トーナ、ヘルプです
誰か助けてくださいっ。
いや、切実に。
あの黒い人、キリトゥさんでしたっけ?
アレが参戦して来た辺りから一気に旗色が悪くなったんですっ。
皆敵とほぼほぼ一対一させられてるせいで互いのフォローが出来ず、私もキリトゥさんの参戦で気軽にフォローできなくなった。
御蔭で回復が滞り気味になり、ダリスさんが死に掛けたり、ピーラさんが麻痺ったり、ほぼほぼ私のフォローが無くなったことで補助行動が出来なくなって旗色が悪くなっている。
代わりに、向こうはケイニーって女の子、女の子? がフォローし始めたので先程までより充実し始めている。
うぅ、あの黒い人さえなんとか出来れば……
あ、そうだ。念話。誰かー、手が空いてる人フォロープリーズ。
あ、あれ? 返事がないなー。なんでさっ。
―― とりあえず一人でも手があればいいの? ――
あ、良かった伝わってた。
お願いします。誰でもいいのでなんとか皆に補助アイテムを送る人、あるいはキリトゥさん止められる人募集です!
―― 了解、直ぐ行くわ。二人ですけど、問題ないですよね ――
むしろ二人なら大歓迎っ。
と、告げた瞬間だった。
キリトゥさんの居る地面が急に盛り上がる。
危険を察した彼は慌てて飛び退く。
すると、地面が隆起し、巨大な何かが飛びだした。
ぬめぬめぬらぬらと光り輝く太くて立派な何かが釜首をもたげる。
―― 助っ人、来たわよー ――
「皆さん助っ人に来ました。レイシアといいます。こちらはユルルング洞窟の守護者、ハナコさんです」
すっごいのキターッ!?
巨大ミミズに乗った小柄なエルフが地中から現れた。
正直ミミズのインパクトが凄過ぎて戦闘が全部中断してしまっている。
「な、なんかヤベェの来た……」
「ラザッツ、お願い、私ああいうの苦手なの……」
「いや、それは……パラリゲス、今こそ好機じゃねぇか?」
「さすがに遠慮するよ、ミミズは苦手なんだ。立ちションで引っかけた時に呪いを受けてしばらく腫れが酷くてね……」
「そりゃご愁傷様。俺もミミズだけは無理だ。呪いが怖ぇ」
「うえぇ。キリトゥさん、ドガッサさん、お願ぁーいっ」
「いやぁ……ドガッサ、少女にモテるチャンスだぞ!」
「ミミズの呪いは……うひぃ、無理無理無理ッ、俺はまだ不能になりたくねぇよ!!」
ハナコさん出現しただけで向こうが瓦解したんだけど……
これ、もう勝敗決したって事でいいんじゃないかな?
「えっと、皆さん、これ以上の戦闘行為は無意味な気がするので投降しませんか?」
私が声を掛けると、皆互いに顔を見合う。
「うーん、確かに、これ以上頑張っても負け確定だよね……」
「俺はケイニーに従うぜ?」
「任せるよケイニー」
お前ら二人は自己主張はないのか……ケイニーさん好き過ぎるでしょ。
「こうさーん」
そしてドガッサさんが何か言うより先に降参宣言するキリトゥさん。
「おい、キリトゥッ!? ウサギを放置しちまうのか!?」
「いや、俺はウサギに恨みとかないからね。彼女云々に付いても別にあいつらしか女はいないって訳じゃないだろ? これを機にパーティー組み直して可愛い子誘おうかと思ってさ。最悪奴隷の子買い取って嫁育成ってのも……そうだなぁ、ちょっと奴隷制あるとこ行ってみようかな。可愛い子探そっと」
「おおぃっ!?」
「あはは。キリトゥさん、ナリアガリッパー王国とかでしたら結構奴隷可愛い子いますよ。コロアなら冒険者の女の子が多いですし」
「そうなの!? 良い情報だよ、ありがと」
多分、ドガッサさんほど女性にがっついてる訳じゃないのは、自分ならやろうと思えば彼女の一人や二人作れるという自信があるからだろう。
だからどれだけの女性がウサギさんにオトされてても気にしてないんだと思う。
単純にウサギさんの知り合いだからってこともあるかもだけど。
「あ、そうだ。もふもふした獣人の女の子とかってどこが多いの? そこのピーラさんとかトーナさんみたいな獣人族に会ってみたいんだけど」
「えーっとそうですね。キューロンやはとかぶり、ヘクルポリス辺りですかね。コロアの南側、カントロノアを越えたところがヘクルポリスで、その西がはとかぶり、北西がキューロンです。あとは……ヘクルポリスから東のナリアガリッパーを南に行けばピポトに行けますから、そこも獣人が多いですね。ピポトからポーランを越えて東に進むとサランザ―ドって国がありまして、そこだと鳥系の獣人が多いです」
「よし、とりあえず投降するんで安全な場所で戦争終わるまで待機しようぜトーナさんだっけ? その後は各地のケモ娘を訪ねる旅をすることにするよ」
「キリトゥ、お前、こんな毛深い人外が好みなのか……?」
酷い、人権侵害だ。ドガッサ謝れ。獣人全てに謝れッ!
「ドガッサがごめん。こいつ人間の女性しか興味ないらしくて。もふもふ天国を知らないんだ」
それは私も知らない。




