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シュリック、お前を倒す、そして弟を貰う!

 ガロワさんとメイドが戦闘を始めた。

 正直メイド一人増えたところで、と思ったのだが、思いの外ガロワさんが苦戦している。

 つまり、あのメイドは私の手に余るということだ。

 それだけ強い。


 それで、だ。本来ならば先程同様カルセットを下して今度こそ私の想いを受け入れてもらいたいところだが、対戦するのは彼の姉であるイリアーネらしい。

 残念ではあるが、これはむしろ好機かもしれない。


「姉さん、貴女を倒し、カルセットを貰い受ける!」


「あはは、良かったわねカルセット」


「全然良くないですっ! 僕男ですからっ! 諦めてくださいシュリックさん、絶対に一時の気の迷いですからッ」


「そんなことはないっ、私はもう決めたのだ。君を生涯掛けて愛し抜くと」


「思われてるわね……」


「呆れた顔でイジらないでよ姉さんっ!?」


 さぁ、覚悟は決めた。宣言も告げた。

 後は、壁を越えるだけだ。


「さぁ、勝負といこうじゃないか。カルセットを賭けて!!」


「えぇー。弟賭けるの?」


「なんでそんな嫌そうなんですか、ってそうじゃなくて、僕を賭けの対象にしないでくださいっ」


 ふふ、ほんとカルセットは可愛いなぁ。

 ああ、駄目だ。こうやって改めてみると、もはやカルセット以外伴侶が考えられなくなってきた。

 私が惚れたのはなぜカルセットなのか? 相手は男なのになぜこうも愛おしいと思うのか?

 そんなことなどもはやどうでもいい。


 私にとって大切なのは唯一つ。

 カルセットを手に入れる。

 それのみだ。


 なぁに、最初は嫌がっていようとも、私の愛で包み込み、惚れさせて見せようじゃないか。

 任せろカルセット、ちょっと天井の染みを数えていればいいだけさ。

 さぁ、カルセットを手に入れるための闘いを、始めよう。


 互いに抜剣を確認して構えを取る。

 走りだしたのは同時だった。

 剣と剣が重なる。


 断ち筋は良い。

 良いのだが、素直すぎる。

 確かにこれではガロワさん相手じゃ勝負にならないだろう。


 良くも悪くもガロワさんは喧嘩殺法で鍛え上げた我流戦術だ。

 お堅い剣術を扱うイリアーネはそれはそれは闘いやすい相手だっただろう。

 何しろ剣筋が真っ直ぐなので搦め手を警戒する必要はなく、その分集中して相手を見て行動できるからだ。


 私としてもここまで綺麗な剣撃だと対応しやすくて楽でいい。

 ただ、速度はかなり速い。

 私の攻撃がたびたび遅れがちになるくらには、イリアーネの剣速が私の剣速を越えている。


「ふっ」


 フェイントを混ぜてみる。

 見事に引っ掛かった。

 本当に素直だ。

 むしろ素直過ぎて可哀想になってくるくらいである。


 剣士としての実力は私を軽く超えているのに、剣筋自体が素直すぎるせいで実力的には同程度に収まってしまっているのだ。

 いや、むしろ、私の誘いに乗ってしまう以上、私の方が有利かもしれない。

 敵でなければ指導してやりたいくらいだが、今はカルセットが掛かっている。

 悪いが私とカルセットの愛のため、負けていただこう。


 フェイントを混ぜ始めると、剣に迷いが生まれだす。

 ああ、教えてやりたい。

 だが、心を非情にして攻撃を続ける。


 強い、強いが充分攻略できる実力者。

 ガロワさんに負け、私なら勝てるとでも思ったのかもしれないが、残念ながら、今の剣筋では私にも負けてしまうのではなかろうか。

 うむ。むしろ望むところか。カルセット、もう少し待っててくれたまえ。


 フェイントで迷った剣を弾き、無防備な胴に一撃。

 クッ、速度は向こうが上か。

 咄嗟のバックステップで逃げられた。


 だが、フェイントは有効、というかイリアーネは苦手らしいな。

 慣れて来る前に撃破させて貰うとしよう。

 攻勢に出て連続で斬りつける。


 時にフェイントを混ぜ、剣閃の動きを変える。

 その度に迷うイリアーネ。

 好機ではあるが、相手の反応が速いせいで逃げられる。


 くぅ、これは、フェイントを使ってやっと互角!?

 相手がフェイントに弱いから勝てる。じゃない。私はフェイントを使わないと彼女に勝てない、ということか!?

 今更ながら気付いた事実に自分の実力の無さを痛感する。


 誰だ、楽に勝てるとか言った馬鹿は?

 イリアーネの実力は本物だ。むしろフェイントへの対策などを覚えれば、自分では手が届かない高みに行くだろう実力者である。

 今だけなのだ。彼女に自分が勝てる可能性があるのは。

 つまり、彼女を倒してカルセットを手に入れられる可能性があるのは、今しかないのである。


 成り振りなど構っていられない。

 フェイントだけでは足りない。

 徐々に対応され始めている以上、変化を付けねばならない。


 そう、拳も蹴りも使い、イリアーネの不得意な場所で一気に片付けなければ、私には勝機が無い。

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