西瓜、あんまり得意じゃないんだけど
リルハさんとエフィカさんが敵のリーダー格を相手どってくれているので私が闘う相手は一人に絞れている。
ほとんどはアトエルトさんが受け持ってくれているので、こいつに集中して闘う事が出来るのはいいことだ。
といっても私はそこまで戦闘が得意な人材ではない。
もともと引き籠りでゲームするくらいしかしてこなかった女だ。
腕もヒョロいし、目元は隈が未だに取れてない。
胸元はあばらが浮き出てるし、健康不良児であることなど見るだけで明らかだ。
そんな自分が強くなれたのは、桃瀬さんのおかげだろう。
彼女に付いて行っただけで引き籠りだった私はいつの間にか有名冒険者の一人に名を連ね、魔王と闘うことまでやってのけて、未だに生きている。
ミミック狩りでさらにレベルが上がり、全身のステータスは以前とは比べ物にならず、一般人なら離れた場所からデコピンするだけで即殺出来る能力値になっている。
そんな私が対峙しているのは、リビングドール・エクスタシアのパリトン。
正直エッチな人形にしか見えないのだが、パリトンさんは元レパーナ親衛隊という超強力な守護者の一人らしい。
うさぎによって殺され転生したらしいが、これはTS転生と言っていいのだろうか?
オスの魔物から雌の魔物だし、TSでいいのかもしれない。
何にせよ、あのウサギが見たら喜んで突撃していることだろう。
せめてもの慈悲だ。
ウサギに見付かる前に処分しといてあげよう。
と、いっても、手を抜ける相手ではなく、下手を撃てば私の方が処分されかねない実力者なのだから手に負えない。
これで二年程前に転生したばかりというのだからチートと呼んでも問題はないだろう。
私達って結構強化された筈なんだけど?
幾ら木下の全体強化スキルの御蔭といえども、拮抗する能力値になるってどうなの?
魔法なんてどんどん避けられるし。
向こうの魔法避け損ねたら私なんて大怪我するんだけど?
「これならどうだ? 魅了の魔眼!」
「魔眼系は対策済みよ!」
ゲーム知識から私のような人間が一番恐ろしいと思うのは精神系の状態異常だと思っている。
毒や麻痺、石化に即死なども怖いと言えば怖いのだけど、精神系以上は本人が掛かったかどうかすら分からず、場合によっては相手の良いように操られたりするのだから恐ろしいことこの上ない。
正気に戻った時に自分が味方を殺してました、なんてことだってあり得るし、気色の悪いバケモノに初めてを喜んで捧げてましたなんて記憶があったら発狂自殺物である。
いや、むしろ正気に戻れるかどうかもわからないのだから精神異常は厄介なことこの上ないものだ。
なので、その辺の対策はアイテムでばっちし対策済み、というか、ほぼ反射装備済み。
魅了の魔眼が反射され、パリトンが魅了される。
へー、魅了を反射されたら自分自身にうっとりしちゃうわけか。
さすがにこれはちょっと恥ずかしいな。
掛かっていたらこの人形に恋心を抱いていたんだろうけど、そういうのは御免被るので今のうちに強力な魔法を詠唱させて貰おう。
相手は人形、どんな魔法がいいだろう?
私が使える魔法は攻撃系統がかなりあるが補助系や相手の能力値を下げるモノは殆どない。
いや、待てよ。
確かアレがあったな。
相手は人形なので外的状態異常は効かない。
要するに毒、麻痺、石化などである。
逆に精神系状態異常はかなり効く、この辺りは魔物として長所の逆が短所になるように設定されている。
例え強力な魔物といえどもこの法則だけは踏襲してくれている。
まぁ、ウサギみたいに例外はいるけども、基本長所があれば弱点も存在するのが魔物だ。
ノーマル属性はまず滅多に居ない。
この人形もご多分に漏れず、精神系スキルが弱点なようなので、遠慮なく付かせて貰う。
「コンフュージョン、ついでにブラインド、フィアー、そしてトドメの……ブラッドカース!」
「あ? ああ、ああああああああああッ!? レパーナ様ッ!? なぜです!? なぜぇ!?」
フィアーが色濃く出たらしい。
恐怖体験は多分だけどレパーナが出て来て何かしらしてるんだろう。
まぁどうでもいい。
ブラッドカースは時間がかかる継続ダメージ系なのでフィアーなどで時間が稼げれば丁度いい。
……あれ? そういえば人形って血、あったりするんだろうか?
このブラッドカースは血液に呪いを付与して徐々に腐らせるという結構あくどい魔法なんだけど……普通は滅多に掛からないんだけど精神魔法に弱い魔物は高確率で掛かるのよ。
今回も掛かったは掛かったみたいなんだけど……どうなるんだろ?
ま、まぁ掛かった以上は継続ダメージ受けてるみたいだし、問題は無いわよね。
あとは状態異常が切れる頃合いを見計らって重ね掛けして行くだけだ。
勝てるぞ、私ッ!
 




