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ガロワ、メイドの動きじゃねぇ!?

 想定外というのとはちょっと違うが、このメイド、予想以上の実力もってやがる。

 何しろ全力で撃ち込んだ一撃をガードしやがったからな。

 しかもアサシンタイプで俺ら戦士系に一番厄介な精神異常魔法付き。


 素早さも気を抜けば見失いそうになる程、イリアーネの嬢ちゃんよりよっぽどやっかいなメイドである。

 さすがに助っ人としてやってくるだけあるか。

 A級冒険者である俺で苦戦するとなったら、こいつがシュリックと闘ったらほぼ確実に圧勝だな。


 しかも、俺らは木下だったか? あいつの増加魔法でステータス増加してる状態だ。

 なのに苦戦する。つまりこいつの実力は本来の俺を軽く超えちまってるってことだ。

 有利に闘えているし、向こうは格上相手と誤解してくれちゃいるが、本来は俺の方が弱いってことだ。

 さすがにちょっと泣きそうになるな、相手がS級冒険者とかならわかるが、ただのメイドだろう?


 いや、ただのメイド? どこがただのメイドだよ?

 こんなのメイドの動きじゃねぇよ。

 バトル専用メイド? そんなもの物語の中だけで充分だっつーの。


「ッ!」


 うおっ!? おい、今の何やった!?

 剣が、右手のみ? 違う、中距離から投げて来たのか!?

 スカートに手を入れ、新たな短剣を取り出すまでの少ない時間、彼女は一つの剣で斧を受け流す。

 やはり若干両手で受けるよりつらいようだが、飛び道具に出来るとなれば俺の方が警戒せざるをえなくなる。


 少しだけなら片手だけで対処して来る上に空いた手で近距離から剣を投擲されたらこちらが終わる。

 致命傷を避けられても、下手な場所にくらっちまったら戦力ダウン、下手すりゃそのまま致命傷だ。

 ああクソ、ウサギを殺すために参加したってのに、下っ端の下っ端である筈のメイド相手にこうも苦戦するのかよ。


 ラビットネストの面子は層が厚いな。

 この分じゃこっちに付いてくれたS級冒険者たちも既に何人か倒れてるかもしれん。

 にしても……アトエルトさん、多くね?


 さっきからちらほら視界に入って来るんだが?

 数百単位じゃないくらいこの戦場に居ないか?


「他所見ですか、余裕ですね」


「ちぃっ!?」


 クソ、ちょっと思考がずれた瞬間打ち込んで来るのかよ!?


「ここですっ」


「まじぃっ」


 体を仰け反らせ、ぎりぎり投げられた短剣を躱す。

 その間に既に移動しているチェルロ。

 クソ、体勢崩れた。動きが固まる。


「行けぇ!」


「しゃらくせぇっ!!」


 小手を使ってなんとか受ける。

 くそ、左腕が痺れやがる。

 だが、良かった。下手に鋭い攻撃だったら今ので腕が切られていたところだ。


「っ!」


 効果無しと見るやすぐさまステップを変えて攻撃を変化。

 ええい、こうなりゃ完全に体勢を崩した方が立て直しも早そうだ。


「倒れた!?」


「そらよぉっ」


 完全に地面に倒れて攻撃をやり過ごす。

 そのままその場で勇者たちに習ったブレイクダンス。

 足を使ってチェルロの足を払う。


「あっ」


 地面に倒れた彼女が慌てて起き上がる。

 俺から追撃はしない。

 っつーかできない。

 こっちも体勢立て直すので精いっぱいだ。


 全く、体勢崩しても立て直しが速すぎんだよ。

 ああクソ、また笑ってやがる。

 この戦闘狂め。


「なぜ、貴方は笑っているんですか?」


「あぁ? そりゃこっちの台詞だ。そんなに楽しいかよ、戦闘狂め」


「あら、酷いいいがかりですね。私、実戦は初めてですよ。訓練はしてましたが、ここまで読み合いが楽しいのは久しぶりです」


 おいおい、ド素人かよ? いや、研鑽自体はかなり凄いのだろうし、雑魚相手の闘いはあったんだろうさ。 自分と同格かそれ以上の存在との闘いが初めてってことだろう。

 そりゃ楽しいよなぁ。

 ああ、楽しい。自分の全力出して勝てるかどうか分からない敵と殺し合いだもんな。

 これで勝っちまったらそりゃ、嬉しいよな。闘えるだけでこんなにワクワクすんだからよ。


「参ったな。これじゃあ本当に戦闘狂じゃねーか」


「あら、そうなのではないので?」


「いやいや、そういう嬢ちゃんもなぁ、すっげぇ楽しそうじゃねぇか。全く、お互い戦闘狂とは面倒な闘いになりそうだ」


「なっ。私は別に戦闘狂などでは……え? やだ本当に笑ってる?」


 自分の顔を触って愕然とするチェルロ。まさか本当に気付いてなかったのか?

 こりゃ真性の戦闘狂を目覚めさしちまったってことか。


「まぁ、しゃあねぇ、お互いに戦闘狂じゃあなぁ。認めて闘うしかねぇやな」


「だ、だから私は戦闘狂ではありません。ただの、メイドですから!」


 言いつつも武器を構えた瞬間からまた笑み浮かべてんじゃねーか。

 ああもう、しまらねぇな。こいつとの闘いは楽しめちまうからな。


「んじゃあ、互いが倒れるその時まで、楽しく殺ろうや」


「戦闘狂ではありませんが、仕方ないので付き合って差し上げましょう」


 さぁ、壊し合いを楽しもうぜ。ったく、俺はこういう性格じゃねぇと思ってたのによぉ、滾って来ちまったぜ。


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