でもその一瞬が命取り。
初めから全開じゃーっ!! ロンギヌス投擲ぃぃぃや!!
アイテムボックスから取り出したロンギヌスを思い切り投げる。
硬直解けたライゼンさんはぎりぎりでこれを払いのけた。
あの槍すげぇな、神槍相手に普通に受け流してやがる。
俺にはそこいらで手に入る鉄の槍にしか見えないんだがな。
よっぽどすごい武器なのか、ライゼンさんの技量が凄いのか。
多分後者だな。より厄介な存在だって思った方がいい。
「初手は潰されたが、行くぞ!」
近づかれたら何されるかわからん。ロンギヌス、連続投擲ッ!
無駄無駄無駄無駄ァ――――ッ!!
「ぬるいわっ!」
片手で槍回して盾にしながら突撃して来るライゼンさん。
マジかよ!?
普通に弾きまくってるし!
これはロンギヌス投擲が全く意味をなさない。
結構殺す気で投げたのに普通に攻略されちまったじゃねーか!?




