エフィカ、あの馬鹿何処行った!?
「クソッ、おのれおのれおのれぇぇぇっ!!」
何とか、狒狒爺を撃破出来そうだ。
ミミック特攻持ちの御蔭で彼女を倒すのはかなり容易だとは思っていたが、ここまで実力差が出るとは思わなかった。
やはりレベルアップし過ぎたらしい。
このまま追い詰められる、と思っていたのだが、途中でイレギュラーが発生した。
うん、まぁ、簡単に言えば……マッシュリア、テメェ何処行きやがったッ!?
思わず叫びたくなるほどの怒りが渦巻いている。
あの馬鹿、いつの間にか居なくなっていたのだ。
御蔭で自由になったリンドバックとシャリアが狒狒爺とタマの助っ人に来たせいでこっちが二対一で苦戦することになっていた。
ホントにあの馬鹿何処に行ったのよ!? これで逃げてたら確実に殺してやるッ。
―― ボルバーノスさんだよー ――
何? こっちは今、マッシュリアがいなくなってて忙しいのよアイツ何処行ったか知らない?
―― マッシュリアなら僕らと共にユーリンデさんとお茶してるよー ――
「よし、殺す」
―― 待って待って。あたしアトエルトさんにパスしたもんっ ――
「パスじゃなくてこれお願いってモンスタートレインしてっただけですよね?」
―― だって杖ぶっ壊れたしー☆ このままだと死んじゃうって思ったからアトエルトさんにおパスしたんだよ☆ ――
「黙れ、お前今すぐ来ないなら私が地獄の果てまで追い詰めて殺してやる」
―― ええぇ!? 理不尽!? ――
―― いやー、僕でもそんな事されたらブチ切れするよー。ほら、謝り行って来なー、って、あれ? なんで僕の腕持つの? あの、ジョゼさんや、僕まで連れてか無くていいんだよ!? ぎゃー!? ――
「っと、言う訳であたしより使える助っ人持って来たから、許してにゃんっ☆」
「まぁいいわ、許す。ほら、ボルバーノス、アレ受け持って」
―― ちょっと待てや!? ――
マッシュリアがジョゼさんのスキルで即行こっちに来た。
ボルバーノスもついでに来ていたので、こいつにリンドバックとシャリアをお願いする。
さぁ、後はさっさと狒狒爺を倒すだけね。
こいつは残しておいても憂いにしかならないのでさっさと殺しておくに限る。
レパーナとスラ子はこっちに来るような気配見せていたけど、海の魔物達が裏切りだした御蔭でアトエルトによって避難させられていた。
なので説得という手は使えない。
―― ドルアグスの旦那に頼めよー。なんで僕なんだよー。あの人の部下だろー ――
―― 残念だが狒狒爺たちは思い込んだら我が話しすら聞いてくれん ――
どんだけ思い込みが激しいんだろう。
やっぱりここで記憶リセットさせといたほうが安全そうだ。レパーナやドルアグスさんには悪いけど。
―― いや、こればかりはな、死んだらそれまで。敵対している以上そこは割り切るさ ――
人類であれば知り合いが殺されるとなればあの手この手で救おうとするのだが、どうやら魔物同士は希薄な関係らしい。
死んでしまったら残念だが仕方ない。と直ぐに諦めるのは、人とは違い、弱肉強食世界で生き抜いているからそういう思考になってしまうのだろう。
とにかく、狒狒爺は倒してしまって構わないらしい。
ウサギは女性になってるからとか俺が抱くまで殺すなとか言いそうだが、狒狒爺としてもウサギに抱かれるのは御免だろう。互いのためだ。ここで死ね。
「マズい、狒狒爺ッ!!」
「くぅ、この体では逃げ切れ……」
「ミミックスナイプッ!」
「ガァッ!?」
ミミック専用弓スキル。
普通に矢を放つだけなのだが、ミミックに対してのみ攻撃の命中率と貫通力、単純ダメージが跳ね上がる。
特に凶悪なのが、当たれば必ずクリティカルヒットで即死が確率で入る点だろう。
まさにミミックを殺す為だけの弓スキルである。
「狒狒爺――――ッ!!?」
アイテムダイアログボックスが出現した瞬間、タマが叫ぶ。
悪いが復活などさせん。
手早く近づきアイテムを回収する。
いや、アイテムボックスとか要らないから。
「テメェ、よくも、よくも狒狒爺をっ!!」
「私相手に他所見?」
「しまっ」
こっちに気を取られたタマの隙を突いて突撃したリルハが拳を放つ。
あの子の攻撃、無駄に高くなってるからタマ相手なら一撃死になりかねないのよね。
あ、ほら、アイテム入手確認出てきた。
「馬鹿な!? あの二人がいとも簡単に!?」
「はーい、気を逸らした貴方も死出の旅路にご案内だゾ☆」
―― 相手が罠にかかったら糸を引く。簡単なお仕事ですわー ――
リンドバックとシャリアも二人の死に気を取られたことでマッシュリアとボルバーノスにより瞬殺。
一瞬でも気を抜けば倒せる実力だったのか。あのキノコ娘、意外と強いのね。




