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うさぎさん、本格戦闘開始前

「さて、皆頑張ってるみたいだね」


 らしいな。

 それで? 皆の決着が付くまでこうしてんのか?


「まさか。でも、折角君と俺が対峙してるんだ。ギャラリーの追加を頼むよ。誰かは……言わなくても分かるよね?」


 今回の戦争の切っ掛け、咲耶だろ。

 ジョゼ、頼むわ。

 俺の念話が届き、ジョゼがマップスキルで咲耶を移動させる。


 唐突に現れた咲耶は目を白黒させて俺を、そしてヘンドリックを見る。

 今までもまだ戦争に参加するか迷ってたらしい。

 結局答えは出せなかったか。


「磁石寺君、ヘンリー……あの、私……」


「何もしなくていいよ。先生の返事は既に聞いてる。俺もさ、ウサギに対する怒りとか恨みはこの二年で霧散したんだ。ただ、けじめをつけたいんだ」


 けじめ、ねぇ?


「一応、俺は寝取られた訳だしね。磁石寺、悪いけど、一度死んでくれ。それでチャラにしよう」


 いや、それ恨み晴らすのと変わらんがな。

 まぁいい、こっちからもヘンドリック。

 お前の恨みがどれ程かは俺には分からん。自分の女が寝取られたと思った時は許せんとは思うが実際にそうなったときどう思うかまでは軽く想像した程度で分かった気になる方が失礼だろうしな。だから、お前を一度殺してリセットしようと思う。


 この戦争フィールドには今、ジョゼが記憶持ち越し転生不可のトラップを発動させてる。

 つまり、俺にしろお前にしろ、死んだ時点でこの人格は消える。


「へぇ、君が自分の記憶をベットするのは驚きだね。どういう風の吹きまわし?」


 俺としてもお前に対しては思うところがあるんでね。これもまた、けじめってことさ。勝っても負けても恨みっこなし。死んだ方が記憶を失うデスゲームって奴さ。


「それって、君が消えたら悲しむ人が多そうだね。主に女性ばっかりだけど」


 だから、負けられない闘いって奴だな。


「まぁいいや。折角だし、少しだけ、昔話をしよう。俺が死んだら、俺の記憶を覚えてる奴が先生しか居なくなるからな」


 あー、確かに、それはそれで辛いなぁ。記憶は無くなる訳だけど。


「もともと、俺はジョゼと同じハイスクールに通っていたんだ。日本に知り合いがいたってことと、交換留学の話があったことで立候補した。結果的に咲耶の家にホームステイしながら学校に通うことになった。何人か同じように留学した生徒も居たけど、彼らとは面識がなくてね。結局同じ外国人ってことでジョージとよく話すようになったんだ。それと、やっぱり一つ屋根の下だからね。咲耶とは恋仲になって、ただれた関係って奴になってた」 


 おおぅ、予想以上に親密じゃねーか。なんか罪悪感でチクチクするぜ……


「正直さ、このまま何時ばれるだろうかひやひやしながら日々を送るよりは、異世界に来れて感謝してたんだ。ここなら二人幸せに暮らす未来もあるだろうって。まさか咲耶が奴隷にされて、ソレを解除するために預けた先で寝取られるとは思ってもみなかったけどね」


 俺としても、咲耶は襲うつもりはなかったんだぜ、最初は。この体、欲望に忠実過ぎんだよ。


「ウサギだから仕方ない。なんて言わないよ? だったら一度死んで産まれ変われば良かっただろう。ウサギじゃなく人間に成れるまで死にまくってさ」


 冗談じゃねー。元々俺は殺されてこっちに強制転移させられた被害者だぜ? むしろお前よりも濃い人生送らされてんだよッ。


「へぇ、だったら教えてくれよ。君が生きて来た軌跡って奴を」


 俺ねぇ。

 そもそもガキの頃の知識はねぇぞ。

 怪人に改造された時点で過去は漂泊されてっからな。


「漂泊?」


 そう、それまでの人格とかは一回漂泊され、まっさらな状態でインセクトワールド社への忠誠を植えつけられる。まぁ、俺はその後の人格形成が昔と同じ感じになってたらしいけどな。ドクター談だから確かかどうかも不明だけどな。


 んで、あの学校に潜入して日常生活を送りながら怪人として正義の味方を前にするまで待ってたわけだが、俺の出番が来るより先に本部の方が爆散したらしくてな。

 定期報告が途絶えて雲隠れすべきか、別の機関に所属すべきか悩んでた時に、駄目元で桃瀬に告白したんだ。

 これで駄目なら別の組織で悪逆尽くそう。もしも受け入れてくれたら残りの人生桃瀬に捧げようってな。

 まぁ、折角受け入れてくれたのに、残りの人生は一瞬で消えちまったけどな。


「中浦に刺殺されたんだな?」


 ああ。それで死に際にさ、雲浦が浮かんだんだ。

 ウサミミ少女っていいよな。ウサギ最高ーってな。

 そして願った次の生ではハーレム作るって宣言でな。

 実際に転生した訳だ。


「ウサギに、だね」


 そっからはもう意地だ。

 ウサギに転生した以上ハーレム作ってやるって目標持って生活し始めたんだ。

 まさか速攻でおやっさんが蛇に飲まれるとは思わなかったがな。

 御蔭で蛇を倒してレベルアップしたけど。


 んで、コボルトとか豹とかベアーさんとかに遭遇しながら町に身を寄せてさ。

 ドルアグスさんの加護受けて、アウレリス襲って、リアに襲われて、ライゼンさんがソレを発見して襲いかかって来て。

 逃走劇の始まりってな。


 途中でピスカがアンゴルモアの巻き添えで異世界に飛ばされて。

 俺はS級冒険者とレパーナ護衛騎士団に襲われワールドエネミーに覚醒、その後は、まぁ話すほどでもねーだろ。お前も知ってるし。


「その通りだね。さて、互いの自己紹介も済んだし、そろそろ殺し合いを始めようか」


 そう言って、ヘンドリックは瞳を細めた。いや、俺の昔語りへの感想は? 無い? そっすか。

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