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べルクレア、奥の手は最後まで隠した方の勝ちです

 うぅ、全身が痛い。

 なんとか距離は離したものの、既に接近を開始しているコルトエア。

 逃げないといけないのだが、先程のダメージで頭がふらついている。

 ここは、逃げるより迎撃。


「ガアァッ!!」


 既に理性を無くしたコルトエアの攻撃は単調だ。

 単調だけど的確で素早い。

 常に致命傷を求めて急所に攻撃して来る。


 ガードをすれば別の致命個所へ。

 動物的本能で即座に切り替え、私の意識の隙間に向けて攻撃を繰り出して来る。

 相手は無手、こちらは麻痺付きナイフを両手持ち、ではあるのだが、全く刃物を怖がらず攻撃仕掛けて来るので若干こちらが不利である。


 コルトエアの奥の手。狂戦士モード、といったところか。

 私としてはここまで引き出せたのなら充分過ぎる闘いだと自負できるだろう。

 でも、せっかくなら勝ちたい。

 勝ってウサギを屠りたい。

 だから……私もここで、奥の手を切りますッ!


「ガァアッ!!」


 突撃からの拳、受け払うと膝蹴り、注意がそちらに向けば顎先に。

 首を横へと避ければ、顔が迫り、私の頭向けて頭突きが放たれる。

 なんとか蹴り飛ばして距離を取る。


 さて、奥の手を切ることは決まったけど、ただ放っただけでは効果はあまりない。

 絶妙なタイミングで確実に仕留めないと。

 多分、多少の痛み程度じゃあの動きは止まらない。

 息の根を止めるか、あるいは瀕死に追いこまないと止まってはくれないだろう。


 用意するモノは魔法だけだ。

 魔法で自分の能力を底上げ、ディレイ魔法でアレをセット。

 何時でも発動出来る状態にして、後は隙を待つ。


「GAAッ」


 もはや野生生物の咆哮にしか聞こえないコルトエアの叫び。

 突撃と共に拳が唸る。

 さっと避けて伸びきった腕を掴んで投げ飛ばす。


 あ、空中で体勢整えた!?

 しかも空中蹴って襲いかかって来るって、空中機動も持ってたの!?

 想定外のコルトエアの動きで、思わず隙を作ってしまう。

 隙を伺うつもりが隙を突かれるとか笑い話にもならない。


 でも、まぁ、想定通り。

 首を掴まれ肉薄。

 このまま振り被って私を地面に叩き付けるつもりだろうけど、射程範囲だ。


「私の、勝ちです。自滅する爆炎願望アポトーシスバーニンダンス


 刹那、全身が炎に包まれる。

 ダメージは多少あるが、炎耐性は既に上げた後だ。

 喉を持っていたコルトエアへと炎が伝わる。

 

 慌てて私から逃げようとするが、遅い。

 私を彩る炎の全てが、コルトエア向けて放出される。

 慌てて逃げたコルトエアが炎に包まれ踊りだす。

 叩き消そうとしているのだろうが、その姿が踊っているようにしか見えない。

 ゆえに、これは炎の舞踊と呼ばれる私の奥の手なのである。


 火傷によるスリップダメージも入るし、炎に巻かれた状態でインフェルノという状態異常になるらしい。急激にダメージが入り、一気に死に向かって行くのだ。

 よっぽど炎を早めに消さなければ、このまま彼女は死ぬだろう。


 地面を転がり炎を消そうとするが、上手くいっていない。

 普通の炎でもあそこまで燃えれば転がるくらいじゃ消せやしない。

 これで、私の勝ちは確定だ。


 そう、思っていた。

 でも油断はしてなかった。

 そのはずだった。


 転がっていたコルトエアが突然起き上がるとともに飛び込んでくる。

 とっさのことだったのでバックステップしようとしたのだが、それより速く飛び込んだコルトエアの掌が私の頭を掴む。

 やば……


「GAAッ!!」


 一瞬で持ち上げられ、思い切り振り下ろされる。

 顔面から地面に激突。

 視界が明滅する。


 さらに追撃。

 悲鳴を上げる暇もない。

 意識も何度か飛んでしまう。


 ただひたすらに私を振りまわすコルトエア。

 まるで自分が死ぬ前にお前を殺すとでも言うように、執拗に何度も何度も私を地面に打ち付ける。

 防御魔法使ってなかったら、今ので死んでたかもしれない。


 何度目の攻撃になるだろう?

 不意に、コルトエアの動きが止まる。

 私を拘束していた腕から力が抜け、私は辛くも脱出できた。

 炎に塗れたコルトエアがゆらりと倒れる。


 ふぅ、なんとか、勝ったか。

 一応コルトエアが動かないかどうかだけ確認し、私は踵を……


「ウォーター」


 っ!?

 背後から聞こえた声。

 コルトエアを焼いていた炎が消え去る。

 今の声、後ろからだった。

 私の、直ぐ後ろ。耳元で囁くように、言われた?


「よく頑張りました。お疲れ様です。そして……お休みください」


 四体のアボガードを携えた少女がそこにいた。

 それだけが認識できた。

 後ろを振り返り切ることすら出来ず、私の意識が狩り取られていく。

 ああ、油断した。

 コルトエアにばかりかまけ過ぎた。

 ここは戦場、一人を倒しておしまいじゃなかった。


「ごめんね。うさしゃんは、諦めて?」


 そんないたずらっこな笑みを最後に、私の意識が消え去って行った……

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